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サイドストーリー第1.5話 娼婦(マリア視点)

時系列的には第一話と第二話の中間になります。

サイドストーリーのヒロイン、マリア視点の話になります。

【マリア視点】


 お腹にまだ異物感が残っているわ。

 商人の娘だった私が、まさかあんなことをすることになるなんて。

 全てはあのとき守れなかった騎士の所為。

 いえ、襲ってきたゴブリンの所為でもあるわね。

 本当は私も娼婦ではなく冒険者になりたかったけど、借金が残っているうちは命の危険がある仕事はさせられないと却下されたわ。

 借金額は400万……無利子とは言われたけど、昨夜みたいなことをあと何回したら解放されるのかしら。


「マリア、起きたのかい」

「ステラさん、おはようございます」


 ステラさんは昔娼婦として働いていて、今は引退し指導役に回っている人。

 この酒場兼娼館が完成するまでの間、経験豊富なステラさんに様々なことを教わった。


「あんた、子宮と膣の洗浄はしたんだろうね?」

「あっ……」


 ここで娼婦として働く前、生成魔法の習得をさせられた。

 普通は手のひらから水を作ったりするらしいけど、私達娼婦は手のひらからだけではなく子宮や膣から生成できるようにならなければならなかった。

 生成魔法では体の内部から湧き出るように作られる。

 子宮や膣から水を作ることで残存物を洗い流し、ほぼ確実に妊娠や性病を予防できるらしい。


 体の中なんて見たことないから難しかったけど、何日もかかってようやくできるようになったわ。


「今すぐ洗浄してきな!

 本当なら客との行為後すぐにしなきゃいけないんだ。

 入念に洗浄すんだよ!」

「はっ、はい!」


 トイレに駆け込み、急いで体の中に意識を集中させて生成魔法を使う。

 すると、中から水と一緒に残存物が流れ出てきた。

 やっぱりこの感触は気持ち悪いわ……。


 ステラさんに言われた通り入念に洗浄し、しっかりと拭いてから外に出るとステラさんが待ち構えていた。


「これからは絶対に忘れるんじゃないよ。

 妊娠なんてしたら地獄だよ」

「もし妊娠したらどうなるんですか?」

「毒かあたしがあんたの腹をひたすら殴るか……。

 あたしのときは腹を殴られたわ。

 どちらにしろ、二度と妊娠できなくなる可能性は高いね」

「そんな……」


 いつか結婚して幸せな家庭を築くのが夢だったけど、もうそんな夢は叶わないのかな。


「洗浄さえ忘れなきゃ大丈夫だ。

 あたしだって腹を殴りたくないんだ。

 そんなこと、させないでおくれよ」

「はい、気をつけます……」


 本当は逃げ出したいけど、逃げたところで私に生きる術はない。

 私はもう、ここで生きるしか無いんだ。


「あんたは運が良い。

 ここで働けることもそうだが、専属娼婦に選ばれたんだ。

 他の子たちみたいに何歳も年上の汚い男の相手をしなくていいんだ。

 専属娼婦を外されないように気をつけなよ」


 昨日、太ったお金持ちの男性に買われていた同僚を見た。

 あれに比べれば昨日のゴルドという男はどれだけマシだったか。


「専属娼婦を外されないためにはどうしたらいいでしょうか?」


 ステラさんはニヤリと笑い得意げに話しだした。


「そんなもん、相手を惚れさせりゃ良いんだ!

 あの男、明らかに女慣れしてなかっただろ。

 ああいう男は身の上を話して、か弱い女を演じれば簡単に落ちるもんだ」

「相手を騙すってことですか……?」

「嘘なんて吐く必要はない。

 あんたの身の上話は誰でも同情する。

 そこに付け込むだけさ」

「あの人を利用するだなんて……」

「男だって自分の性欲を満たすために私たちを使っているだろう!

 それと同じことさ!」


 自分が利用されているなら自分も相手を利用する。

 理屈は分かるけど……。


「いいかい?あんたは利子が無いとはいえ、莫大な借金を抱えているんだ。

 最低でも10年は働かないと返せないだろうね。

 そんな長い期間、ずっとあんたを専属にし続けることなんてありえない。

 いずれあんたは捨てられる。

 それまでの間、あんたはあいつを目一杯利用して少しでも借金を返済するんだ」

「そんな……私はまた捨てられるんですか?」


 両親が亡くなった後、あらゆる親戚を頼ったけど誰も相手にしてくれなかった。

 あの人たちにはそんなつもりはなかったかもしれないけど、私にとっては捨てられたも同然だった。

 もう捨てられたくない。

 それなのに、私はまたこれから捨てられるの?


「ああ、間違いなく捨てられるね。私が断言する」

「……分かりました。それで、私はこれからどうすればいいでしょうか?」

「ふっ……、それでいい。

 まずは今夜、元気がないように仕事をしな。

 そしたらあの男は必ずあんたの話を聞こうとする。

 そこであんたの身の上話をして私を捨てないでと懇願すれば相手は落ちる。

 そしたら1年、いやあんたの年齢を考えれば3年は専属を外さないだろうよ」


 3年……。

 短いけど、その期間だけでもあの小太りの汚い男を相手にしなくていいなら!


「ステラさん、ありがとうございます!

 今夜やってみます!」

「ああ、しっかりやんな」


 もう、ただ捨てられるのは嫌。

 ゴルド、あんたには悪いけど利用させてもらうわ。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

当初はこの話を書く予定では無かったのですが、書かないわけにはいかないなと思い至りました。


次回はサイドストーリーの最終話です。

今度こそ本当です。

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