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第22話 終結

 戦争が終わった。

 あまりにもあっさりと。

 シノやゴルドさん、復活した他の冒険者やギルド職員がゴブリンと戦っており、そこに俺の広範囲の魔素の鞭が加わることで、ゴブリンを全滅させることができた。

 俺たち人間側には犠牲者は誰もおらず、人間側の完全勝利となった。

 辺りにはゴブリンの死体が散乱しており、血の匂いが充満している。

 ゴルドさんや他の冒険者、ギルド職員は門の中に入り祝杯を上げている。


「マサキ、よくやってくれた。この戦争のエースは間違いなくお前だ」

「セラさん……。この戦争は俺たち人間がゴブリンのいる森の木を伐採したから起きたんですか?」

「ああ……、まあ、そうかもな」


 やっぱりそうだったんだ。

 ヴォルガンの言っていたことは間違っていなかった。


「この後、森へ行ってゴブリンを攻撃するんですか?」

「そうだ。こちらに大きな怪我人はいない。明日にでも森に入りゴブリンを根絶やしにする」

「俺は反対です!もうこれ以上ゴブリンを殺す必要は無いでしょう!?木だって、他の森の木を伐採すればいいじゃないですか!」

「……マサキ、この戦争の間に何があった?」

「ヴォルガンと……、ホブゴブリンと話をしました」

「ゴブリンと……!?」


 セラさんの目が大きく見開く。

 ゴブリンと話をできるっていうのはやっぱり異常なんだな。


「お前、まさか元々はこの世界の人間じゃないのか!?」

「えっ……、はい。そうですけど……」


 リリアとシノには話してあるし、隠していたわけではないけど……。

 別の世界から来たっていうのは隠していた方が良かったのかな。


「じゃあ、元の世界で一度死んで、女神様に会い、魔法を教えてもらってからこの世界に来たっていうことか!?」

「えっと、女神様に魔法を教えてもらったわけではありませんが、それ以外はその通りです……」


 女神様って頼んだら魔法教えてくれたの?

 それなら教えてもらえば良かった。

 でも、それだとリリアやシノから教わることはなかったのかな。


「そうだったのか……」


 セラさんはそう呟いた後、俯いて考え込んでしまった。


「リリア、シノ。他の世界から来た人って俺以外にもいるの?」

「いえ、私は初めて聞きました。

 他の世界っていうのがあったらいいなって想像はしたことはありますが、実際に存在するなんて思ってもいませんでした」

「私もリリアと同じ」


 二人が知らないってことは普通の人は知らないってことだろうな。

 他の世界があるっていうことは、支部長とか、そういうレベルの人しか知らないことだったんだ。


「まず3人にはカズキ……庶民派の初代リーダーについて話そう」


 カズキって、前にブルクさんが呟いていた名前だ。

 初代リーダーの名前だったんだ。


「カズキもマサキと同様、他の世界から来た人間だった。

 他の世界から来るとき女神様は一つ願い事を聞いてくれ、カズキは女神様に魔法を教えてほしいって頼んだと言っていた。

 マサキは何を頼んだんだ?」

「病気にならないようにしてほしいって頼みました」

「病気か……。痺れ花の花粉は病気なのか?」

「俺が痺れなかったのってそういうことだったんですか!?」


 じゃあ、あのとき病気にならないように以外の願い事をしていたら、俺も痺れていて、ここにいるみんなが殺されていたってこと?

 女神様本当にありがとう。

 花粉が病気かどうか怪しいけど。

 でも花粉症は病気?それならいいのかな?


「しかし、そうなるとやっぱり女神様はいたんだな?」

「はい……。実際に会ったので、間違いありません」

「そうか……」


 セラさんはまた考え込んでしまった。

 女神様には願い事を叶えてもらったし、こうして生きているのも女神様のおかげだ。

 女神様を信じるどころか、毎日感謝してもしたりないくらいだ。


「今から6年前、カズキが女神様に会いに行ったんだ。

 それで帰ってきたとき、『神様なんていなかった』と発言したんだ。

 その真意は分からないまま、その後カズキと、当時リーダーの補佐をしていたイリスが失踪してしまったんだが……」


 神様がいない?

 そんなことはないはずだ。

 俺は確かに女神様に会った。

 あの人は女神様ではなかったっていうことか?

 女神様のイメージそのままだったのに。


「まあ、それはいい。

 それよりマサキ、女神様に会ったということは絶対に誰にも言わないでくれ。

 シノとリリアも。分かったな?」

「はい、分かりました……」

「私も絶対に言いません!」

「うん、言わない」


 俺たち3人が同意し、セラさんは満足したように頷いた。


「それでこの後なんだが……、マサキ、お前には森で死んでもらう」

「えっ!?」


 俺これから死ぬの!?

 っていうよりセラさんに殺されるのか!?


「ああ、すまん。正確には死んだことになってもらうんだ」

「えっと、本当に死ぬわけではないんですね?」

「そうだ。だからそんなに絶望しないでくれ」


 良かった……。

 せっかく戦争を死なずに乗り切ったのに、結局殺されるなんて絶対に嫌だ。


「マサキはこの戦争で活躍し過ぎた。

 今貴族の私兵はここにいないだろう?

 おそらく貴族に報告しに行ったんだ。

 最悪、適当に罪を着せられて牢獄に入れられてしまう。

 そこで、森に行った時にゴブリンに殺されたことにすればいいっていうことだ」


 なるほど。

 そうすれば俺は牢獄に入れられずに済むっていうことか。

 あれ、でもその場合って……


「俺はもうこの街(トラメリア)には帰ってこれないっていうことですか?」

「そうだ」


 そうだよな。

 死んだ人間が生きて街にいることはおかしい。

 もしそうなったら、リリアやシノ、それにこの街の仲良くなった人と二度と会えなくなってしまう。

 だからってこのまま生きていて牢獄に入れられたら同じことだ。


「シノ、リリア。3人のことは知っている。

 お前たちはどうする?」

「マサキと一緒にいく。マサキと離れるなんて絶対嫌」


 シノは即答してくれた。

 ありがとうシノ。愛してる。

 リリアはどうだろう?


「……私もマサキと一緒に行きたいけど……」

「昔のことは気にするな。リリアはよく働いてくれた」

「セラさん……」


 リリアは元々孤児で、セラさんが引き取り、それからギルドで働いていると聞いた。

 セラさんに恩があるから簡単にセラさんの元を去ることができないんだろうな。


「なに、二度と会えないなんてことはないさ」

「……っ!じゃあ、やっぱり……」

「ああ、あいつを止められんし、私も止める気はない」


 なんの話をしているんだろう。

 とにかく、二度と会えないなんてことはないなら良かった。


「分かりました。

 セラさん、今までお世話になりました。

 私はマサキと一緒に行きます」

「ああ。またな、リリア」


 セラさんがリリアの頭を撫でる。


「なんだか、こうされるのは久しぶりですね」

「そうだな。リリアはもう立派な大人だからな」

「大人に対してこういうことするんですかー?」

「マサキにはしてもらってるんだろう?」

「なんで知ってるんですか!?」

「当てずっぽうだ。まさか本当にしてもらってるとはな」

「あっ……。うぅ……」


 リリアが俯いてしまった。

 後で俺もリリアの頭を撫でよう。


「さっ、3人ともこの街にはしばらく戻ってこれないんだから、色々な人に挨拶してこい」

「はい、ありがとうございます」


 リリアとシノはそれぞれノエルさんやブルクさんのところへ向かった。


「マサキは行かないのか?」

「……あの、セラさん。やっぱり森を攻めるのは考え直してもらえませんか?」

「あの森からゴブリンがいなくなれば木材の調達が楽になり、その先の街との交易が活発になる。

 このチャンスを逃すことはできない」


 セラさんの言っていることは分かる。

 分かるけど……。


「ゴブリンだって生きているんです!

 それを一方的に虐殺するなんて……」

「それをゴブリンに家族を殺された者の前で言えるか?

 リリアやシノは両親をゴブリンに殺されている。

 今でこそ落ち着いているが、両親を殺されたばかりの頃、シノは酷い荒れようだった」

「それは……」

「私たちは……、きっとゴブリン達も、多くの人を亡くし過ぎた。

 今更仲良くすることなんてできないさ。

 例え言葉が通じたとしてもな」


 確かにそうなのかもしれない。

 過去を忘れることなんてできない。

 それは分かっているけど……。


「カズキもマサキと同じく優しい奴だったよ。

 だから耐えられなくなって失踪したのかもな」

「そう、だったんですね……」


 セラさんの目はどこか遠くを見ていて、哀愁を漂わせている。


「これからマサキ達が行く先だがな、ここから真っ直ぐ北に行ったところが良いと思っている。

 もしカズキ達が海の向こう側に行っていなかったとしたら、そこにいるはずだ」

「カズキさんが!?」

「ああ、この大陸中を隈なく探したが見つからなかった。

 もう残っている場所はそこしかない。

 極寒の、ゴブリンすら住まない過酷な環境だ。

 だが、魔法の力があれば生きていけるはずだ」


 そんな環境なら、もうこういった戦争に巻き込まれないはずだ。

 厳しい環境だけど、こんな思いをもうしなくて済むなら……。


「分かりました。ありがとうございます。

 リリアとシノと相談して決めます」

「ああ、そうするといい」

「あと、ここのゴブリンの火葬とお墓を立ててもいいでしょうか?」

「それがいいな。私も手伝おう」

「良いんですか!?」

「当たり前だ。それにマサキはまだ魔法で火を起こせないだろう?」


 そう言って、セラさんはニヤリと笑いながら、手から火を出して見せてくれた。


「ありがとうございます!」


 全てのゴブリンを火葬し終え、簡単な墓を作成した翌日、俺はリリア、シノとともにトラメリアを旅立った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

これにてマサキが主人公の話は終了になります。

このあと短いエピローグや、サイドストーリーが入りますが、そこでの主人公はマサキではありません。

第1章は残り少しとなりますが、最後までよろしくお願いします。


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