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第13話 初めての街の外の仕事

 星3への昇格手続き後、リリアとシノと俺の3人で、今後のことを話すために俺の家に集合していた。

 だけど、それよりも前に2人に話すことがある。


「まず2人とも、今日の昇格試験の最後の実技試験で合格できなくてごめんなさい。

 リリアは俺がシノのやり方を見れるように順番を後ろにしてくれたし、

 シノは魔素の棒を2本しか出せない俺でも持ち上げられるって教えてくれた。

 それにも関わらず、俺の練習不足のせいで合格できなかった。

 これからも練習し続けるから、どうか見限らないでください」


 頭を下げながら2人に謝罪した。


「マサキ、顔を上げて。

 支部長も言ってたけど、たった3ヶ月しか経ってないのに、持ち上がっただけでもすごいんだよ。

 これからも一緒に練習していこう!」

「リリア、ありがとう……」

「私は8歳の頃から魔法が使える。

 あのくらいはできて当然。

 だから私と比べて卑下しないで。

 マサキは一生懸命練習している」

「シノもありがとう」


 8歳の頃からっていうことは9年間か。

 俺の36倍もの期間、シノは練習してきたんだ。

 道理でシノの魔法は洗練されているわけだ。


「えっ、シノさんって8歳の頃から使えるんですか!?」

「そう、魔法を教えてくれたのはセラ、この街の支部長だけど、初代リーダーにも少し見てもらったことある」

「初代リーダーまで!?シノさんの魔法がすごく綺麗な理由が分かりました……」


 初代リーダーって庶民派の初代リーダーってことだよね。

 この人が周りの人に魔法を教えたことが庶民派の始まりって聞いたから、そんな人にも教えてもらったことがあるシノって実はすごい人だったんだ。

 それにしても魔法に綺麗って……?


「それとリリア、敬語じゃなくていいよ」

「あっはい、そうですよね。これから……」

「シノ。そのことについてなんだけど」


 そうだった。

 今日はそのことを話すために集まってもらったんだ。

 シノの顔に緊張と期待の色が浮かび上がる。

 シノ、ごめん。

 もしかしたらその期待を裏切ってしまうかもしれない。


「俺はリリアとシノ、2人と一緒に暮らしたいと思ってる。

 でも、リリアとシノが2人で話しているところを今日以外で見たことがないんだ。

 だから、シノを迎える前に2人に仲良くなってほしいんだ。

 シノはどう思う?」


 シノは少し戸惑っているようだ。

 そうだよね。今朝の言い方では変に期待させちゃってたかもしれないし。


「正直に言うと、リリアのことはライバルとしか思っていなかったから、仲良くとか考えたことなかった。

 でも、私は側室に入れてもらう立場だよね。

 分かった。リリア、仲良くしよう」

「はい、仲良くしましょー!」


 シノは俺の提案を受け入れてくれたようだ。

 一先ずは安心かな。


「それで、これでもう側室にしてくれるの?」

「いやっ、せめて一ヶ月、本当に仲良くできそうか確認してみて。

 それで2人が仲良くなれそうだと感じられたら、そのときかな」

「分かった。頑張って仲良くなる」


 シノの気が早すぎてびっくりした。

 流石に仲良くなりましょうだけじゃ、ね。

 リリアも苦笑いしている。


「仲良くするために、不満を抑え込んだりはしないでね。

 これから一緒に暮らそうってことなんだから、不満があったらお互いに言おう」

「そっか、一緒に暮らすための準備期間だもんね。

 うん、分かった」


 シノが納得してくれて良かった。

 今日はこれでお開きだ。

 外を見てみると、すでに日は暮れており、家から漏れる光のみが街を照らしていた。


「じゃあ、今日はもう遅いから家まで送っていくよ」

「うん。リリアは?」

「私はまた後でマサキに送ってもらうから、えっと……気にしないで!」


 リリアは今まで敬語だったから、まだ慣れないようだ。


「そっか。じゃあ、また明日」

「うん、また明日!」


 リリアの顔を見ると、すぐに帰ってきてねと言わんばかりの表情だ。

 そんなに心配しなくても、シノを送り届けたらすぐ帰ってくるよ。

 そう思いながら笑顔で家のドアを閉めた。

 シノと一緒に家の外に出ると、シノが俺の目をまっすぐ見ながら口を開いた。


「リリアとは仲良くする。

 でも正室を諦めたわけじゃない。

 まだ結婚してないんだからチャンスはあるよね?」


 リリアじゃなくてシノを正室にすることなんて考えたことも無かったけど、まだ結婚してないんだから、正室とか側室とかは関係ない。

 シノの目をジッと見ると覚悟があるように感じた。

 何を言っても正室を諦めることは無さそうだ。


「えっと、お手柔らかに?」

「うん!覚悟してね!」


 そう言いながらシノは今日一番の笑顔を見せてくれた。

 ドキッとしたけど、俺はリリアを正室から変えないんだ。

 リリアを悲しませることは絶対にしちゃいけない。

 これからシノに振り回されるかもしれないけれど、絶対にこれだけは守ろう。


 ◇◆◇◆◇


 翌日。今日はシノと初めて街の外の仕事をする日だ。

 いつも仕事をするときはブルクさんがいたから、仕事で2人きりは初めてだ。

 森から太い木を伐採する仕事だけど、木を切るのは遷移魔法で行えるので問題は無い。

 問題は木の伐採が進みすぎて、手前側は切り株か細い木しかないため、森の中心部まで行かないといけないこと。

 森の中にはゴブリンの集落があり、いつゴブリンと遭遇するか分からない。

 ギルドでレンタルした防具を身に着け、門から街の外に出た。

 以前街の外に出たのは、下水道掘削のときだったから、こうして門から街の外に出るのは初めてだ。

 目の前には広大な草原が広がっており、遠くに大きな森が見える。

 街道は一本あるが、整備されているのは街の近くだけで、森に近い場所は獣道のようになっている。

 多分ゴブリンの襲撃があるから整備できないんだろうな。

 この街道を辿った先には別の街があるんだろうな。

 いつか、リリアとシノの3人で色々な街を巡ってみたいな。


「シノ、念の為確認しておこう。

 森の外縁部でゴブリンに接触したらすぐ街に引き返す。

 木の伐採地点に辿り着いたときに接触したら、細い木がまばらに生えている西に逃げる。

 これでいいよね?」

「うん、最近はゴブリンの遭遇率が上がっているらしいから注意しよう」


 ゴブリン……まだ実物を見たことは無いけど、分かるかな?


 ◇◆◇◆◇


 街道を辿って森の外縁部に着いた。

 街の周りとは違い、この当たりは草の背が高くなっており、伏せれば完全に隠れられそうだ。

 草の陰にゴブリンが隠れていても気付けないかもしれない。

 草の中も注意深く観察しないと。


「俺は右側を見張るから、シノは左側をお願い」

「分かった」


 森があるのは左側だけど、ゴブリンはどこに潜んでいるか分からない。

 俺がゴブリンなら森に気を取られている冒険者を攻撃するために右側に潜む。

 一瞬でも気を抜かないように気をつけよう。


「マサキ、ゴブリンがいた」

「えっ、どこ!?」

「静かに、まだ気づかれてない」


 シノが指差した方向を見ると緑色で、小さい体躯で緑色の人型をした生物がいた。

 リリアに聞いていた通りの見た目だ。

 シノを見習い、中腰になって近くの低木に隠れる。


「あれがゴブリンか……」


 ゴブリンを観察していると、キョロキョロと周りを見回しており、何かを探しているようだった。


「逃げた方がいいかな?」

「まだ。戦闘は許可されていないけど、情報を持ち帰るのは星3の仕事」


 そうだった。

 今のままでは木を持っていないから、帰っても何も報酬は貰えない。

 でもギルドにとって有用な情報を持ち帰れば、その情報を買ってもらえるんだ。

 よくゴブリンを観察しよう。


「……あれは子供かな?」

「そう。大人にしては身長が小さ過ぎる」


 シノが見つけたゴブリンの身長は80cmほど。

 大人のゴブリンは140cmくらいと聞いていたから、確かに小さい。


「何を探してるんだろう?」

「多分、私たち」

「え?ゴブリンが冒険者を探してるってこと?」


 なんのために?

 冒険者を探してなんのメリットがあるんだろう。


「あのゴブリン、痩せてる」

「そう言われてみれば……」


 ゴブリンを初めて見たから痩せてるのかどうか分からないけど。


「シノはゴブリンを見たことがあるの?」

「この街に来る前はよく戦っていた」


 シノは開拓村にいたって言っていたっけ。

 開拓村の責任者が、ゴブリンから村を守りきれないと判断して、村からこの街に移住してきたらしい。

 シノの顔を見ると少し苦しそうだ。


「ごめんね、もしかして嫌なこと思い出させちゃった?」

「平気。今は目の前のことに集中しよう」


 シノの顔がいつもの真面目な顔に戻った。

 ゴブリンの観察に集中しよう。


「あのゴブリンは武器を持っていなさそうだね」

「うん。戦闘にはならなさそうだし、姿を見せてみよう」


 そう言ってシノは立ち上がり、近くにあった石をゴブリンに投げつけた。

 動作に迷いがない。

 きっと今までこういうことが何度もあったんだろうな。


 石に当たったゴブリンがこちらに気付き、急いで森の中に逃げ込んでいった。

 シノの予想通り戦闘にはならなかったけど、こんなことして良かったのかな?


「追いかけるよ」


 そう言ってシノは慎重にゴブリンの後を追いかける。


「分かった!」


 シノに置いていかれないように、急いでシノに追いつく。

 シノの様子を見ると、草の陰よりも、遠くの木の上を注意しているようだった。


「いた、あそこの木の上」


 シノの指差す方向を見ると、弓を持ったゴブリンが木の上で待ち構えていた。

 今いる場所は射程外らしく、矢をつがえていない。

 ゴブリンは緑色だが、木の葉も緑色のため、かなり見にくい。

 シノはあんなのをよく見つけたな。


「あっちにもいた」


 シノがもう一度指差した方向を見ると、そこにもゴブリンがいた。

 同じく弓を持っているゴブリンだ。


「これ以上は危険。街に戻ろう」

「分かった」


 シノの指示に従い、街に戻ることになった。

 結局、俺はシノの指示を聞いていただけだった。

 初めての街の外での仕事なのに何もできなかった。

 いや、初めてだから仕方ないんだ。

 シノはゴブリンとの戦闘に慣れているんだから、こうなるのは当たり前。

 今日のシノの判断をよく勉強して、次はシノを支えられるようになろう。


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