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プロローグ(挿絵あり)

初投稿です。

ラノベ自体書くのが初めてです。


女神の画像は生成Aで作成しました。

筆者はそれほど上手く扱えていないため、イメージと少し異なります。

※本作に登場する挿絵は、AI画像生成モデル(Animagine XL V3.1)を用いて著者自身が生成したものです。

※書籍化できた際には現在の挿絵は全て差し替える予定です。

高校二年生の夏、春から好きだった子に告白して、初めて彼女ができた。

部活のサッカーでもレギュラーになれて毎日が楽しかった。


朝起きたら体がダルかった。熱がある気がする。

でも、もうすぐサッカーの試合があるんだ。

レギュラーになってから初めての試合だ。

今休んだら次の試合でレギュラーとして出場できなくなってしまう。

倒れたらいけない、なんとしても学校に行くんだ。

ベッドから起きてリビングに向かう。


「昌樹、あなた具合が悪いんじゃないの?熱を測って!」

「大丈夫だよ、母さん。もうすぐサッカーの試合があるんだ。今休むわけにはいかないよ」

「そんなこと言って、倒れたらどうするのよ」

「体力には自信があるんだ。こんなの風邪だよ。すぐ治る」


そうだよ、こんなの風邪だよ。

次の試合はなんとしても出たいんだ。こんな風邪で倒れるわけにはいかない。


---


あれから数週間が経ったが、熱が一向に引かないどころか、血尿や内出血などますます症状が酷くなるばかりだ。

集中力が続かないだけじゃない、意識を保つのもやっとだ。


「どうした進藤、熱中症か?」


顧問の先生が話しかけてきた。

大丈夫です。って言わなきゃいけないのに声が出ない。


「坂井!すぐに保健の先生を呼んできてくれ!進藤が熱中症になった!」


違う、先生。俺は熱中症じゃない。まだ動けるから。

そう頭では思っても声には出なかった。


---


「昌樹、目が覚めたの!?」

「ここは...?」

「本当にごめんなさい。私がもっと強く止めていれば...」

「昌樹ごめん。本当にごめん」


母さんと父さんが泣きながら謝っている。

目元が腫れ上がっている。

よほど泣いていたのだろう。

周りを見てみると見慣れない部屋だった。

学校の保健室とは違う。病院かな?


部屋のドアを開けて白衣を着た男性が入ってきた。


「救急担当の井上です。進藤昌樹さん、落ち着いて聞いてください。あなたは部活中に倒れ、救急で病院に運ばれてきました。検査をしたところ、急性リンパ性白血病であることが分かりました。この病気は初期症状は風邪に近いのですが、非常に進行が速く、数日から数週間で手遅れになってしまうことがあります」


白血病?ただの風邪ではなかったんだ......。

病名は聞いたことあるけど、何か重い病気だったっけ。

来週末の試合は無理かな。出場......したかったなあ。


「いつ頃......退院できますか?サッカーの試合が......」

「あなたの体は今非常に頑張っています。今進藤さんが目を覚ましたこと。これだけでも奇跡なんです」


言っている意味が分からない。目を覚ましたことが奇跡?なんで?


「退院は......いつ?」

「進藤さんは、もう退院できることはないでしょう」


意味がわからない。

来週末の試合は無理でも、冬の国立は出たいんだ。


「もう長くはありません。ご家族や親しい方たちと残りの大切な時間をお過ごしください」


長くはないって、もうすぐ死ぬってこと?

さっきまで普通にサッカーできてたじゃないか。

もっと、せめて冬の国立まではサッカーをさせてくれ。


「昌樹、ごめんね。私がもっと早くに普通の風邪じゃないって気づいていれば」

「母さん......」

「俺もごめん。サッカーをやりたいっているお前の気持ちを止めることができなかったんだ。サッカーよりもお前の体が一番大事なのに」

「父さん......」


そっか。俺はもうすぐ死ぬのか。

もう、サッカーはできないのか。

......なんでだよ。

まだまだ、これからってところだったのに。

俺が死ぬ?納得できない。

せっかくレギュラーになれたんだ。

彼女だってまだできたばっかりなんだ。

......絵美は?絵美に会いたい。


「絵美......」

「坂井さんか。さっきまで一緒にいたんだが、もう夜遅いから親御さんに連絡して帰ってもらったよ。ついさっきのことだからまだ近くにいるかもしれない。連絡してみるよ」


そう言って父さんは病室から出ていってしまった。


「昌樹、何かしてほしいことない?何か欲しい物とかない?」

「サッカーボール......」

「あんたって子は......。ちょっと待っててね。あとで父さんに取ってきてもらうから。あんたは小さい頃からサッカーが好きだったよね。ご飯を食べたらすぐにサッカー場に出かけていって、暗くなるまで帰ってこなかったよね」


そんなこともあったなあ。

確かボールが見えなくなるまで遊んで、それで帰ってから母さんに怒られる毎日だったなあ。

父さんは笑ってだけど、それでも心配してくれていたのを知っている。

通勤途中でも無いのに父さんが近くを通っていたから。


カラッ...


部屋に父さんが入ってきた。


「坂井さんはすぐ来るみたいだよ」


そっか。絵美にも会える。良かった。

早く絵美に会いたい。


「お父さん、家に昌樹のサッカーボールを取りに行ってもらえる?」

「ええ...仕方ないなあ」


父さんはまた出ていってしまった。

ありがとう。お父さん。


「絵美ちゃん、いい子ね。救急車に一緒に乗ってくれて、私達にもすぐに連絡してくれたのよ」


ガラッ


絵美が勢いよくドアを開けて部屋に入ってきた。


「昌樹!目を覚ましたのね!」

「絵美......」


絵美だ。来てくれた。

なあ、絵美。聞いてくれよ。

もうすぐ俺が死ぬとか言うんだよ?

冗談キツくない?


「良かった。もう話せないかもって思っていたから。良かった......」


話せないわけないじゃないか。

こんなのすぐ治るさ。

だから絵美、治ったらデートに行こう。

カフェでフラペチーノを飲むのも良いな。

この前食べたいって言っていたパフェも食べに行こう。

だから絵美、そんな泣かないでもっと笑ってくれ。


「絵美......笑って」

「ごめん、ごめんね。もっと笑うね」


ああ、やっぱり絵美には笑顔が似合うなあ。

なんだか眠くなってきた。

一度寝て、起きたらまたサッカーをしよう。

大丈夫、起きたら良くなってるさ。


『こいつ、良いんじゃないか?最初はこいつにしよう』


どこかからそんな声が聞こえた気がした。


---


目の前が真っ白だ。

寝ていたはずのベッドが無くなっている。

全身が痛かったのに、今はどこも痛くない。

夢かな。夢だよな。

それなら早く覚めてくれ。

サッカーの練習をしないと。

来週末には初めてレギュラーとして出る試合があるんだ。


「進藤昌樹さん」

挿絵(By みてみん)

振り返るときれいなお姉さんが立っていた。


「お疲れ様でした。病に侵されながらもよく頑張りましたね」

「女神さま......?」


白いドレスを着ていて、お姉さんの背中には白い大きな翼が生えており、なんだかそれっぽい杖を持っていて、何より優しく包みこんでくれるような雰囲気がある。

よくある女神様のイメージそのままだった。


「ふふっ。ええ、その認識でいいですよ」

「これは夢ですよね?サッカーの練習をしたいんです。早く俺を現実に戻してください」


女神さまの顔が曇った。


「進藤昌樹さん、あなたは亡くなってしまいました。もう現実に戻ることはありません」


そんな馬鹿な。

本当に俺は死んでしまったってことなのか?

じゃあ、なんだ。ここは天国だとでも言うのか。


「ここは最後の審判とでも言うべき場所です。あなたが天国に行くか、それとも別の場所へ行くかを決めます」

「別の場所?」


女神さまがニコリと笑う。

まるで聞いてほしかったと言わんばかりだ。


「今の記憶を持ったまま、他の世界でもう一度生きてみませんか?」

「他の世界って、絵美や母さん、父さんがいる世界ではないってことですか?」

「はい、全く別の世界になります」

「......もう一度会えたりはしませんか?」

「ここには一人しかお招きすることはできません。また、昌樹さんがもう一度同じ世界で生きることはできません」

「......少し、考えさせてください」


もう、会えないのか。

死ぬ前の最後の記憶を思い出してみると、泣きながら笑顔になってくれた絵美の顔が思い浮かぶ。

母さんはずっと泣いていたな。

父さんは、サッカーボールを取りに行ってもらったあの背中が最後だ。

最後に父さんの顔を見たかったな。

顧問の先生やチームメイトには迷惑をかけるだろうな。

監督責任とかで先生を辞職に追い込まれたりしないよね。

先生は俺がサッカーをやりたいって気持ちを尊重してくれていたんだ。

先生を辞めないで欲しい。

来週末の試合、やっと掴んだレギュラーだったんだけどな。

でも、あんな状態で出たってチームに迷惑を掛けるだけか。

もっとサッカーやりたかったな。

絵美とも、せっかく付き合ったのに何にもしなかった。

やったことと言えば、部活終わりに一緒に帰ったことくらい。

土日も部活か自主練しかしてなくて、デートは一度もしなかったな。

ごめんね、絵美。どうか俺のことは忘れて幸せになってほしい。

父さん母さんもごめん。親孝行らしいこと一度もしてないや。

いつもサッカーをする俺を応援してくれてありがとう。


他の世界で生きる、か。

もうみんなとは二度と会えないし、父さんと母さんに何かを返すことはできないけれど、せっかく貰ったこの命、このまま失うわけにはいかない。

別の世界でも生き抜くことが、今できる唯一の親孝行だ。


「俺の親や、恋人の絵美にメッセージを送ることはできませんか?」

「私からの伝言という形でよければ送ることはできます」


良かった。

何も伝えることができずにお別れにはならなさそうだ。


「じゃあ、父さんと母さんに「親孝行できなくてごめん。俺は別の世界で生き抜くよ」と伝えてください。

絵美には「全然デートできなくてごめん。どうか俺のことは忘れて幸せになってほしい」、と。

顧問の先生には「部活中に倒れてごめんなさい。これからも先生を続けてください」、

チームメイトには「一緒に試合に出れなくてごめん。来週末の試合は必ず勝ってくれ」、と伝えてください。」

「ええ、承りました。必ずそのメッセージをお届けします」


なんか、俺謝ってばかりだな。

でもそれも当然か。色んな人に迷惑掛けるだろうから。

俺がこれからやることは一つ。

父さんと母さんに貰ったこの命を無駄にしないために、他の世界で生き抜くことだ。


「他の世界に行かせてください!」

「かしこまりました。では昌樹さんをその世界にお送りするにあたって、お願い事を一つ叶えようと思うのですが、何かございますか?」


願い事か......。

なんでもいいのかな。

それなら元の世界に行かせて欲しいんだけど、それ以外だよな。

......病気で死んだから、病気にならないように、かな。

できるのかな、そんなこと。


「病気にならないようにしてもらうことって、できますか?」

「ええ、できますよ。ではそのようにいたしますね」


良かった。もう病気になることはないみたいだ。

それなら簡単に死んだりしないはずだ。


「では、これから注意点を2点説明しますね。

まず言葉ですが、できるだけそのまま使えるようにします。

しかし、文化や文明の発展レベルが異なりますので、一部通じない言葉があります。

言葉が通じるからといって、文化を覚えることを怠らないでください。

次に、これから行く世界には人間以外に高度な知能を持った生物がいます。

世界は人間のもの、というわけではありませんのでお気をつけください。」


人間以外の高度な知能を持った生物?

なんだろう、猿とかではないんだろうけど。


「説明は以上です。何か質問はございますか?」

「いえ、大丈夫です」


これから新しい世界か。

どんな世界なんだろう。楽しみだ。


「ではお元気で」

「女神さまこそお元気で!」


女神さまが少し笑ってくれた。

やっぱりお別れするときは笑顔が一番だ。


「はい。それでは行ってらっしゃいませ」


女神さまのその声を聞いたのを最後に、視界が暗転した。


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