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14 ブラッドと再会

 あれから私は、無事に二年に進級した。


 友達もできた。

 街に出かけたり、課題を押しつけあったり、平和な日々。

 勉強は、まあまあ、って感じ。


 ビリでもいいから卒業するって、父と約束してる。

 いつでもわたしを、全力で助けて応援してくれる、大好きなお父さま。


 ブラッドのことも、助けてくれた。

 ほんとうに……ありがとう。


「これからは、心配かけないようにするからね!」

 って言ったら──


「ああ、ビビを学園に行かせて、心配で夜も眠れなかったよ。

 でも、行かせて……まぁ、良かったかな」って。


「これでも、わたし、がんばってるんだよ?」



 夏の長期休みには家庭教師をつけてもらって、復習と予習。

 昔の自分じゃ、考えられないくらいの努力。

 ちょっと笑える。

 新生ビビアン、なんてね。


 ブラッドのことは、あれから何も教えてもらえない。

 ただ、クインシルおじ様の元で働いているってだけ。


「生まれ変わらないと、彼の未来は無い……」なんて、父ってばーー厳しい。


 私は信じてる。

 ブラッドは変わって、いつかまた会えるって。


 心配なのは、保釈金のこと。

 お金で助けたことを、彼がどう思っているか。

 またきらわれるかな……


 でも、きらわれても、

 彼が牢屋に入ったままでいるよりは、ずっとまし。


 エリオットはカラント伯爵家の後継者になって、いまは留学中。

 それも、なんだか変だなって思うけど……わたしが口を出せることじゃない。


 カラント伯爵には重い後遺症が残ってるらしくて、

 30分前の事も思い出せないくらい、記憶力が弱くなってるんだって。

 

 ……きっと、それをエリオットが利用して、ブラッドを悪者にしたんだ。

 わたしはそう思ってる。


 でも、伯爵家を出たのは、ブラッドにとって良いことじゃないかな。

 彼は血筋をこわがってたから。

 平民になっても、彼なら大丈夫。そんな気がしてる。


 * * *


 夏になって、長期のおやすみに入った。


 今年も涼しい別荘で、家庭教師を呼んで勉強する予定。

 成績? びみょーな位置をキープ中。追試がないだけ、私えらい。


 友達を招こうと思ったら、みんなアルバイトなんだって。

 頭がいいと、時間の使い方にも余裕があるのね。


 別荘についたその日、紹介された家庭教師を見て、一瞬だけ時間が止まった。


「……ブラッド?」


 銀縁眼鏡かけた、ずっと会いたかった彼だった。


「私が、お嬢様の家庭教師です」


「えっ、おじ様のところで働いてたんじゃ……?」


「はい。領地の学校を早期卒業して、今は働いています」


「早期卒業……? そんな制度、あるの?」


 彼は静かに話してくれた。

 クインシル領地の学校で勉強して、早く卒業して、すぐ働いて、学費も保釈金も少しづつ返済してるって。


 家庭教師は、侯爵からの任命だった。

 クインシルのおじ様、ありがとーー!



 ブラッドは、話し方が変わっていて、ちょっとさびしい。

 でも、元気そうで、うれしい。


「前みたいに、ビビアンって呼んでくれていいのに」


「私はもう、平民ですから」


 一線を引かれるのも、少しつらい。

 

「じゃあ、成績を上げるように、しっかり教えてね。先生!」


「お任せください」


 一緒に勉強すると、時間が巻き戻る。

 あの、すこし切なくて、優しい時間へ。


 終わると、いろんな話をした。


 わたしの、ヘタな記憶喪失ごっこ。

 あの日、カラント伯爵家で何があったのか。

 お互いの今の生活、などなど。


 そして、彼は最後にこう言った。


「ありがとう、ビビアン。君のおかげで、俺は生まれ変われそうだ。感謝してる」


「よかった……父のお金に頼ったから、また嫌われたらどうしようって、不安だった」


「君を嫌うなんて、絶対にないよ。君は……俺の女神だ。お金は借りておくよ。必ず返す」


「うん。女神はちょっと大げさだけど、でも……それでいいと思う」


 そのあと、ブラッドはまた真面目な家庭教師に戻った。



 わたし達は教師と生徒として、三年生への進級目指して、ひと夏を真摯に向き合って過ごした。


 その中で改めて想う、わたし、やっぱりブラッドが大好きだ。



読んで頂いて有難うございました。

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