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92話 一発逆転



 ヨーロンス大陸、ギリス王国・アイル王国連合軍。



 長きにわたるケルディス戦争で国民も経済も疲弊した両国が、その犠牲を余裕で回復させ、国を成長できるくらいの資源が眠るケルディス鉱山の魔原石採掘に取り掛かって約1年。

まともな品質の魔原石は外から見えていた僅かな量だけで、調査と並行して採掘作業を進めていった結果、当時想定していた10%も魔原石を採ることが出来ず、魔原石の質も粗悪な物であることが分かった。



「遂に……遂に完成したぞ……!」



「この空を泳ぐ船こそが我らの最後の希望……!!」



 魔原石採掘の不採算ダメージにより国内の治安が悪化し、その責任が戦争を指揮した王家や貴族たちに向けられ、更にその責任をお互いの国に擦り付けて再び戦争になりかけた時期もあった。



 しかし、ヨーロンス大陸を統べるギリス王国とアイル王国が魔原石採掘に振り回され衰退していく中で、何故かユーランス大陸とアージンス大陸の国々では良質な魔原石が出回り、かつては魔原石大国であったヨーロンス大陸の2ヵ国を追い越さんばかりの発展を続けていた。



「この浮遊戦艦『ブリリアントフィッシャー号』で魔物島を征服し、魔原石を我らのモノに……!!」



 ヨーロンス大陸以外の地域で秘密裏に供給される魔原石の出荷元は、彼らが罪人の流刑地として使用していた魔物島……現マージンス島だった。

なんとその島では以前に自分たちが島流しの刑に処した者たちが生き残り、島の開拓を進めて世界各国との貿易や観光事業を行ない、今まさに発展を続けていたのだ。



「アーシア・フォレガンドロス……!! 忌々しい小娘め……!!」



「我々への魔原石の供給を意図的に行わなかったのを後悔させてやる……!!」



 そんなマージンス島を占領して魔原石を確保し、再び国を再起させるために手を取り合った両国。

ギリス王国とアイル王国で連合軍を結成し、わずかに採れたケルディス鉱山の魔原石を全て注ぎ込んで、空を飛ぶ浮遊戦艦『ブリリアントフィッシャー号』を開発した。

この浮遊戦艦であれば、周辺の海域に生息する巨大な魔物からの襲撃を回避して島に上陸することが出来る。



「戦艦と魔装武器の開発に着手していたらいつの間にか冬が終わってしまった」



「クソッ、こんなことになるならあの狂った機械仕掛けのエルフ女を残しておくんだった」



「戦争終結後、口減らしの為に両国ともかなりの兵を処分してしまったからな。もう少し飼っておくべきだったか」



「ふん、いないものは仕方ない。国の治安悪化と貧困化が進みユーランス大陸への脱国者も出始めているのだ。ここで我らの国力を示さねば更に国が衰退する」



「ぐぬぬ、国賊フォレガンドロスめ……!!」



 巨大な浮遊戦艦『ブリリアントフィッシャー号』は今まで運用されていた戦艦の約3倍の大きさを誇り、運用に必要な乗組員も2倍近く必要だ。

そのうえ浮遊の為のエネルギーに使用している魔原石の消費量も莫大になる。

往復の燃料を考えると、マージンス島へ攻め入るチャンスは1度きりだろう。



「絶対に失敗できない旅路になるぞ……」



「必ずや島を制圧し、魔原石を奪取せねば……!」



 ギリス王国とアイル王国に残っていた数少ない海軍兵を詰め込んで、業の深い上層部連中のドロドロとした欲望を旗印に掲げた巨大戦艦は、遂に地上から空へと浮遊する。



「目的地は海の向こうの宝島だ! 島に住む生き物は全部殺せ! 魔物も、人間も、全てだ! ヨーロンス大陸に魔原石を持ち帰れ! 祖国に栄光を!!」



「「「栄光を!!!!」」」



 ―― ――



 数日後、マージンス島。

島周辺の監視をしていた魔物使いのトゥーイから知らせを受けたアーシアが、本拠地から出て空を見上げる。

すると曇天の空の彼方に、巨大な怪鳥……いや、一隻の巨大な船のようなものがこちらに向かって飛んできているのが確認できた。



「……遂に、来ましたわね」



「アーシア、あれって……」



「ええ。ロドスたちから連絡を受けていた通りですわ。わたくしたちの島を蹂躙しにきた悪いヤツらですの」



「そうか、悪いヤツらか……じゃあ、ここは島に常駐している傭兵の出番だな」



「ふん、なんじゃあのガラクタは。吾輩がいればもっとすごい鉄の鳥を作れたんじゃが」



「オイラたちが岩山エリアに設置した大砲でバラバラにしてやるんだな」



「スコットとシュリー先生が敵じゃなくて良かったわあ」



「アーシア、あの飛んでるヤツは敵か?」



「そうですわ。わたくしたちの敵ですわ」



「じゃあ倒さないとな」



 こうして遂に、わたくしたちの島を守る戦いが幕を開けたのです。



「一度ならず、二度までも……わたくしたちの居場所を奪うような愚行、このアーシア・フォレガンドロスが許しませんわ」




 

————  ――――



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