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86話 第六感ですの



「なあアーシア」



「なんですのミロス?」



「近々、島に魔物の襲撃でもあるのか?」



「…………」



 ある日ミロスからそんなことを言われたわたくしは、返答に困ってしまう。

たしかに、シュリーが来てからのマージンス島は今までとは少し様子が変わっていた。

島の東西にある岩山エリアには、シュリーとスコットが作っている見張り台や防壁、魔原石を利用した砲撃装置などが設置され、子供たちはオオルカやエメラルドドラゴンと一緒に魔物使いの訓練を続けている。



「……それとも、どっかの国が攻めてきたりすんのか?」



「分かりません……ただ、シュリーが来てから……いえ、ロドスたちと協力して貿易を始めてから、島を流れる時間が少し早くなりました」



「たしかに、一気に発展してきている感じはあるな」



 ロドス海賊団の船を利用した他国との貿易は、現在も月に2回ほどの頻度で続けている。

もちろん、島で採れる素材や食材を貿易の為に過剰に採るようなことはせずに出せる分だけ売って、他国のお金や島では手に入らない物に替えている。



 魔原石などを販売する際にこの島のことは言わないようにしてもらってはいるものの、ギリス王国とアイル王国で行なわれている戦犯対象者の島流しの噂などから、やはりどうしてもあの無人島だった『魔物島』に定住した人たちがいるのでは、という話が他国で出ているらしいと、ロドスたちから聞かされた。



「最初は、なんとなく嫌な予感がして、島に何かあった時のために準備を始めたのです。まあ、それは今も変わらないのですが」



「ロドスから何か言われたか?」



「ヨーロンス大陸の情勢が悪化してきている……ギリス王国とアイル王国の動きが少し不穏だと」



「ケルディス鉱山の影響か」



「それと、他の国にマージンス島産の良質な魔原石が入ってきたことにより、世界の国同士の力関係が変化してきているらしいですわ」



 この世界にはヨーロンス大陸、アージンス大陸、ユーランス大陸の3つの大陸があり、その大陸の中にいくつかの国が存在する。

そしてこの中の大陸の内、ヨーロンス大陸では比較的早い段階で魔原石が採掘され、技術も発達していき、ヨーロンス大陸にあるギリス王国とアイル王国が世界の中でトップの国力、そして支配力を誇っていた。

アージンス大陸の国から奴隷を密輸するくらい、国力によって上下関係が出来てしまう。



「ヨーロンス大陸の国にはマージンス島の魔原石を売ってないからな、さぞかしヤキモキしているだろうさ」



「販売ルートを複雑にして隠しているとはいえ、どこかで何かに気付いてもおかしくはありません。なんたって、奴隷の密輸を任せていた海賊がこちらに寝返っているのですから」



 島でしか採れないアルラウネフルーツもロドスによるとかなり好評で、特にアルラウネフルーツを使用したお酒は各国で高い評価を得ているらしい。

きっと、ギリス王国やアイル王国にも入ってきているだろう。



「なるほどな……その辺りの情勢を考えて予想していくと、近いうちにこの島が襲撃される可能性を捨てきれないと」



「マージンス島へ無事に行き来すること自体、現在はロドス海賊団しか出来ていませんから、わたくしの心配しすぎかもしれないのですが……」



 杞憂ならそれで良い。

このマージンス島はわたくしの……いえ、わたくしたちの大切な居場所。絶対に奪われるわけにはいきませんわ。



「ふっ……さすがアーシアだな」



「何がですの?」



「昔、ケルディス戦争で傭兵としてアイル王国軍に協力していた時にな、ギリス王国に絶対悟られないであろう襲撃作戦に参加したんだ」



「それは……成功したんですの?」



「いんや、失敗した。襲撃ポイントに何故か敵兵が待ち構えていてな、即時撤退だ。なんでも、ギリス王国側のフォレガンドロス将軍が『嫌な予感がする』とか言って数日前から兵を配置していたらしくてな」



「まあ、お父様が……」



「そんなフォレガンドロス将軍の血を継ぐアーシアの第六感は無視できない。というわけで、島の防衛強化は大いに結構。マージンス島を最強の島にしようじゃないか」



「わふっ! くすぐったいですわ」



 そう言ってミロスは、わたくしの頭を大きな手でもふっと撫でた。



「ミロス、なんだか毛が今まで以上にもふもふしてきましたわね」



「もうすぐ冬だからな」




————  ――――



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