78話 孵化ですの……!
「ミロスミロス! 大変ですの!」
「ん? どうしたんだアーシア、そんなに慌てて」
「赤ちゃんが生まれそうですの!」
「あらあらあらぁ! ついにアーシアちゃんとミロスちゃんの」
「ドラゴンの子供の話だよな!?」
気温的にも、食材の確保的にもだいぶ過ごしやすくなってきた秋期の中月。
本拠地に保管していたエメラルドドラゴンのタマゴを眺めていたところ、ピシ、ピシ……とヒビが入り始めたので急いで近くにいたミロスを呼んだ。
隣でお料理を作っていたマヨルカにからかわれたような気もするけど今はそんなことは気にしていられない。
ピシピシ、ピシピシピシ……
「こっちのタマゴも割れてきましたの!」
「同じタイミングで産まれるなんて珍しいな」
「やっぱり双子のドラゴンなのかもしれませんわ」
正確にはひとつのタマゴから2匹生まれたら双子なのかもしれないが、母ドラゴンが同じ日に産卵した二つのタマゴから同じ日に生まれたら、それはもう双子と言っても良いのではないだろうか。
ピシピシピシ……ピシピシピシピシ……!
「も、もう少しですの……!」
「が、頑張れよ……!」
「あらあら、うふふ」
徐々に割れていくタマゴを手に汗握って見守るわたくしとミロス……を、ニコニコと見守りながら食事の準備をするマヨルカ。
ピシ、ピシピシピシ! パキパキパキパキ!
「ぎゃおっ!」
「ぎゃお~!」
「きゃ~! 生まれましたわミロス! かわいい~!!」
「分かった、分かったから身体を揺らすな」
「見てくださいミロス! わたくしすごい手に汗握っちゃってますわ!」
「オレの身体で汗を拭うな!」
―― ――
「ぎゃおっ」
「ぎゃお~?」
「赤ちゃんドラゴン、かわいいですわ~!」
「「かわいい~!」」
「こらお前ら、ドラゴンに構うのは食事を終えてからにしなさい」
「「「は~い」」」
無事に生まれた2匹のエメラルドドラゴンを眺めながら、マヨルカの作ってくれたご飯を食べる。
マヨルカの菜園で香草の収穫をしていたリアとミアも戻ってきて、二人とも生まれたてのエメラルドドラゴンに夢中だった。
「うふふ、男の子組がいたら大興奮だったでしょうねえ」
「あいつらはまた浜辺に行ってるのか?」
「オオルカの子供たちが来てるみたいで、一緒に遊んでますわ」
「それじゃあ今夜はお魚料理ねえ」
オオルカと遊んだ日のトゥーイ達は毎回魚や貝を持ち帰って来るので、マヨルカとしても献立を決められて助かっているらしい。
「もぐもぐ……それで、この子たちのごはんはどうしたらいいんですの?」
「ファーストシェッドが終わるまでは必要ないはずだ」
「ファーストシェッド?」
「ドラゴンやヘビ、トカゲ型の魔物は生まれてから最初の脱皮を終えるまでは食事を摂らないんだ。この最初の脱皮をファーストシェッドという」
最初の脱皮が終わったら、赤ちゃんドラゴンたちが食べられるくらいの大きさの虫や魚などを与え、しばらくしたら自分たちで狩りが出来るように教えていかなくてはならない。
「他のみんなが戻ってきたら、こいつらに名前を付けてやらんとな」
「ぎゃお?」
「ぎゃ~お」
「ドラちゃんとゴンちゃんにしましょう」
「それはあまりにセンスがなさすぎるだろ」
「ミロスさんだったらどんな名前にする?」
「そうですわ。わたくしの名付けセンスにケチを付けるなら自分も案を出すべきです」
「うーん……エメラルドドラゴンだから、緑……いや、翠か? スイとリョクってのはどうだろう……?」
…………。
「な、なんだよ。オレもセンス無いってか?」
「いえ……中々良い名前だと思って」
「あたし、ミロスさんの案にさんせ~い」
「あたしもさんせ~い」
「ぎゃおっ」
「ぎゃお~」
「あらあら、うふふ」
この後、本拠地に戻ってきたみんなとも話し合って、正式に赤ちゃんドラゴンの名前がスイとリョクに決定した。
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