74話 孵卵ですわ!
ヨーロンス大陸、ケルディス鉱山協同採掘事業・合同定期報告会。
「うむむ……魔原石の採掘量が想定の10分の1以下だと……?」
「雑石の混在率も高く、低品質のものが多い……これではまともな売り物にならんではないか!」
「労働コストを極限まで下げても赤字になってしまうぞ。どうするのだ」
「いっそのこと、採掘事業を中止して……」
「ならん! 何のために我々は今まで不要な血を流してきたと思っておる!」
「戦争の結果がこれでは、国民から暴動を起こされてしまうぞ」
「両国ともに軍の多くを解体してしまったのだ、そんなことになったら我々の財産と命の危機である」
「ぐぬぬ……どうにかして採算を取らねば……」
―― ――
秋期の初月、無人島生活7か月目。天気:秋晴れ。
「タマゴ、まだ生まれませんわねー」
「お湯とかであっためたほうがいいんじゃないの?」
「そんなことしたらゆで卵になっちまうだろ」
「……ドラゴンのタマゴは、殻が厚くてとても丈夫だから、火の中に入れても焼けないよ」
「そうなのか……」
「さすがトゥーイ、物知りだな!」
山岳エリアでエメラルドドラゴンのタマゴを持ち帰ってきてからしばらく経った。
キングリザードのようなタマゴを狙う魔物に襲われないように、草原エリアに建てた本拠地の中に持ち込んで、常に火を入れている竈の横に保管している。
トゥーイ、レン、ゼンの男の子三人は特に興味があるらしく、暇な時間があるとじっとタマゴを観察していつ生まれるのか待っている。
「このタマゴ、双子なのかな?」
「それじゃあリアたちと一緒ね」
「二卵性双生児竜ね」
「なんだよソーセージって」
「言ってないわよそんなこと」
ミロスによると、近いうちに生まれる可能性が高いとのこと。
チャンドラから聞いたエメラルドドラゴンの母親が姿を隠した時期や、この間見た衰弱具合から推測したのだという。
あのキングリザードが襲ってこなければ、母ドラゴンも無事だったのに……と思ってしまうけど、キングリザードだってあの襲撃で死んでしまったのだ、あまり偏った同情をするのは良くないだろう。
「ドラゴンって何食べるんですの?」
「多分、魔物ならなんでも食べると思う……もちろん、人間も」
「お、おれたちも食われちまうのか?」
「赤ちゃんの頃から一緒にいれば、大丈夫……家族は、襲わない」
「ガーちゃんを使い魔にしているトゥーイが言うなら安心ですわね」
トゥーイの使い魔、ガルーダのガーちゃんは本来人間も襲うほどの凶暴な大型の魔物だ。
今まで島の住民が襲われたことがないのは、トゥーイを主と認め、わたくしたちのことをトゥーイの仲間だと認識しているからだろう。
「それじゃあ生まれてからおれたちで育てたら、使い魔にすることもできるかな?」
「ドラゴンを使い魔にしてる人は、見たことないなあ……」
「ドラゴンが襲うつもりが無くても、一緒に遊びたくてじゃれついてきたらレンもゼンも一撃よ」
「う……それはちょっと怖いな」
タマゴからドラゴンが生まれたら、独り立ちできるまではこの拠点で育てて、成長したら山岳エリアへ帰すつもりだ。
生態系の頂点にいるドラゴンがいなくなってしまったら、島に生息する魔物のバランスも変わってしまうかもしれない。
なるべく今の環境を守って、自然の恵みを少し分けて貰いながら暮らせるのが理想ですわ。
「はあ、はあ、はあ……ア、アーシア嬢ちゃん、大変なんだな!」
「あらスコット、そんなに慌ててどうしましたの?」
東岩山エリアの探索を進めていたスコットが息を切らして帰ってきた。
なにか危険な魔物でもいたのだろうか。
「岩山ん中で、魔原石が見つかったんだな!」
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