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62話 ミロスと奴隷


 さすがに4人も増えると全員で寝るのは厳しそうだったので、子供達を森の拠点に寝かせてわたくしはミロスと一緒に浜辺の拠点へと移動する。

浜辺にはガーちゃんもいるし、また海賊がやってきても何とかなるだろう。

森の拠点の夜間警備はマヨルカたちに任せているので、こちらも何かあっても安心だ。



「そういえば、ミロスは彼らをすぐに奴隷だと見抜きましたが、どうして知っていたんですの?」



 ずっと気になっていたことをこのタイミングでミロスに聞いてみる。

奴隷は表向きにはかなり昔に廃止されている。

しかし、ミロスは今でも裏で取引が行われていることを知っていた。



「それはな……オレも昔、奴隷としてアイル王国に連れて来られたからだ」



「……!? そ、そうだったんですのね」



 たしかに、人狼族で北ゾーエ皇国出身のミロスがアイル王国で傭兵をしているのは何故だろうと思っていたのだけれど……まさか、ミロスも奴隷だったなんて。



「まあ、オレの場合はあいつらみたいに奴隷取引をしてる闇孤児院に拾われたワケじゃなくて、傭兵として雇われて船に乗り込んだら、実はそれが奴隷船でそのままアイル王国に運ばれて……って感じだったがな」



 ミロスは北ゾーエ皇国で旅をしながら傭兵をしていた親から生まれ、そのまま親に戦いの技術を仕込まれて、15才の時に親元を離れて一人で傭兵業をしながらアージンス大陸にある亜人の国々を渡り歩いていたらしい。

その中のとある国で船旅の護衛を頼まれたミロスは、仕事を受けて船に乗り込んだらそのまま拘束されて気付いたらヨーロンス大陸のアイル王国という国にやってきていたという訳だった。



「アイル王国の奴隷商人に捕まってしばらく狭い檻の中で売りモンになってたんだが、とあるオークションにかけられるってことになって、会場へ移動するときに隙を見て逃げ出したんだ。それからは奴隷になる前と変わらず、傭兵をしながらアイル王国をふらふらと旅してるうちにいつの間にか戦争になって、気付いたらこんな島にやってきてしまった」



「今の生活は退屈ですの?」



「いいや、傭兵時代以上に毎日がスリリングで楽しいぜ。アーシアにいつ寝ぼけて蹴りを入れられるか分からんからな」



「そんなに寝相悪くないですわ!」



「気付かぬはアーシアお嬢様だけなりってな」



 わたくし、そんなに寝相悪いんですの?

そういえば最初の頃に浜辺の拠点で寝てたときもよく天井が崩れてきたりしてましたわね……

朝起きたときは、いつもミロスに抱き着いて、たまにお腹に乗っかったままの時もあったような気が……



「は、恥ずかしいですわ……」



「まあ、島流しにされて最初からそれだけ無防備に寝れていたっていうのは才能だ。傭兵としてケルディス戦争に参加することになってからしばらくは恐怖と不安でほとんど寝れなかったからな」



「それほどでもないですの!」



「うんうん、やっぱアーシアはそうじゃなくっちゃな」



 浜辺の拠点までやって来ると、海賊に壊された葉っぱのベッドと帆布の屋根が散らばっていた。



「…………」



「もう暗いからちゃんと直すのは明日以降にやるとして、とりあえず今日は寝床だけ作ってさっさと休もう」



「そうですわね」



 季節は夏。

浜辺に布と葉っぱを敷くだけでも全然大丈夫なくらい暖かい。

ミロスと一緒に寝っ転がって、星空を見ながら眠りについた。



「寝ぼけたアーシアに蹴られる方にカニせんべい1枚」



「あ、ズルいですわ。それじゃあ勝負が成立しませんわ」



「なんでお前も蹴る方に賭けようとしてんだよ」





————  ――――



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