60話 奴隷と職人ですの
「トゥーイ!」
「アーシア、無事だっ……た?」
…………。
「ミロスに絶賛攫われ中……?」
「ちげえよ」
ミロスに抱えてもらったまま、トゥーイと奴隷の子供たちが待機している森林エリアの拠点までやってくる。
そこには子供たちに嵌められている足枷を外すトゥーイとスコット、そして料理を作ってみんなに振舞うマヨルカがいた。
島民大集合だ。
「あらあら、お姫様抱っこでご登場とはなかなかやるわねえアーシアちゃん」
「ちょっと諸事情により足腰が立たなくなってしまいましたの」
「あらあら! あらあらまあまあ!!」
「ちがう、マヨルカが想像してるような意味じゃないからな」
わたくしとミロスを見ながら何故かウキウキで料理鍋をかき混ぜるマヨルカ。
急にテンションが上がったようでしたけど、なんなんでしょう。
「よし、外せたぞ。みんな、痛い所は無いんだな」
「「大丈夫よ」」
「ありがとう、ドワーフのおじさん」
「オイラはスコットなんだな」
無事に子供たちの足枷を外すことが出来たので、自己紹介もしつつ、みんなでマヨルカが作ってくれた料理を食べながらこれまでの状況を説明し合う。
海賊船から逃げてきた奴隷の子供たちは女の子と男の子が二人ずつ。
それぞれがリアとミア、レンとゼンという名前で、ミロスが言っていた通り、全員アージンス大陸にあるワンド族長国という人間族の国の出身だった。
「あなたが、ミロスさんが言ってたこの島のお嬢様?」
「あたしたちを助けようと決めてくれたアーシアさん?」
「え、ええ。わたくしがアーシアですけど……ミロス、お嬢様ってなんですの」
「まあまあ、良いじゃねえか。フォレガンドロス公爵の一人娘だろ?」
「まあ、それもそうですわね」
家を取り潰されて島流しにされても、わたくしが貴族としての矜持を忘れない限り、わたくしはアーシア・フォレガンドロス公爵令嬢ですわ。
「アーシアさん、おれたちを助けてくれてありがとう」
「アーシアで構いませんわ」
この子たちはみんなトゥーイと同い年らしい。
レンとゼンの男の子組は助けてもらったガーちゃんともさっそく打ち解けたのか、トゥーイと一緒にガーちゃんに餌をあげている。
特にゼンはガーちゃんに掴まって逃げたということもあって、とても感謝しているようだった。
「ミロスさんもアージンス大陸出身なのよね」
「ああ、オレは北ゾーエ皇国の出だな」
「まあ、あの寒い島国ね。だからこんなにモフモフしているのね」
「おいこら、変なところに手を突っ込むな」
一方、リアとミアの女の子組は海賊船から脱出するときにミロスが助けたらしく、妙にミロスに懐いている気がする。
今もミロスのお腹に手を埋めてわちゃわちゃと楽しそうだ。
「ぐ、ぐぬぬ……」
「あらアーシアちゃん、どうしたのかしらあ?」
「な、なんでもありませんわ!」
まあ、今は奴隷として売られそうになっていて心に深い傷を負っていますから、大人に甘えることも大切ですわ。
「アーシア、海賊は大丈夫だったの……?」
「大丈夫ですわ。ちょっと捕まって脅されたりしましたけど」
「それは全然大丈夫じゃなさそうなんだな」
「でも股間に正拳を食らわせて倒しましたわ!」
「それは大丈夫じゃなさそうねえ……海賊さんのヤシの実が」
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