57話 奴隷解放作戦ですの!
「ど、奴隷ですの……!?」
聞いたことがある。
昔、ギリス王国やアイル王国などが他の大陸にある国の人を連れてきて強制労働をさせていたらしい。
そういった人たちのことを奴隷と言ったと。
現在はそういったことは世界的に禁止になっているので、奴隷は存在しないとお屋敷の先生から習った気がするのだけれど……
「ど、奴隷はもう存在しないんじゃ……」
「表向きはな……しかし、今でもアンダーグラウンドの世界では奴隷の売買が行なわれている。あの海賊みたいにな」
ミロスの話によると、あの海賊船から逃げようとしている奴隷の子供たちはおそらくアージンス大陸にある唯一の人間族の国『ワンド族長国』から連れて来られたのだという。
どうしてミロスがそういう事情に詳しいのかは分からないが、とにかく今目の前で起こっていることは、違法な奴隷を連れた海賊船と、そこから必死に逃げようとしている子供達だ。
「……そ、それ以上行くと、海に落ちちゃうよ」
「足枷の重りがあるから海に落ちたらまずいな……」
船から垂れるアミを伝って途中まで降りた子供達だが、そこで足が止まってしまう。
アミの下は砂浜ではなく海に面しているため、泳いで岸まで行かないといけない。
しかし、子供たちの足に付けられた重りのせいでそのまま海に落ちたら沈んでしまう可能性が高い。
「ミロス、どうにかして助けられませんか……?」
「四人か……二人までなら抱えて連れて来れそうだが」
「足枷は破壊できませんの?」
「分からん。破壊しようとしている間に海賊たちが戻ってきてしまうかもしれん」
「ガーちゃんなら、一人いけそう。もう一人は、僕がサポートしながら泳げば……」
「それでいきましょう」
奴隷の子供たちは女の子と男の子が二人ずつ。
ミロスに女の子二人を抱えて泳いでもらい、ガーちゃんが男の子一人を掴んで脱出、もう一人の男の子はトゥーイが沈まないようにサポートしながら泳いで脱出する。
「わたくしは、いざとなったら海賊の気を引いて船から注意を逸らしますわ」
「出来ればなにもないといいんだが……」
「アーシアが、一番心配……」
「島民代表の実力を見せてあげますわ!」
こうしてわたくしたちの奴隷救出作戦がスタートした。
―― ――
「くそっ! これ以上は、進めない……!」
「せっかく逃げられると、思ったのに……!」
「レン! ゼン! 誰かこっちに来る!」
「か、海賊が戻ってきたのか!?」
「違う、アレは……人狼族……?」
海賊船の下で立ち往生する奴隷たちに近づいてきたのは、大きな人狼族の男と小柄な人間族の少年だった。
「オレはこの島に住む、アージンス大陸出身のミロスだ。おまえら、ワンド人だな……この船の奴隷か? もしそうなら脱出を手伝おう」
「っ!! た、頼む!」
彼の言葉で同胞の亜人族だと分かった子供たちは、彼の説明を聞いて脱出を始める。
「あたしはリア」
「あたしはミア」
「「よろしくね」」
「お、おう……」
人狼族の男はリア、ミアと名乗った少女たちを抱えて海を渡る。
「ギィィ!」
「こ、こいつ、おれのこと食べたりしないよな……?」
「大丈夫、さあ、つかまって……」
「ゼン、死ぬなよ……!」
ゼンと呼ばれた少年は、巨大な鳥の魔物に捕まって船の裏から浜辺へ。
「君は、ぼくがサポートする……」
「ああ、よろしく頼む……おれはレンだ」
「トゥーイだよ。よろしくね……」
最後の一人、レンと名乗った奴隷の少年は、トゥーイという魔物使いの少年と一緒に二人で浜辺を目指して泳ぎ始めた。
…………。
「どうやら、みんなうまく脱出できそうですわね……」
「あの寝床、ロクな食いもんが無かったですぜ!」
「おっかしいな、最近使われた形跡は有ったんだが……」
「どうしやす、キャプテン」
「うーん……もしかしたら森に食いもんがあるかもしれねえし、一旦船に戻って……」
「ま、マズいですわ!」
海賊たちが船の方へ戻ろうとしている。
ここは……わたくしがどうにかしませんと!!
「あら? もしかしてこの島にお客様ですの!? 良かったらこの毒……じゃなかった、美味しいキノコをお召し上がりになりませんか!?」
「「「「……は?」」」」
…………。
「カニせんべいもありますわよ?」
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