53話 マヨルカの薬草菜園ですわ
「うんうん、良い感じに根付いてくれてるわねえ」
「マヨルカ、何やってるんですの?」
ここ最近、スコットが建てている草原エリアの拠点の近くでマヨルカが畑のようなものを整備して何かを植えていたので、気になって声をかける。
「薬草園を作ってるのよお。毎回森の中を探し回るのも大変だから、よく使うものはここで栽培して増やしておこうと思ってねえ」
「さすがマヨルカ、ナイスアイディアですわ」
草原の一部を刈って石で囲んだマヨルカの菜園には、森の中で採ってきた色々な種類の薬草が風に揺られていた。
「森から草原に持ってきてもちゃんと育つものなんですの?」
「種類によるわねえ。でもジメジメした森の木陰じゃないと育ちが悪いものより、しっかりと日が当たる所に出したら成長が促進する種類の方が多いわよお」
「そういうものなんですのね」
キノコとかはジメジメした森じゃないと育ちにくいけど、薬草や根を使う毒草などは草原エリアで普通に育てられるらしい。
「あとは、こうやって周りの雑草に負けないようにちゃんと栽培エリアを隔離して整備することが大切よお」
「VIP対応ですわね」
薬草や毒草なら、野菜と違って魔物に食い荒らされる可能性も少ないだろう。
わたくしも森に生えてる果物の種とかを植えて果樹園でも作ろうかしら。
「あとは、野菜とかもあれば育てて定期的に収穫できたりすればかなり食生活も良くなるのだけれどねえ」
「美味しい野菜は少ないですものね」
一応、森の中には食べられる根っこというか、わたくしたちが島流しにされる前まではよく食べていた野菜の原種みたいなものが生えてはいる。
しかし普通の野菜と違ってかなり青臭くて苦みが強いので、長い時間をかけて食べやすい品種になるように改良していく必要がある。
「野菜の苗を売りに来てくれる商業船舶が立ち寄ってくれたりしないかしら」
「それはだいぶ、命がけの商売をしてるわねえ」
マージンス島の周辺海域には凶暴な魔物がたくさん生息しており、各国の軍艦ですらこの島にたどり着くことが難しい状況で、一般の商人の船が定期的に行き来するのはほぼ不可能に近いだろう。
「それに、アタシたちは貨幣を持ってないもの。物々交換するにしても、なにかこの島にしかない資源のようなものを見つけ出さないとねえ」
「この島にしかない、資源……」
なんだろう、カニせんべいとか?
いや、あれはハンマーヒヒたちと交渉するのには使えるけど、別に他の国でも作れるし……
「分かった! チャンドラの果実ですわ!」
「……まあ、あれは確かにこの島でしか採れないかもしれないわねえ」
―― ――
「というわけでチャンドラ、この実を島の名産にしたいですわ」
「チャンドラの実、めーさんか?」
「いや無理だろ」
先日、アルラウネ族のチャンドラの髪になった果実。
採ってすぐは酸っぱくて食べられなかったけど、数日置いて熟成したものを食べたらとっても甘くて美味しかったのだ。
しかも今までに食べたフルーツのどれとも似ていない不思議な風味……
「これは売れますわ」
「誰に売るんだよ」
「もしかしたら将来、商業船舶が立ち寄って取引できるようになるかもしれませんわ。その時になってから準備しては遅いのですから、今のうちに島で価値のある物を探しておきませんと」
「まあ、可能性が無いとは言い切れないが……」
「チャンドラの実、ヘビ肉何切れ分だ?」
「いっぱい売れれば、丸々一匹だって食べられますわ」
とはいっても、チャンドラ一人から採れる実の量ではここにいるみんなのおやつ程度にしかならないですわね。
「もっとたくさん採れれば良いのですけど……」
「アーシア、これたくさん欲しいか? じゃあ、みんなから採りにいくか」
「へ?」
「採りにいく、ってなんだ……?」
チャンドラが立ち上がり、わたくしとミロスの手を引いて森の西側へ顔を向ける。
「チャンドラたちの棲んでる所、案内する」
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