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52話 チャンドラの果実ですの!?



「ん~……なんか髪の毛がムズムズする。ミロス掻いて」



「髪を掻くってなんだよ。背中なら分かるが」



「ううん、髪の毛」



 ある日の夜。

チャンドラが居心地悪そうにモジモジしながらミロスに助けを求めていた。



「ミロスの爪は髪を梳くのにちょうど良いですものね」



「いやクシ使えよ。この間作ってやっただろ」



「木櫛はもふもふ部分がないから物足りませんの」



 少し前にミロスが髪の長いわたくしとマヨルカの為に討伐した魔物の毛と木を加工してクシを作ってくれたので、今は水浴びの後にマヨルカの魔法で髪を乾かしながらクシで梳いているのだけれど、島に来た当初はミロスが手ぐしで適当に髪を整えてからもふもふの毛の部分で頭を撫でてくれていた。

あのもふもふで撫でてもらうとなんとなく髪がふわっと仕上がる気がするのよね。



「ったく……ん? チャンドラお前、花がいくつか枯れてパリパリになってきてるぞ」



「あ、それ取って」



「だ、大丈夫なのか……?」



 アルラウネ族であるチャンドラの髪は青みがかった綺麗な深緑色をしていて、所々小さな花が咲いていた。

その花が萎れて枯れかかり、その感触がムズムズの原因みたい。



「お花の根元に小っちゃいふくらみが出来てるわねえ」



「それ、実がなるやつ」



「チャンドラの頭、果実できるの……?」



「ほぉ~、アルラウネ族ってのは面白い生態をしてるんだな」



 マヨルカたちも興味深そうにチャンドラの髪を触っている。

わたくしも前に触らせてもらったことがあるけど、瑞々しくてツヤがあり、すべすべの綺麗な髪だった。



「……ふう、ちょっとスッキリ。ミロスありがと」



「おう。アルラウネ族も大変だな」



 ミロスに髪を手入れしてもらって満足げなチャンドラ。

むう……ちょっとうらやましいですわ……



「ミロスミロス、わたくしの髪も梳いてくださいまし」



「ったく、しょうがねえなあ……」



「わーい! ですわっ」



「あらあら、アーシアちゃんたら甘えるのが上手ねえ」



 やっぱりミロスに髪を手入れしてもらうのが一番ですわ。



 ―― ――



 それから数日後。

建設中のお家の横で朝食を食べていたら、なんだか普段よりもテンションの高いチャンドラがやってきた。



「実がなった!」



「「えっ!?」」



「しゅーかくしてしゅーかく!」



「「ええ……」」



 ミロスと一緒に後ろを向いたチャンドラの髪を確認してみると、たしかに所々にブルーベリーのような青紫色の実がなっている。



「これ、普通に採って大丈夫なのか……?」



「枝毛のとこからちぎってとる」



「ミロス、おねがいしますわ」



「あ、ああ……」



 チャンドラの髪になっている実は長い髪の途中から枝分かれした毛の先に付いている。

この枝分かれしたところからちぎって採るらしい。

い、痛くないのかしら……?



「それじゃあ、いくぞ」



 ぶちっ。



「ん〝っ」



「だだだ大丈夫か!? 痛かったか!?」



「痛くない。どんどんしゅーかくしてだいじょぶ」



「ほ、本当か……?」



 ぶちっ。



「お〝っ」



「おい本当に大丈夫か!?」



「うん、だいじょぶ……」



 ミロスはチャンドラの後ろにいて見えてないけど、チャンドラは髪になった実を収穫されるたびになんともいえない恍惚そうな表情を浮かべていた。

アレですわね、マッサージしてもらってる時のマヨルカみたい。



「チャンドラ、この実は食べられますの?」



「食える。アーシア、いっこ食べてみ〝っ」



「ミロス、ちょっとストップですわ!」



 ちなみにチャンドラの実はものすごく酸っぱかった。

何日か置いて熟してから食べると美味しいらしいので、あとでまた食べてみよう。



「よし、あと一つだな……よっと」



 ぶちっ。



「あ〝っ」



「次からはわたくしが収穫しますわ!」





————  ――――



読了いただき、ありがとうございます!


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