47話 交渉いたしましょう!
「よし、もう大丈夫だぞ」
「あっ……はいですの」
ミロスの身振り手振りで耳を抑えていた手を離す。
ついさっきまでウギウギうるさかったハンマーヒヒたちがミロスにビビッて後ずさりしていた。
「ウ、ウギギウギ……」
「ボスが『きょ、今日の所は見逃してやる……』って言ってる」
「負け惜しみなんだな」
崖の上にいたハンマーヒヒのボスが指示を出すと、わたくしたちの前にいた若い手下は崖に逃げ帰り、どこかへ消えていった。
「巣に帰ったようだな」
「あ、あの、ミロス……助けてくれてありがとうございます……」
「ん? いや、オレは別に……ちょっと大声出して追い払っただけだ」
ミロスは気付いていないのかもしれないけど、さっきのハンマーヒヒたちに向かって叫んだセリフ、わたくしにも聞こえてましたの……
『アーシアが欲しけりゃオレを倒して奪ってみろ!!』
「……っ~~~!!」
「お、おいどうしたアーリア。顔が赤いが……熱か? 毒キノコでも拾って食べたか?」
「な、なんでもありませんわ! 毒キノコも食べてませんの!」
「そうか? それなら良いんだが……」
「はっはっは! 若いんだな、青春青春」
「わかさせいかつ?」
―― ――
「さて、とはいえこれ以上先に行くにはあのハンマーヒヒたちをどうにかしないといけないな……」
「勝手に石材を持っていくわけにはいきませんわ」
ハンマーヒヒたちを追い払いはしたものの、岩山エリアの探索、採取をわたくしたちで勝手に進めるのはここに棲んでいる彼らに対する侵略行為になってしまう。
後から島に来たのはわたくしたちの方だ。
ここはギブアンドテイクの精神でいくべきだろう。
「アーシア嬢ちゃんを出すわけにはいかんからなあ。岩山の石材を貰う代わりに、なにか別の物をあいつらにあげた方が良いんだな」
「ハンマーヒヒの欲しいもの……」
なんだろう、バナナとかかしら?
でもバナナならこの辺りにも生えていたし、彼らも普通に採って食べてそうですわね。
「カニ」
「えっ?」
「あいつらの好きなもの、カニ」
「カニですの?」
「そう、カニカニ」
両手の指をピースしてカニの真似(?)をするチャンドラ。
そのがに股横歩きはやめなさい、女の子なんだから。
「カニか。海辺には結構いたが……」
「森の方まで来ると見かけないんだな」
「森にいるカニ、美味しくない」
「あっちょっと、チャンドラッ?」
おもむろに森の中へ入って何かを探すチャンドラ。
森にいるカニってなにかしら?
この辺りは小川も近くないから、サワガニも獲れないと思うのだけれど……
「獲れた。森のカニ」
「きゃああああ!? サ、サソリですの~!?」
「……これはレッドスコルピオだな」
チャンドラが持ってきたのは手のひらサイズの真っ赤なサソリ型の魔物だった。
「こいつは酸っぱくて辛い。海のカニのほうがうまい」
「まあ、カニじゃないしな……」
「チャンドラ! ポイしなさいポイ!」
「ぽいっ」
「きゃあああああ!? なんでこっちに投げるんですのっ!? 後ろの森に逃がしてくださいですわ!」
「たしかにー」
「おっうまい。美味くないけど」
「なにもうまくありませんわ!!」
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