46話 岩山のボスですの!?
「ウギギギィ!」
「ウッギィ~!」
「あのおサルさんはなんですの!?」
東の岩山エリアを探索中のわたくしたちの前に現れたのは、数匹のサル型の魔物だった。
先が石斧のようになっている長い尻尾を向けて、こちらを威嚇してきている。
「チャンドラー! 危険だから戻ってこい!」
「あいあいさー」
崖の上で魔物と対峙していたチャンドラが、軽い足取りで崖から飛び降りて戻って来る。
すごいですわ、あの高さから飛び降りるなんて……わたくしだったら骨折してますわ。
「ウギギギギギギ!」
「あのデカいやつ、この山のボス」
「なんか言ってますわ」
「『葉っぱ女は帰れ』って言ってる」
「チャンドラめちゃめちゃ悪口言われてますの!」
他のサルよりも一回り大きい個体が群れの一番後ろにどんと構えている。
あのサルがこの東岩山エリアを縄張りにしている魔物のボスらしい。
「こいつらはおそらく〝ハンマーヒヒ〟だな」
「オイラも見たことあるんだな。ケルディス鉱山にも似たようなのが生息してたもんで」
「採掘の邪魔でもされたか?」
「……邪魔が入る前に、軍の奴らが群れごと全滅させたんだな」
「酷いですわ……後から来たのは鉱山の採掘に来た人間の方ですのに」
「ウッギーウギギギィ!」
ハンマーヒヒのボスは崖に落ちている石を手に取りながら何かを叫んでいる。
「チャンドラ、なんて言ってますの?」
「『石、勝手に持ってくな』って言ってる」
「サル型の魔物は比較的知能が高い種族が多い。縄張り内にある物は自分たちの所有物だと認識しているのだろう」
確かに、わたくしだって自分たちの拠点のものを知らない人に勝手に持って行かれたら怒りますものね……
「何か物々交換できるものが必要なのかしら……」
「チャンドラ嬢ちゃん、彼らに欲しい物を聞いたりできないんだな?」
「お任せあれー。んー……コホン、うっきーうきうき」
「なんかちょっとイントネーションが違う気がするが大丈夫か……?」
「ウッギーウギウギィ!」
「ちゃんと伝わってそうですわ」
もしかしたらチャンドラたちアルラウネ族は森に、ハンマーヒヒたちは岩山に棲み分けて、昔から争わないように交流を続けているのかもしれない。
「ウギギッ!」
「ウギィ!」
「あっ何匹かこちらに降りてきましたわ」
ボスザルが何かを叫ぶと、崖から数匹の若そうなサルがこちらに向かって降りてくる。
「チャンドラ嬢ちゃん、ボスはなんて言ってんだ?」
「えっとねー、『そこの金髪女を置いていけ』って言ってる」
…………。
「えっ? わ、わたくしですの?」
「ウッギギ~!」
「『ボスの番にしてやる』って言ってる。アーシア、つがいってなんだ?」
「た、多分……お嫁さんってことですわ」
よく分からないが、わたくしはハンマーヒヒのボスに気に入られてしまったらしい。
「え、えーと、どうしましょう。さすがに魔物のお嫁さんになるのはわたくしちょっと……」
「…………交渉決裂だな」
「ミ、ミロス?」
わたくしを連れて帰ろうとする若いハンマーヒヒたちの前に出たミロスは、今までに見たこともないような険しい表情……戦場に立つ傭兵の顔をしていた。
「大丈夫だアーシア、なにも心配しなくていい……お前ら、ちょっと耳を塞いでおけ」
「わ、わかりましたわ……?」
「耳ふさぐ」
「ほい」
わたくしたちはミロスに言われた通りに耳を塞ぐ。ハンマーヒヒたちを除いて。
「すぅ…………グルルルルルル……ワォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」
「ウギィッ!?」
「ウ、ウッギギ……」
…………。
「おい、ボスザルども!! ウチのお嬢様がそんな石っころと同等なわけねえだろうが!! アーシアが欲しけりゃオレを倒して奪ってみろ!!」
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