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2話 食材を探しますわ!



 春期の初月、無人島生活1日目。天気:快晴。



「はあ……よし、ここでクヨクヨ落ち込んでいても誰も助けてはくれません。まずは水と食べ物を探しましょう」



 一応、下船するときにある程度の水と非常食を渡されたので、しばらくはこれで生活することはできるだろう。

とはいえ、それだけではいずれ餓死してしまう。



「わたくしはアーシア・フォレガンドロス。戦の英雄フォレガンドロス家の一人娘なのです。これくらいのサバイバル生活、なんてことありませんわ!」



 とはいっても、お父様の部下から雑談混じりに教わった兵糧の現地確保の話と、子供の頃好きでよく読んでいた『フェアリーランド漂流記』という童話の知識しかないのですけど。



「こんなことになるなら戦における遠征時の野営なども勉強しておくんでしたわ……」



 浜辺から島を見渡す。

正面は草木が生い茂るジャングルの様な深い森になっていて、更にその奥には大きな山の頂上が少し飛び出て見える。

砂浜は左右共に途中から崖になっていて、島をぐるっと一周するのは難しそうだ。



「とりあえず、海で魚を……いえ、あのクラーケンみたいなのが他にもいたら、わたくしが食料になってしまいますわね」



 動きやすいように髪をまとめ、スカートの裾も上げる。

何か踏んだら危ないから靴は履いていた方が良いだろう。



「なるべく浜が見えるくらいの位置で森の浅い所だけを探索してみましょう」



 お屋敷にあった植物庭園とは違って、ここは手入れも何もされていない自然の森だ。

道も無くて、少し進むのにも苦労する。



「食べられる果物とかが見つかると良いんだけど……あら?」



 早速地面に木の実のようなものが落ちているのを発見する。

この辺りに生えている木から落ちたのかしら。



「よし、ちょっと食べてみようかしら」



 大丈夫、ひとくち齧っただけで毒が回って死ぬような植物は早々生えていないと習いましたの。

ちょっとお腹壊すくらいで済むはずですわ。



「外の殻は多分食べられませんわね……くっ、か、硬いですわ」



 歯で殻を割って、中の白い部分を食べてみる。



「うん、ほんのり甘くて美味しい……ですの」



 ……はあ、美味しい紅茶と木苺のジャムがたっぷりのスコーンが食べたいですわ。



「いけないいけない、とりあえず食料ひとつ確保ですの」



 周りに落ちていた木の実を拾い集めてポケットに入れておく。

これでお腹が満たされるとは思わないけど、多少は非常食を食べつくしてしまうスピードを落とせると思う。



「この辺りの木に登ればもっとあるのかしら。でもスカートで木登りはちょっと登りにくくて危険ですわね……」



 どうせ誰も見ていないのだし、下着になって木に登ってやろうかしら。

いやでも島流しにされた身とはいえそれはさすがに、フォレガンドロス公爵令嬢としてのプライドが……というか、生身で木登りも普通に危ないですわね。

毒ヘビとかいたら大変ですわ。



「うーん、思いっきり蹴り飛ばしたら木の実が落ちてきたりしないかしら」



 たったったった……



「チュウチュウ、チュウ」



「うわっ! な、なんですの?」



 拾った木の実を持ったまま頭上を見上げて考え事をしていたら、いつの間にかリスのような魔物が身体を伝って手のひらにある木の実を食べようとしていた。

人間を見るのは初めてで捕食者として認識していないのだろうか、全然こちらを警戒していない。



「あら、あなたもしかして……」



「チュウ?」



「お肉ですわね!!」



「チュッ!?」




————  ――――



読了いただき、ありがとうございます!


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————  ――――

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