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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第一章 分岐の始まり
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第五話 初戦闘


「むむむ……」


 武器屋の中で唸りをあげているカイ。理由は単純で自分が使用する武器が決めきれないからだ。


「双剣はロマンあるけど二本の武器は捌ききれないだろうしなぁ……。短剣はリーチが短くて決め手になりにくいだろうし、片手剣が無難だけどなぁ……」


 平凡な高校生であったカイに、剣を握った経験などなかった。ゆえに扱いやすい得物を選ぼうとするのだが、ここで憧れやロマンを求める心を捨てきれなかった。


「くっ……。よし、決めた! 俺の相棒はお前だ!」


 最終的にカイが選んだのは大剣。両手で扱えてかつ、力を乗せやすいだろうと思ったことが決め手だ。


 鉄でできた大剣を購入しようと、店のカウンターへ持っていくと店主の男がひどく困り果てた顔をしていた。


「ん、おっさん。なんか悩み事でもあるのか? すごい困ってそうな顔してるけど」

「実はな、最近武器の素材になる黒鉄の在庫が減ってきててな…。最近は仕入れ先の在庫自体が減ってきてるみたいで参っちまってんだ」


「なあ兄ちゃん、多分『プレイヤー』の人だよな。もしよければ近くの鉱山から黒鉄をまとまった数取ってきてくれねえか? その代わりと言っちゃあなんだが、黒鉄を使った武器を後で無料でつくってやるからよ」


 これはおそらくお使いクエスト的なやつか?と考えるが、カイはこの依頼は受けてもいいと考えていた。もともとこの後、街から南側にある森でレベル上げをしようと考えていたところだったし鉱山はそこから少し進んだ場所にある。大した手間でもない。


「わかった。黒鉄を取ってくればいいんだな?俺がやってくるよ」

 

 助かる!とひとしきり感謝された後、鉱山の場所が示された地図を受け取りカイは店を後にした。






 その後、武器以外にも防具やアイテムをそろえるため店をまわっていたカイだったが、初期資金として保持していた5万ゼル(1ゼル=1円)を使い果たしたため、資金を稼ぐという目的のためにも、いよいよ狩りへと赴こうとしていた。


 ちなみに現在のカイの装備はこうだ。


「カイヤグラ」というモンスターの素材を使った全身装備と鉄の大剣、アクセサリー類も買おうかと思ったが、どれも高く資金が足らなかったため断念した。


「じゃあいくか! 近くの森なら低レベルのモンスターしか出ないみたいだし、そこでレベル上げといこう」


 そういってカイは南の「浅慮の森林」へと向かっていく。








「さてモンスターはいるかな…っと、いきなりお出ましだな」


 カイの目の前にいるのはカブト虫を模したようなモンスター「ガイアライ」。角による突進攻撃を仕掛けてくるモンスターだ。


「記念すべき初戦だ。気合入れていくぞ!」


 カイが大剣を構えた瞬間にガイアライが勢いよく突進をしてくる。しかしカイは慌てることなく大剣の腹で受け止め、それを横なぎで弾き飛ばす。


「おらぁっ!《鋭刃》!」


 自身の攻撃スキルを用いて、腹をむき出しにして転がっているガイアライを攻撃する。そうすると体力が尽きたようでガイアライは光の塵となりアイテムを残して消えていく。


「ふぅ~。しっかり勝てたな」


 戦闘中は冷静さを保つように心がけていたが、その集中が途切れれば緊張の反動が来る。


「そういやレベルは…おっ、3に上がってるな」


 ステータスを確認すればレベルは上がっており、ステータスも同様に上がっていた。


「この場所でも十分戦えることが分かったし、ひとまず鉱山を目指しながら進んでいこう」


 ドロップしたアイテムをインベントリに回収し、自身の強化を図りながらカイは森のさらに奥深くへと進んでいった。








 森を3時間ほど進んだ頃、ようやく森を抜けて鉱山にたどり着くことができた。森自体はさほど広くはないが、モンスターとの戦闘を幾度か行っていたため到着するまでに時間がかかってしまった。


 その分経験値も得ており、現在のレベルは13まで上げることができた。


「えーっと。ここで黒鉄をまとまった数取ってくればよかったんだよな。結構見渡すだけでもかなりあるし、すぐに集まるだろう」


 幸い数が残っているようで鉱石が枯渇していたわけではないと知り、安堵する。


「それに森では見なかったモンスターもいそうだし、レベル上げと並行して使えそうな素材の採集なんかもできそうだな」


 そうして鉱石の採掘を開始し、モンスターとの戦闘をはさみながらも順調に黒鉄の採集を進めていった。








「よし、こんなもんでいいだろう」


 気が付けば1時間ほどが経過し、それなりの数の黒鉄が取れていた。


「これだけあればしばらくは武器屋のおっさんも困らないだろうし、俺も武器を作ってもらえる。そんじゃ街に帰るかね」


 そういって街に戻ろうとしたとき、不意に背後から聞きなれない足音が響いてきた。それはまっすぐにこちらへ近づいてくるようにも聞こえる。何だと思ったカイが足音の方向へ視線を向けると、そこには全身が岩石で構成された巨大なゴーレムがこちらへ向かってきていた。


「なっ、なんだあいつ!」


 カイが驚きながらも大剣を構え、今にも襲い掛かろうとしているゴーレムと相対すると、振り上げてきた右腕を転がりながらすんでのところで回避する。


「もしかしなくとも、黒鉄が取れなくなった原因はこいつか!」


 そう。本来ならばこの場所に岩石のゴーレムは生息していない。しかし、人為的なものかあるいは偶発的な要因が重なったのか、この場にゴーレムが現れるようになってから鉱石を採掘しようとするものを襲うようになったのだ。


 だが今はそんな事情を気にしている場合ではない。このゴーレムは見た目に反して動きも素早く、逃げるのは困難だろうと判断したカイは戦うことを決める。


「ぐっ、やるしかないか!《身体強化》!」


 《身体強化》を発動したカイは、ゴーレムが左腕を振り下ろした瞬間の隙を狙って腕を切りつける。しかしそこには浅い傷をつけるだけでダメージが通った様子はない。


(どうする。こいつに闇雲に攻撃を続けても意味はない。むしろ疲弊した隙を付かれて攻撃を食らっておしまいだ)


 攻撃を回避しつつ、受け流し、なんとかしのいではいるがそれも時間の問題。いつまでもこの状態が続くわけではない。


(考えろ。モンスターである以上、何かしらの弱点はある。こいつの体、動きをよく見ろ。そこから弱点を見つけ出せ!)


 今までにないほど集中し、回避をしながら観察をしているとふとゴーレムの左胸がほんの一瞬だが輝いているように見えた。


(なんだ今のは? あそこに何かがあるのか……今見えたものがこいつの核か?)

(もしそうだとすればそこを攻撃する価値はある。だが全力で切り付けても傷しかつけられなかった上に核ともなればその頑丈さも上がっているはずだ。…けどもう《身体強化》の効果も切れる。やるしかない!)


 覚悟を決めたカイはゴーレムの懐へと潜っていき、その左胸に狙いを定める。…がゴーレムもカイをしとめるチャンスだと思ったのかその体ごと押しつぶそうとしてくる。


「おおおおおおっ!!《鋭刃》!」


 渾身の力をこめてはなった刃はまっすぐにゴーレムの左胸をとらえ………その体を貫通させた。


 核を砕けたのか、どうかは分からなかったがゴーレムはそのまま動くことなく、光の塵となった。


「はぁっ…、はぁっ…」


 その場に一人残されたカイは疲労困憊といった様子だったがそれとおなじくらいに勝利の余韻をかみしめていた。


「俺の…勝ちだぁっ!!」


 鉱山には男の歓喜が響きわたっていた。



大剣っていいですよね。一撃で大ダメージを与えられるあの感じが。





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