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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点
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第三十九話 朝の日常風景


 毒に侵されて死にかけ、命からがら回復させることはできたが昨日は怒涛の展開が起こりすぎた。


 その後は大きなことこそなかったが、やはり自分でも気づかない間に体は限界を迎えていたようだ。


 倒れこむように自分のベッドに体を預け、気絶するように眠りに入った。


 おかげでぐっすりと朝まで眠ることはできたが、原因が原因なので素直に喜べるようなことでもない。



 それと、ここ最近「レコダイ」の中に入り浸りっ放しだったため、現実の方が疎かになっていないか不安でもあった。


 夏休み中とはいえ、さすがにゲーム全開で過ごしてしまうのはダメだろう。課題は事前に終わらせているため懸念する必要はないが、少しは体を動かしたほうがいい。



 というわけで、今日は「レコダイ」にログインするとしても最低限と決める。


 こうして自分の中で、最低限の生活水準を保つ努力をしておかなければ一気に自堕落になってしまう。ゆえに気を付けなければ。


「っと、リンカに連絡入れておかないと。『今日はログイン控えておく』…と」


 こうしてメッセージを送っておかなければ、無意味に待ちぼうけさせてしまうのでしっかりと報告は心がける。




 向こうから『じゃあ私も今日は好きに過ごすねー!』と返信が返ってきたのを確認し、これで何の憂いもなく一日を過ごせるようになった。



「そういえば、寝てる間に少し首が痛いんだよな…枕が合わなかったか?」


 カイは睡眠時も当然だが、「レコダイ」にログインしている間もベッドに横たわった状態を保ち続けている。


 一応姿勢に気を遣ってはいるが、寝具そのものが合っていないのかもしれない。


 さすがにこのままでは、ゲームのプレイ時にも日常生活にも支障が出かねないので何とかしなければならない。


「せっかくの休みなんだ。見に行ってみるか」


 近所にそれなりの規模のショッピングモールもある。そこならば寝具も置いてあるだろう。


 退屈しのぎという意味でもうってつけの場所だ。行くまでの道中は多少面倒くさいが、そこさえ我慢してしまえば文句はない。


 そうと決まれば、早速向かうために身支度を整える。そこまで時間のかかるものでもないので、着ていく服を決めたら荷物をまとめていく。



 部屋にある物だけでは足りないものがあったため、自室のある二階から一階へと降りていく。


 一階のリビングに入ると、母親の千堂(せんどう)彩香(あやか)が朝食を作っていた。


「あら、おはよう。今日は早かったわね」


 うちの母さんは料理を趣味としており、時折アレンジレシピにも手を出すほどに好奇心も旺盛だ。


そしてその容姿も年齢よりも若く見られることが多く、それを本人も誇りに思っている。



 ちなみに実際の年齢を口に出していじるなど決してしてはいけない。その見た目からは想像もできない力強さで締め上げられておしまいだ。


 一体どのような暮らしをしてきたらあんなパワーが出てくるのか……まさに神秘である。


 しかしわざわざ検証する気も起こらない。その前に意識が落ちることは目に見えている。


 人は失敗から学ぶ生き物なのだ。


「ぐっすり寝られたからな。早起きはできたけど、少し体が痛くって…」

「ゲームするのはいいけど、ちゃんと勉強もやっておきなさいよ? 後で困らないようにね」


 うちの両親は息子がゲームをすることにさほど反対していない。やるべきことをやっているのなら別に構わないという方針なのだ。


 捉えようによっては奔放すぎると思われるかもしれないが、この方針には助けられていることも多い。


 ゲームという娯楽があるからこそ、プレイするための時間を確保するために勉強することは苦ではないし、漫然とするよりもやる気は出てくる。


 事実として今も、「レコダイ」で遊ぶために課題は全て終わらせているし結果も出している。


 だがこれも、俺がやるべきことをやるという信頼を寄せていくれているからこそ任せてくれているんだ。


 そのことを忘れてはいけない。


「わかってるよ。ちゃんとやってるし、もう課題も終わらせてある」

「ならいいわよ。感心ね」


 そこで追及も止む。リビングを見渡せばいるのは母さん一人であり、ほかには誰もいないようだ。


 父さんは多分仕事だろうけど……誠は自分の部屋で勉強か?


「母さん、誠は?」

「さっき朝ごはん食べ終わって出かけてったわよ。なんか足りないものがあるんですって」


 どうやら買い物に出かけたらしい。それくらいなら俺がついでに行ってもよかったが………勉強の合間の休息も必要なことだ。


 余計な口出しはすまい。



「なるほど。それじゃあ俺も後で出かけてくるよ。枕が合わない気がするからさ」


 自分も出かける旨を伝え、了承を得る。


「いってらっしゃい。ただその前に朝ごはんはちゃんと食べてきなさいよ?力入らなくなるからね」


 そう言って母さんが用意してくれた朝食は、丼にガッツリと盛られた白飯と主菜の肉。明らかに朝一番から食べるものではない。


「母さん……朝からこの量はやめてって言ったのに……」

「そうだったっけ? でもしっかりと食べないと昼まで持たないわよ?」


 朝食を抜くことに反対なのは同意するが、これはいささかボリュームがありすぎる。


 母さんは料理を趣味としているが、そのせいで基本を見失うことがある。この異常な量の朝食もその一つだ。


 さすがに普通の人間ではこれを腹に詰め込むのはきつすぎる。まず入りきらない可能性の方が高い。



 ちなみに、母さんは余裕でこの量は食べることができる。たくさん食べればその分健康になるというのを持論としているだけはある。


 ……本当に同じ人間なのかを疑わしくなってくるが、これでも血のつながった家族だ。そこも母さんの美点と思っておこう。


 ただ目の前のものを食べきることは不可能なので、少し母さんに譲渡することにした。


 そうして食べきれる量まで減らしてから、ようやく俺の食事が始まる。



 特に変わったこともない朝の日常風景だが、これはこれで居心地のいい空間なのだ。



ここから少し現実の話へ。


戒斗の母親は優しいところが多いですが、ツッコミどころも同様に多い。


ただ年齢を追求することは決してしてはいけない。


目に見えている地雷を踏みぬく馬鹿はいないのです。




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