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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点
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第三十三話 武具の整備


 オルタと別れてから、今後の予定も特に定めていなかった俺たちは動きを決めあぐねていた。


「どうしようか……もう目的のメインは終わっちゃったしね…」

「そうだなぁ…。また森に入るって言うのも味気ないし」


 なんというか、明確な目標が定まらなければやる気が起きずらい気がする。


 先の出来事が刺激的過ぎたために、無意識のうちにより強い刺激を求めてしまっているのかもしれない。


「こんなんじゃだめだな。一旦村の中を散策しようか」

「さんせー。こんな状態じゃモチベーションも上がらないしね!」


 ひとまずの動きだけを軽く決めて、その後の本格的な動きに関しては後に回すことにした。





 村を見回りながら巡っているカイ達だったが、見れば見るほどここは鍛冶の村なんだということを実感させてくる。


 少し見渡せば鉄を打ち付ける職人の姿が目に入り、そこかしこに武具を販売している店が存在しているのだ。


 やはり改めて見ても、鍛冶を中心とした生活で回っていることが伝わってくる。


 と、そこまで考えていたところでリンカが、何かを思い出したかのように言ってきた。


「そういえばさ、私たちってここには採集に来てたけど……装備の整備もしようって話してなかったっけ?」

「あぁ、そんなことも言ってたな!」


 言われるまで完全に忘れていた。確かにアイレンにはキノコ狩りをメインとしていたが、サブの目的として武具のメンテナンスをしてもらおうと、着く前に話し合っていた。


 ここで言ってくれて助かった。もし言い出されなければ、それを頭から抜かしたまま戻っていたかもしれない。


「色々なことがありすぎて頭から抜けてたな……危なかった」

「あはは! 今思い出せたならいいでしょ! どっかのお店を見てこうよ!」


 その誘いに賛同し、いくつかの店を見ていく。






 何軒かの店を訪ねてメンテナンスに関して聞いていくが、今は武器製作の依頼が重なってしまい多忙で断られたり、ちょうど店主が不在だったりと、なかなか都合のつく場所に当たらなかった。


「どうすっかな………」


 まさかここまで難航するとは思っていなかった。当初の予定ではメンテナンスを依頼した後、そのままレベリングを行おうと思ってたのだが……


予想外に時間がかかってしまったため、それにもあまり時間はかけられないだろう。


 ともかく今は、武具を任せられる職人を探さなければ話が進まない。


 だが、目ぼしい場所には一通り声をかけ終わった後だ。これ以上訪ねていない場所となると………


 頭を悩ませているカイだったが、ここで別行動で鍛冶屋を探してくれていたリンカが戻ってきた。


「カイー! なんか空いてそうなところ見つかったよー!」


 駆けよってきながら伝えられた言葉は、今最も欲しいものだった。


「本当か? よく見つかったな…」


 ここまでずっと断られ続けてきたので、急に見つけられたと言われても思わず身構えてしまう。


 そんな反応が情けなくなるが、経緯を考えれば仕方がないだろう。


 リンカの方はそんな返答をさして気にする様子もなく、見つけたという鍛冶屋の情報を話してくれた。


「私も最初はお店だって気づかなかったんだけどね。なんか張り紙をしてる家があるなーと思って近寄ってみたら『営業中』って書かれてたんだ!」


 そう言うリンカは満面の笑みだが、カイの胸中には不安が広がる。


 そもそも、外観で店だと分からない場所に武器を任せられるのか。預けられたとしても、その技術力はここでは判断ができない。


 だが他に選択肢は残ってないのだ。いくら迷いがあろうとも、とにかく行ってみなければ何もわからない。


 なので、ここはリンカを信じてついていくことにする。幸いそう離れた場所ではないらしくすぐにその様相を拝むことができた。





「…なるほどな。確かに店には見えない」

「そうでしょ? でもここにちゃんと張り紙があるんだよねー」


 パッと目に入ってきたのは、それなりの大きさがある木造の一軒家。特に看板や玄関先に目印があるわけではなく、本当にリンカの言う通り張り紙しかないので、勘違いするのも無理はない。


「何でこんなにわかりづらいんだろうな…何か理由でもあるのか?」

「それは私たちだけじゃ何とも言えないけど…ほら、入ってみようよ! せっかくなんだからさ!」


「ちょっ! 押すなって!」


 リンカに背中を押され、店と思われる建物の扉をくぐる。




 くぐった先には、外観からは想像できないほどに店として整備された空間が広がっていた。


「あら、お客さんなんて珍しいね。いらっしゃい!」


 出迎えたのは少し褐色がかった肌色をした女性。どこか気の強さを感じさせる雰囲気であり、男勝りという言葉が似合うようだ。


「これまた…すごい場所だな」

「はぇー……こんなに立派だったんだねぇ…」


 一通り壁に立てかけられた剣や槍、並べられている杖や短剣を眺めてみても、その出来栄えが相当なものだということが伝わってくる。


 あの見た目の店からこれだけのクオリティが飛び出してくるとは思っていなかったため、その分驚きも一塩といったところだ。


「なーんか随分と驚いてるみたいだけど……何をお探しかしら?」


 二人して陳列されている武具類を見まわしていると、カウンターにいた女性が話しかけてきた。


「あ、あぁ悪い。無視するつもりはなかったんだけど…」

「いいっていいって。うちの武器に見惚れてるのはしっかり伝わってきたからね。悪い気はしないよ」


 わざとではなかったとはいえ、一度声かけを無視してしまったというのに随分と寛容な心をお持ちの様だ。


「実は、俺たちの武器のメンテナンスを頼みたかったんだけど…できるか?」

「問題ないよ。うちも整備は請け負っているからね」


 問題なく話が進みそうでほっとした。これで断られたら後がなかったので、非常に助かる。


「頼みたいのは俺の大剣と……仲間の杖だな」

「あ! お、お願いします!」


 唐突に話題を振られて焦った様子のリンカだったが、その姿が面白かったのか盛大に吹き出された。


「あっはっはっは! 可愛い子じゃない! こんな子どこで引っかけてきたのかなぁ?」


 からかうようにこちらに視線を向けられるが、両手を挙げて降参の意を示しておく。


「引っかけてきてなんてないよ…うちの仲間をあんまりからかうのはやめてやってくれ」


 別に相手も本気で言っているわけではない。場の雰囲気を和ませようとしてくれているのは分かるが、リンカが展開についてこれず目を白黒させているので、そろそろ勘弁してほしい。


「ここの武器って、全部あんたが作ってるのか?だとしたら相当なもんだが…」

「いいや? 作ってるのはあたしの夫だよ。普段は奥の工房で作業してるけど、そろそろ出てくると思うから待っておくかい?」


 どうやらこの女性は接客を担当しているようで、鍛冶に直接関わっているわけではないらしい。


 それでも話術は上手いことは実感したし、夫婦で経営しているということなので、これ以上ないくらいに相性はいいのではないだろうか。


 唯一残っている疑問は、なぜこれだけの店がありながら他にお客がいないのかという点だが……


 その辺りはあとで聞けばいいと思い、店で待たせてもらうことにしたのだった。



酷使してきた武具の整備。


辿り着いた先は、豪快な女性のいる鍛冶屋でした。


ちらほらとツッコミどころもありそうですが、そこは後回しということで。




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