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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点

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第十五話 いざキノコ狩りへ


「やばいっ…息が苦しい……」

「いやだっ、死なないでよ! カイ!」


 なぜか悲哀の別れを迎えようとしているカップルのようなワンシーンを繰り広げるカイとリンカ。


「…………無念……」


 その後ろでは深く帽子を被った少女が悔し気に顔をゆがめている。


「俺はもうだめだ……。悪い、リンカ…」

「そんなこと言わないでっ! 絶対に助けて見せるから!」


 このようなカオスな状況にどうしてなったのか。事の発端は数時間前まで遡る。










「カイ、キノコ狩りに行こう!!」


 待ち合わせ場所にて待機していたリンカを見かけ、合流したカイを出迎えたのはリンカの楽しさに満ち溢れた笑顔とよくわからない誘いだった。


「えーと…。よくわかってないんだけどそれはキノコ型のモンスターを狩りに行くってことか?」

「違うよ! 普通のキノコ狩りだよ!」


 リンカの言うことだから、自分の想像しているものではないだろうと考えて聞いてみたのだが……どうやら違ったようだ。


「リンカが普通のキノコ狩りに行きたがるとはな。なんかちょっと意外だったかも」

「…一回カイの中の私に関するイメージについて聞きだす必要が出てきたけど……まぁ今はいいや」


 墓穴を掘ってしまったようで不吉な言葉が聞こえてきた気がしたが、今回は見逃してもらえたようだ。それでも後に地獄を見ることに変わりはない。


「ここから少し離れた場所に小さな村があるみたいでね、その近くでキノコが採集できるんだよ。普通に食べられるキノコももちろんあるんだけど、他にも変わった種類のものもあるんだって!」


 前言撤回。やはり普通のキノコ狩りではなかった。


「面白い効果って……例えばどんなものがあるんだ?」

「えーとね、食べると筋力が増すキノコとか全身がかゆくなるキノコとか、あと体からモンスターが好きな匂いを漂わせるようになるものもあるんだって!」


 そんな純粋な笑みで言わないでほしい。最初はまだいい。ただ後半部分に怪しさしか感じられないのだが俺がおかしいのか?


「……不安だ」


 行くことはいいが、そこで何かが起こる予感しかしない。


「それじゃ、キノコ狩りへレッツゴー!」


 激しいテンションの差を感じながら二人は出発した。










 村の名前は「アイレン」というらしく、キノコで有名なのかと思っていたがどちらかというと鍛冶で有名だそうだ。


「鍛冶で有名ならそっちも少し覗いてみるか。いい機会だし整備も頼んでみよう」

「最近激しい戦い続きだったもんね。耐久も大分減ってるだろうしちゃんと休ませてあげないと」


 アイレンへ向かうためには、途中に存在する森を抜けなければならない。道はあることにはあるが整備が行き届いているとは言えず、微妙に歩きづらい。


「こういうところだとモンスターとか盗賊とか出てきそうだよね。奇襲とかされたら反応が遅れるし、来ないでほしいよ」

「フラグを立てるのはやめてくれよ。そんなこと言ってるとほんとに遭遇する……」


 そこまで口にしたところで、不意に背後の草むらから何かが揺れる音がした。


「……いるな」

「うん、この気配は………人間!」


 《探査》によってつかんだ気配から相手の正体を把握した瞬間、草むらの向こうにいた存在が姿を現した。


「《探査》か……。奇襲しようと思ったんだが、失敗しちまったな」


 現れたのは片目に傷がついた男。武器は持っていないがその肉体の様相から実力者であることが伝わってくる。


 そしてそれに追従するように、男の部下と思われる者達も出てきた。


「気づかれたところで問題はないけどな。ここでお前たちの装備やらアイテムを奪って倒しちまえば結果は変わらねえ」


 男たちの目的はアイテムの強奪。リンカの言っていた盗賊との遭遇になってしまったが今それを嘆いても仕方ない。


「一応聞いておきたいんだけど、お前たちは『プレイヤー』か?」

「あぁそうだ。『プレイヤー』のみで構成された盗賊ギルド、〈牙城の破玩〉とは俺たちのことよ!」


 ニタニタと笑いながら正体を明かしてくる。その名に聞き覚えはなかったが、やたら自慢げなことを思えばそれなりに有名なのかもしれない。


「できれば何もせずに通してくれると嬉しいんだけど……」

「そうしたいのは山々だがな。そういうわけにもいかねぇんだわ」


 男たちは少しずつ距離を詰めてきており、囲まれる形になっていく。


 一度街まで逃げて落ち着くまで待機するかという選択肢も浮かんできたが、難しい。各個の実力差は分からないが、人数差は歴然。どこかに身を隠してやり過ごそうにもすぐに見つけられるだろう。


「盗賊なら盗賊らしく、商人でも狙うものかと思ってたよ」

「商人を襲撃することももちろんあるが、別にそれだけってわけじゃない。俺たちにとって旨みがあるならそれでいいのさ」


 何とか突破口を見出そうと会話を重ねるが、見つけられないまま時間は過ぎる。


(後方に逃げる…無理か。いつの間にか押さえられてる。なら正面突破は……)


 思考に集中していると、その態度を怪しまれたのか相手が行動を開始した。


「質問は終わりか?ならそろそろ始めるか……お前ら! 強奪するぞ!!」

「っ!」


 こうして突発的な盗賊集団との衝突が始まった。



ちょっとした小旅行に期待を膨らませる二人。かと思えば盗賊との遭遇。


どんなゲームにもこういうやつらはいるもんです。一種のロールプレイとして楽しんでいる感じもありますけどね。




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