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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点

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第九話 渓谷の谷底


「へぇー…。そんなことがあったんだ…」


 翌日、リンカと合流したカイは昨日起こった出来事を話していた。


「結局依頼を完全に達成することはできなかったんだけど、それでも後悔なんかは一切無いんだよな」

「カイの中で納得できてるならいいんじゃない? …それにしてもそんなことがあったなら私もログインしてればよかったな―」

「いやいや、リアルの方で用事あったんだろ? それならそっちを優先してくれていいって。何も無理に来てほしかったわけでもないからさ」


 リンカにそう言って言い聞かせるが、どこか惜しいと思う部分があるようでなかなか聞き入れてくれない。


「それに、参加するっていっても昨日は墓場を歩き回ってたしな。結構雰囲気も薄暗いところだったし、耐えられなかったと思うけど…」

「……まあそれは置いておいて」


 とてもスムーズに話の話題を切り替えた。怖いものに関する話題はやはり避けたいらしい。


「今日はどこか行くところあったんでしょ? 早く行こうよ!」

「行きたい場所というか見ておきたい場所だけどな。それじゃ行くか」


 今回の目的地へと向かう二人。今聞いた墓地の話を思い出してしまったのか、リンカは少し足を震わせながらついてきていた。








 やってきたのは街の南西にあるダンジョン「堕哭の渓谷」。今日ここに来たのは、高レベルの狩場を知っておきたかったからだ。


 もちろん無謀な挑戦を仕掛けるわけではない。外から眺めてその空気感を見ておこうというだけだ。


「それにしても深いねー……。落ちたらひとたまりもないよ」

「そんな覗き込むなよ。さすがに今の俺たちじゃ攻略なんて無理だ」


 底を見ればかろうじて地面は確認できるが、相当な高さがある。正面ルートの階段からでなければ落下死間違いなしだ。


 リンカが危機感など無さそうに近寄っていくが、いつ落ちるのかと気が気ではない。


「やっぱり高レベル帯のエリアは空気が違うね。なんか澱んでるというか、揺らいでるっていうか……」


 実際にその光景を見れたことがいい刺激になったのか、来る前よりも気合の入った表情で立ち上がる。


「いつかここにも挑んでみたいね。やっぱり緊張感のある戦いもいいものだよ」

「そこであんまりはしゃぐなよ。岩肌が露出してるだけで舗装されてないし、いつ崩れてもおかしくない」

「大丈夫だよー。そうそう崩れることなんてないし………ってきゃあ!!」


 油断していたリンカの足元が突然崩れ、体勢をふらつかせてしまう。


「リンカ!!」


 カイも慌てて手をつかみ、引き寄せようとするが一瞬遅く手繰り寄せることができなかった。


 谷底に落ちていくリンカの姿に、判断を迫られるが即座に決断するとカイも渓谷へと身を乗り出していった。





「リンカ……掴まれ!!」

「う、うん!」


 いまだに落下中の身だが、相棒を救うために決死の思いでお互いの手を取り、迫る谷底から逃れるために剣を構える。


「くそっ! 止まれ!!」


 大剣を岩壁に突き刺し、落下速度を落とそうとするが既に相当な速度が出てしまっているため簡単に減速はしてくれない。


(どうする。あと少しで地面に叩きつけられる!それまでに二人とも助かる方法は……!)


 そうしてあと少しで落下の終着点が見えようかという時、視界の端に川のようなものが見えた。


「……っ、あれだ! あそこまで飛び込むしかない…! リンカ、息止めててくれ!」


 リンカが肺に空気をため込んだことを確認すると、刺していた大剣を抜き落下の速度すべてを跳躍に変える勢いの踏み込みで岩壁を蹴り飛ばす。


 そのまま二人は近くに流れていた川の中に飛び込むのだった。







「げほっ! げほっ! ……何とかなったか」

「けほっ、……ごめんね。私の不注意のせいで」


 責任を感じて謝ってくるリンカだったが、それはもう終わった話なのだ。いつまでも引きずっていても仕方がない。


「しょうがないよ。俺ももっと注意しておけばよかったんだ。……それよりも現状について考えよう」


 カイ達のいる場所は「堕哭の渓谷」の中心当たりといったところか。だがここは高レベルのモンスターが跋扈する地であり、すぐに地上に戻らなければ危ない。


「ここからだと『エリアボス』のいる場所も割と近いけど、そんなところに行ったら瞬殺されるのが目に見えてるし入り口の階段を目指して戻ろうか」

「そうだな。安全策をとるならそうするべきだ」


 脱出のための案を練り、この場から生きて戻るために行動を開始する。


 渓谷中央から入り口までの距離は、普通に歩いて進めば10分ほどでたどり着ける場所だ。…普通に進むことができれば。


 しかしここは普通ではない「堕哭の渓谷」だ。そこらにモンスターが蔓延っており、その一体一体が明らかな強敵だ。


「早く帰還したいけど、敵に遭遇したらまず勝ち目はない。時間はかかるけど慎重に進んでいくとしよう」


 その言葉にリンカも頷く。敵に一度も遭遇せずに乗り切るのは至難の業だろうが、やるしかない。


 こうして、二人は渓谷からの脱出を開始した。



渓谷に落下した二人。ある意味フラグ通り。


ちなみに水場に落ちたからといって落下ダメージが完全に消えるわけではないです。軽減されているだけでちゃんと食らっています。




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