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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点
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第五話 落とされた鍵


 その後も遺跡を進んでいき、おそらく最奥だろうと思われる地点までたどり着くことができた。


「…なにもないな」

「…なにもないね」


 その空間はこれまで見かけた部屋の中でも最も広い場であり、数本の柱が立っている。だがそれ以外には何も置いておらず、ただただ広いだけというありさまだった。


「結構期待してたけど、まあこれまでにも人は来てたんだろうしな。何か置いてあっても持ち帰られてるよな」


 待ち望んでいたものがなく落胆してここまでの道を戻ろうとしたが、壁に向かって近づいていくリンカを見て足を止める。


「何してるんだ?」

「いや、こういう場所なら隠し扉とか仕掛けとかがないかなーって思って。何かあったら面白いじゃん?」


 そう言うと近くの壁を触りだす。調査も進んでいる場所だし特に見つかる物があるわけではないだろうが挑戦してみるのは自由だ。


 柱に腰掛けながら集中しているリンカを眺めながら時間を潰す。




 少しの時間が経ち、さすがに諦めたのか壁にもたれかかっている。


「結局なかったね。これだけの規模がある遺跡なんだからご褒美があってもいいのにな―…、ってうわぁ!?」


 全身の力を抜いて壁に体重を預けていたリンカだったが、そこに設置されていた仕掛けであったスイッチが押し込まれ隠し扉に吸い込まれていった。


「……まじかよ」


 まさか本当に仕掛けがあるとは思っていなかったため、呆然としていたがふと我に返り呼びかける。


「おーい、大丈夫かー!?」


 壁の向こうに声をかけると「大丈夫―!」と返ってきた。どうやら命の危険があるわけではないようだ。


「カイも来れないー? 何か落ちてるんだけど…」

「やってみる! …えっと、確かこの辺りだったよな」


 さっきまでリンカのいた場所の壁を探っていると、当たりが引けたようでガコンッ、という音と共に仕掛けが作動する。


「こんなところにも部屋があったとはな。リンカー、どこだー?」


 そこは先ほどまでいた空間とは違い、人の手が加えられた形跡がまるでなかった。いたるところが朽ちており、明かりも確保されておらず全容がまるでわからない。


 つまずくことのないように慎重に歩いていくと、台座のようなものが見えてきた。その台座の前にリンカもおり、しゃがみこんで何かを見つめている。


「あっ、無事に来れたんだね。もし扉が開かなかったらどうしようかと思ったよ」

「壁の一部がスイッチになってたみたいだな。押し込める場所があったから押してみたら来れたよ」


 人数制限があったらどうしようもなかったがそうではないようで安心した。


「ところで座り込んでるけどどうしたんだ。そこの台座にあったのか?」

「ううん。台座には何もなかったんだけど、近くにこれが落ちてて…」


 リンカの手に握られていたのは少し錆びれている鍵だった。特におかしい点は見られないが、相変わらず不思議そうに鍵を見つめている。


「そもそも鍵だけがここにあるけど、鍵を差し込む場所も物もないのにこんなところに落ちてるっていうのもおかしいし…何よりこれが()()()()()()()()()()()()だよ」

「わからない?それってどういう……」


 リンカの言わんとしていることが理解できず、鍵に向かって《鑑定》を使用してみると予想外の結果が目に入ってきた。


《─解の─》

《──の─》────て──。────に───むこ───────────放────が────


 そこで見えたのはほとんどが文字化けした羅列であり、まともな内容を見ることができなかった。


「なんだこりゃ…。今までこんなことなかったよな?」

「うん…。多分この鍵自体に《鑑定》の効果を妨害する機能があるんだと思うけど、それが分かってもどうしようもないんだよね…。どうしようか、この鍵」


 どんな影響があるかわからないアイテム。周囲に害をもたらす効果があるかもしれないことを考えればこの場に置いていくのが正しいと思うが……


「せっかくだし、持っていこうぜ」

「いいの? どんな性能かもわからないのに」


「確かに怪しさもあるけど、そこまで悪いものとも思えないんだよ。それにここまで来てなんの収穫もないって言うのも寂しいしな」

「絶対後半が本音だよね?」


 若干ジト目で見つめてくるリンカの視線に気づかないふりをしながら鍵を自身のストレージにしまう。


「どうなっても知らないよ?」

「大丈夫だって。それに案外こいつが助けてくれることがあるかもしれない」



 そんなことを話しながら来た道を戻っていく。そして外へ出るために扉を開けようとした時、違和感を覚えた。


「…あれ? ここに扉があったと思ったんだが…間違えたか?」

「仕掛けの場所忘れちゃったの? しょうがないな~、確かここに…ん?」


 最初に開いた扉の位置を確認するが、どうやっても開かない。少しずつ嫌な予感がしてきた二人の間に沈黙が訪れ、こんなことを口にした。


「…ねぇ、もしかしてだけど…来た扉と帰る扉で仕掛けが変わってるなんてこと……あるかな?」

「…………」


 そこから二人が遺跡を出れたのは数十分が経過してからだった。



こういう遺跡って大体、入る時だけ謎があって帰るときは普通に出れるものが多いですよね。

ただそれって防衛設備的にどうなん?ってずっと思ってたのでカイ達には閉じ込められてもらいました。


拾った鍵に関してはしばらく出番はないです。ただ説明文にもちゃんと意味は持たせてますんで、適当とかではありませんのでご安心を。




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