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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点

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第三話 『大樹の守護』



 かつてのその地は暴風が吹き荒れ、荒れ狂い、まともに人の住める環境ではなかった。


 そこに村を作り上げ、暮らしていた者達は苦しんでいた。もはやこの場所に希望はないと。どうすることもできないと。



 そんな時、村に一匹の竜が訪れた。竜は言った。


「あの大樹の上に住まわせてくれるならば、この暴風を止ませて見せよう」


 村の中心にはどれだけ風が吹こうとも決して折れずに立っていた大樹があり、それは村のシンボルといってもよかったが、所詮は木だ。なぜそんな場所を選ぶのかと問うと竜は答えた。


「戦いに疲れてしまったのだ。今は落ち着ける場所があれば十分だ」


 その言葉には感じ取れないほどの苦労があったことを思わせる重みがあった。


 納得した村人は竜が住まうことを快諾し、その翌日から村を襲い続けた暴風は鳴りを潜めた。


 風が吹き荒れることのなくなった村は、竜に救ってもらったという経緯と決して折れなかった大樹があることから一躍有名な場所となり、多くの人が訪れた。


 わずかな時で村は街へ、街は国へと形を変え大樹と共に時を過ごしてきた。



 そんなかつての村の名前は「エンリーフ」と呼ばれていた。








 エンリーフが巨大な国となってから、他国からその大樹を一目見ようとする者達が訪れるようになった。そんな者達を受け入れることで更に国は発展していき、全てが順調だった。



 しかし、そんな賑わいを面白いと思わない者達もいた。彼らはあの大樹がなくなればすべては元に戻ると思い、大樹に呪いをかけ始めた。


 呪いをかけられた大樹は少しずつ、だが着実に弱っていき、枯れ果ててしまうかと思われた。


 そんな中で、一人の勇敢な若者が呪いをかけていた者達を撃退し大樹を復活させたのだ。


 彼は国民、国王果ては竜にも感謝された。若者は竜から報酬にと宝玉を下賜され、それで武器を作った。


 そして若者は自らが亡くなる直前に武器を手放し、それは今でもこの国のどこかに眠っているという。









「…これが『大樹の守護』伝説の全てになります」

「…なんだかすごい話が聞けたな」

「うん。私も思わず聞き入っちゃったよ」


 この国の史実と言われている『大樹の守護』伝説を聞いていた二人は、その壮大さに引き込まれていた。


「竜の名は緑翠竜「ファルム・ザーライク」です。今もあの大樹の上でこの国を見ていると言われています」


 目の前にある見上げることさえ難しい大樹を見つめて、思わずため息がこぼれる。


「この大樹にも、そんな歴史があったんだな。その話を聞いてからは見えてくる光景もまた変わってくる気がするよ」


 感慨にふけっているとこれで伝えられることはなくなったようで、フ―フェルトは立ち上がる。


「それでは、私はそろそろ行かせてもらいますね。お二人の旅路が良きものとなることを願っておりますよ」

「あ、少し待ってくれ。え、と…ほい。こんな話聞かせてもらって何も渡さないなんて野暮だしな」


 フ―フェルトの手に話を聞いたお礼だと言って硬貨を握らせる。


「これはこれは…ありがとうございます。あなた方との縁を結べたことを喜ばしく思いますよ」


 そんな言葉を残して彼は去っていった。気のせいかその後ろ姿は先よりも希望を抱えたようにも見える。



「それじゃ、いい話も聞けたところでやりたいことも増えちまったな」


「さっき話を聞いてて思ったんだけど、この国にかつての若者の武器が眠ってるって言ってたよな? せっかくだし観光ついでにそれを探してみないか?」

「おおー! いいね! 私もそれは気になってたし探してみたい!」

「そんな簡単に見つかるもんでもないと思うからあくまでついでにだけどな。けどせっかく国を回るんだし、そのくらいの楽しみが増えてもいいよな!」


 大樹の目の前から歩き出した二人は次なる神秘を求めてその歩みを早めていった。




 二人が訪れたのは「フライルの花畑」だ。リンカが真っ先に行きたいと言っていたので来てみたがその美しさは確かなものだと納得させられた。


 多種多様な花が咲いている空間であり、それも乱雑になっておらず色の配置や間隔も考えられているのだろう。そこまで花には興味がないカイでさえ見惚れてしまった。


「ほんと綺麗だね…。ここから帰るのがもったいなく思えてきちゃう…」

「そうだな、ならその分を今のうちに満喫しておいた方がいい」


 その後も花園を堪能し、楽しいひと時を過ごしていく。途中、植物鑑賞コーナーにてカイが食虫植物に襲われかけるというアクシデントはあったが概ね予定通りだった。


 一通り見て回り、今は土産物を売っている店を物色しているが、この場所の客層もあるのか店内にいるのは女性客ばかりで少し居心地の悪さを感じていた。


(やっぱ外で待ってればよかったな。リンカの買い物が終わるまでもう少しかかるし先に出てるか……、ってこれは…)


 カイの目に留まったのはピンク色の薔薇を模した装飾が施されているネックレス。現実のものでいえばエルタミージュに近いものだった。


(これってリンカが一番眺めてた花だったよな。せっかくだし買ってくか? いや、男から花のアクセサリーを送られてもうれしくないだろう…。いやでも…)


 少しばかり迷ったが結局購入し、リンカが出てくるのを待った。そこまで時間もかからずに終わったようですぐに出てきた。


「ごめんねー。待っちゃった?」

「いいよ、俺の方も見てたしな。そんなに待ってない」

「じゃあ帰ろっか。もう終わりだと思うと寂しいけどね…」


 リンカが儚げにつぶやいた言葉を聞いて、カイが話を切り出す。


「なぁ、リンカ。今日の思い出なんて言ったら重いかもしれないけど、これあげるよ」


 手渡したのは先ほど購入したネックレス。この突然のプレゼントは予想していなかったようでリンカも困惑している。


「えっ…こ、これどうしたの?急にプレゼントなんて…」

「いや、もう終わるのが寂しいって言ってたからさ。そのネックレスがあれば今日見たものを思い出せるかななんて思って買ってみたんだけど…やっぱ嫌だったか?」


「そんなことないよ! すごくうれしい。…けどこの花が好きだなんて言ってなかったよね? なんでわかったの?」


 どうやらカイが自分の気に入った花をわかっていたのが不思議だったらしく、そんなことを聞いてくる。


「なんでってそりゃ…相棒のことなんていつも見てるんだからわかるよ、そのくらいな」

「…そっか。ありがとね、カイ! さすがに戦いにはつけられないけど…大切にするよ!」


 カイのプレゼントを受け取りながら笑顔で答えるリンカ。その笑顔を見れただけでもここに来たかいがあったと感じた。



「フライルの花畑」はその美しさからカップルのデートスポットとして人気があります。言っておきますけど、カイとリンカは付き合ってませんからね?


恋愛に見せかけた親愛っていいよね!



『大樹の守護』伝説に関しては自分の中でもともと完成していたストーリーがあったんですが、書いていくうちに初期のプロットからかなり離れたものになっていました。最終的に満足いくものになったんでいいんですけどね。




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