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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第二章 自然の通過点
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第一話 自然の豊かさへ


「あー、早くエンリーフに着かないかなー…。馬車の旅もいいけどちょっと飽きてきちゃった……」

「仕方ないって。他国への移動ともなればそれなりに時間はかかるもんだ」


 数日前、先ほどまで滞在していた国「サイラス」で『エリアボス』による襲撃が起こり、街は大きな被害を受けてしまった。


 幸い復興は済んだが、原因と見られる「翡翠嵐の花園」は調査のため封鎖された。残りの「聖火の湖畔」に挑もうかとも思ったが、適正レベルが高すぎたため断念。


 俺が受けてしまった呪いの件もあり、いい機会だということで別の国に行こうということになったのだが……。いざ目的地を決めようとすると難航してしまった。


 サイラスの近くだと高温地帯の「ラングル」や商業都市の「シムレット」なんかも候補に挙がっていたが、リンカの「せっかくだし綺麗なところに行きたい」という一言で「エンリーフ」に決定した。


「エンリーフ」は自然と共に育ってきた国であり、その光景は素晴らしいの一言だという。そんな経緯から目的地も定まり意気揚々と馬車で移動を開始したのだが……。


 出発した当初は張り切っていたリンカも、さすがに長時間変わらない光景の馬車に乗っていれば疲弊してしまったようだ。


「はははっ! やっぱリンカも退屈には勝てないか!」

「もう…ほら、大丈夫? 暇なら何か話して時間を潰しましょう?」



 そんなリンカを見かねて声をかけてくれる男女の二人。


 こいつらは俺たちがエンリーフに向かう馬車に乗るときに同乗していた。男の方は「アルバン」。緑の神色をしており、腰には二本の剣をぶら下げている。職業は第二段階の〈双剣士〉。

 女の方は「サージェス」。赤色を基調としたドレスのような服を身に纏っており、戦闘職というよりはどこかの踊り子のようにも見える。職業は第三段階の〈炎舞者〉だ。


 お互いに男女二人でパーティを組んでいたこともありすっかり意気投合し、こうして馬車の中で暇をつぶし合っている。


「まぁリンカほどじゃないけど俺も退屈しちまったなぁ…。なあサージェス、なんか面白いことないか?」

「いや、あたしに無茶ぶりしないでよ。こっちもやることないんだから…」



 馬車はもう少しでエンリーフに到着するようだが、その時間も長いものに感じられる。何か退屈を紛らわしてくれることが起きないだろうか…。そんなことを考えていると、馬車を引いていた御者が慌てた声で語りかけてきた。


「お、おいっ! あんたたちは逃げてくれ! モンスターがこっちに向かってきてる!!」


 唐突に訪れたモンスターの襲撃に一瞬慌てそうになるも、すぐに戦闘の態勢を整える。


「こんな形で暇つぶしをしたかったわけじゃなかったんだが…まぁいいか。リンカ、いけるか?」

「うん、ばっちり!」


 カイとリンカがモンスターを追い払うために馬車を出ようとした時、後ろにいた二人から声がかけられた。



「おいおい、二人だけでやろうなんて水臭いって。俺たちにも戦う機会をちゃんとくれよ!」

「サージェスじゃないけど、あたしたちだって戦えるんだからちゃんと頼ってよね」


 カイとリンカに並ぶように追ってきたアルバンとサージェスは、己の武器である双剣と扇を携えながら共闘を申し出てくる。


 そんな二人に共に戦ってくれる嬉しさを感じながら、敵を見据える。


「そんじゃ、いっちょやるか!」

「「「おう!」」」






 まず行動を開始したのはサージェスだ。彼女の職業である〈炎舞者〉は炎属性魔法の行使と味方へのバフを可能とするものだ。


「《蒼炎の鼓舞》」


 スキルが発動されると俺たちのステータスが向上したようで、いつもよりも体が軽いような気がした。


 襲い掛かってくる2匹のイノシシのようなモンスター、「ランドリボア」の突撃をかわし、リンカに視線で合図を送る。


「《氷縛(アイスバインド)》!」


 攻撃が不発に終わった隙を狙ったリンカの魔法がランドリボアを足止めし、そのタイミングで大剣の一撃を叩き込む。


「はぁっ!」

「ブモォッ!?」


 攻撃を受けると大きくのけぞり、そこからさらに何回か攻撃を繰り返していけば体力は尽きていった。


「そこまで強くなかったのかもな。…っと、向こうはどうなったか…」


 一通り戦い終えたカイがもう一体のランドリボアと戦っていたアルバン達の方へと視線を向けると、その戦闘は終わろうとしていた。


「ふっ!《双凱斬》!」

「《炎尖》!」



 アルバンが敵の注意を引き付け、その隙間を練ってサージェスがバフを掛けながら魔法も並行して発動させる。


 やっていることはカイ達とほとんど同じだが、アルバン達は戦いにおいて手数を重視する動きをしていた。一撃の重みを第一に考えて戦ってきたカイにとっては、とても参考になる。


 そんなことを考えている間に倒し終わったようで、こちらに話しかけてくる。


「いやー、そんな強くはなかったけどいきなり襲い掛かってくるとは思ってなかったな。リンカの《探査》にも引っ掛からなかったのか?」

「うん。《探査》はそこまで有効範囲も届かないしね。あくまで保険だ」


 《探査》とは汎用スキルの一つだ。様々な経験を得て気が付けばSPも溜まってきたので獲得した。ちなみにカイも汎用スキルは取得しており《体術》を選択している。


《体術》

武器を持たない攻撃に対して補正


《探査》

半径20メートル以内の範囲内の気配を知覚できる



 そこまで強力な効果ではないが、持っていて損はない。これで自分たちの安全性もより高まっただろう。



「それと、さっきのバフはサージェスだよな? 俺たちにもかけてくれて助かったよ。効果も想像以上だったしやっぱすごいな」

「別に大した手間でもないしいいわよ。効果もこのあたしがかけてるんだから間違いないわ!」


 そういって胸を張るサージェス。意外にもスタイルがいいサージェスがそんな仕草をすれば、その豊かな胸元が強調される。


 なんとなく気まずくなり視線をずらしたカイが見つめた先にいたのはリンカ。彼女もないわけではないがどちらかというとスレンダーな体型であり、そこまでは……と考えたあたりで猛烈な寒気が襲ってきた。


「カイ―? 何を考えたのかなー?」


 魔法など使われていないはずなのに、感じたことのない寒気と圧力が襲ってくる。


「…いえ、何でもありません」

「全く失礼なカイなんだから!」


 何とか許してもらえたようで先ほどまであった圧力は消えた。だがカイの中には、無闇に体型に触れてはいけないという教訓が刻まれていた。


「……立派に尻に敷かれてるな」


 そんなアルバンのつぶやきに突っ込む者もなく、モンスターを追い払った一行は再びエンリーフへと歩みを進めていった。




 そうしてまた少し時間が経ったとき、四人はエンリーフへと辿り着いた。



アルバンとサージェスは同じ学校に通っている同級生同士でパーティを組んでいます。カイに向かって「尻に敷かれてる」なんて言っていたアルバンですが、彼も大概敷かれてます。


そしてサージェスの職業〈炎舞者〉ですが、これの入手方法はいくつか存在します。彼女のやり方としてはもともと〈魔法使い《炎》〉を取っていましたが、汎用スキルで《舞踊》を獲得してから〈炎舞者〉へと進化しました。


こんな風に入手したスキルによって職業が左右されるケースも存在します。まぁやり方次第です。




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