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Record of Divergence ~世界の分岐点~  作者: 進道 拓真
第一章 分岐の始まり
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Side Story 彼女の思い


 ──私にとって、彼との出会いは偶然のものでしかなかった。


 ──それでも、彼との誓いは偶然なんかではなかった。




 最初、「浅慮の森林」で彼と出会ったときは、まさかこの人とパーティを組むことになるなんて夢にも思っていなかった。


 狩場の中でモンスターの上位種と遭遇してしまった私は、攻め切ることができず追い詰められていた。魔力も徐々に尽きてゆき、打つ手がなくなろうとしていたその時、彼は来てくれたのだ。


「おーい! そこの人! 助太刀したほうがいいかー!?」

「おっ、お願いします!」


 …こっちは結構ピンチだったのに、今思えば緊張感なかったよなー。


 まぁそれは置いておいて、そこで出会った彼と何とかモンスターを倒して戦いに勝つことができた。


 そこからお互いに軽い自己紹介をしあって、気づけば私はカイにパーティを組まないかと提案していた。普段の私ならばいくら助けてくれた人とはいえ、無暗にパーティに誘ったりしない。


 ただカイからは他とは違う何かを感じ取ったのか、相棒となれることを直感的に悟っていたのか嫌ではなかった。


 カイも結構悩んでいたみたいだけど、最終的に私たちはとりあえずお試しということでパーティを組んだ。


 そこからの日々もそれなりに楽しいものだった。一緒にレベル上げに行ったり、たまに悪戯を仕掛けてみたり…。カイって私の悪戯に呆れることはあるけど本気で怒ることはないんだよね。そこに甘えちゃう私も私だけど。


 そんな日々を過ごしてるうちに、あの日がやってきた。私たちにとって敗北の日であり、決意と誓いの日が。


 その日も変わらずにレベル上げをしていたら空に謎の裂け目ができていて、そこから現れたのがあの鬼の姿をした『ボスモンスター』。その圧倒的な圧力を感じ動けなくなった私に対してそいつは容赦なく攻撃を振るい、───私は死んだ。


 その後すぐにカイもやられてしまったみたいで、街のリスポーン地点に戻ってきていた。すぐに再会はできたけど私はカイの顔が見れなかった。自分から誘っておきながらこんな不甲斐ない仲間なんていらないに決まっている。そう言った私にカイは温かい言葉をかけてくれたんだ。


「あいつに負けたのはリンカが弱かったからじゃない。俺たちが二人で戦えていなかったからだ」

「俺は弱い。どれだけ一人で戦ったとしても、あいつに勝てるイメージはまるで湧いてこない。けどさ、リンカと二人でなら勝てる気がするんだ」

「だからリンカ。もう一度俺と、今度はお試しなんかじゃなくて、本当の意味でパーティを組んでくれないか?」


 その言葉の一つ一つにどれだけ救われただろう。無力でしかなかった私に、居場所を与えてくれたカイに、満面の笑みで言葉を返していた。


 あの日の出来事は今でも鮮明に思い返せる。圧倒的な敗北を味わい、そして再起の誓いをした私たちは本当の意味で『相棒』となった。




 そこからも職業が進化したり、ダンジョンに挑んだりと大忙しだったけどやっぱりあの襲撃事件は大きく印象に残っている。


 突如として街を襲ったモンスター。最初はあっけにとられていたけど、すぐに近くにいた人から事情を聞きだし救援の手助けに向かった。



 そして教会で子供とはぐれてしまった母親を見た時、その瞬間に私はその母親から話を聞きだし「絶対に連れてくる」と約束していた。


 衝動的に口に出していたのでなんで助けようと思ったのかはわからないけど、やっぱりあの悲痛な叫びは見ていられなかった。


 そして教会の外を捜索し、ガイル君を無事に見つけた私たちは帰路を辿っていた。その途中でカイが何かを見かけたらしく、ガイル君を預けられて先に行ってくれと頼まれた。大丈夫だろうと思ったのでそのまま向かってしまったが、胸の中には言いようのない不安が広がっていた。


 無事にお母さんの元へと送り届けてからすぐに私はカイと別れた場所へと戻った。そうして目にした光景は、数多のモンスターに囲まれているカイだった。


「カイっ!! 大丈夫!?」


 魔法で援護しながら呼びかけると、疲弊しているようだが危機的状況というわけではなさそうだったのでひとまず安心した。


 そこからは連携を駆使して元凶だと思われるアンデッドを倒した。───倒したと思っていた。


 さすがに体力を使い果たして倒れこんだカイに向かってあいつは呪いをかけていった。今思ってもこの時の対処は悔やんでいる。


 私がもっと警戒していれば、もっと早く魔法で撃退していれば…。はじめはそんな風に責任に取りつかれていた。


 けれどカイが気にしなくてもいいと言ってくれて、私も気づくことができた。私たちは二人で強くなるんだ。一人で背負い込みすぎても意味はない、と。


 カイが呪いを受けてしまった事実は変わらない。ならば私はそんなカイを全力で支えようと決めたのだ。




 そこまで回想した私は、もう終わらなければならない時間だと気づきカイに伝える。


「カイー。そろそろ時間だよね? 今日はここまでにしておこうか」

「そうだな。もう少しレベルを上げておきたかったけど、このくらいでも十分だな」


 そこから次の日の予定を話し合ってログアウトをする。意識が現実世界へと引き戻されていった。






「ふぅ……」


 頭にセットしていたゴーグル型のハードウェアを外して私、リンカは、凛上(りんじょう)(せつ)()は目を覚ます。


「うー…ん。今日も楽しかったなー…」


 大きく伸びをして体のコリをほぐしながら今日一日を振り返る。


「今日もいいリアクションしてくれたよねぇ、カイ。これだから悪戯はやめられない」


 割とひどい内容だったが、当人は特に気にすることもなく楽しそうに思い返しながら次の悪戯を考えていく。


「やっぱりカイは最高の相棒であり相方だよねぇ…あれだけ相性いい人もほかにいないよ」


 そんなことをつぶやきながら自分のベッドの上で寝転んでいると、何かを思い出したかのように口にする。


「そういえば、隣のクラスに戒斗って人がいたっけ。なんとなくカイに近い名前だから憶えてたけど…まぁ関係ないか。カイもそんな安直な理由で名前は付けないでしょ」

「それよりも明日は何しようかなぁ! レベル上げもいいけど新しいエリアにも行ってみたいし……あぁー楽しみが広がってく! 早く明日になりますように!」


 そこまで考えた雪華はベッドの中に潜り込む。明日からも続いていく日々に思いを馳せながら───



というわけで、リンカサイドのお話でした。リアルの方はあまり深堀りしていないので何か新鮮ですね。


これにて一章は完全に終了です。ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!



そして第二章ですが、一日空けてから更新しようと思っていますのでそちらもお楽しみに!




面白いと思っていただけたらブックマークや評価もよろしくお願いします。

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