屋上同盟!
短編です。
一応、高2設定です。
現在、四時間目途中。
授業中の教室を通りすぎ、
長い廊下を走る。足音を殺
して階段を何段も駆け上が
って、ようやく‘侵入禁止
’の張り紙があるドアまで
たどり着いた。
俺は息を整えるためその場
にしゃがみこみ、一息つい
てから誰も居ないことを確
認し、首から下げていた‘
あるもの’を取り出した。
それを使い鍵を開けると目
の前に広がる青い空と開放
感。そして、薄いタオルケ
ットにくるまって気持ち良
さそうにまどろむアイツが
いた。
「起きろ」
そう言って軽く揺するとヤ
ツは目を覚ました。
「遅いわ。」
偉そうにヤツ…姫宮 薫は
俺を睨む。
「買ってきてくれた?」
「もちろん。」
ムックリと起き上がり、俺が差し
出すコンビニ袋を奪い中を確認す
る。
「・・・イチゴヨーグルトがないじゃない」
「しょうがないだろ。売ってなかったんだよ。」
そう答えると、姫宮は不機
嫌そうに眉をしかめる。
「あなたと私が出会って、そろそろ五年。その中で学んだ一番大切な事は?」
「…姫宮には逆らってはいけない。」
「はい。良くできました。」
ムカつく笑みを浮かべ姫宮
はコンビニ袋の中にあった、サンドイッチを頬張った。
「まぁ、いいわ。あなたも座れば?」
「・・・・・・。」
俺は無言で隣に座る。
姫宮は何かを言おうとしたが、す
ぐに口を閉じ変わりに空を見上げ
る。
俺もつられて上を見ると、気が抜
けるほどキレイに晴れた空があっ
た。
「いい天気だな。」
「そうね。」
少しだけ会話をし、また空を見上
げる。
「今日また、あなたと付き合ってるのか?って聞かれたわ。」
しばらく無言で空を見ていたが、
姫宮が急に話し出した。
「で、なんて答えたんだ?」
「‘さぁね’」
「違うって言えばよかったのに…。‘お友達です’とか」
「明らかに、‘友達’レベルじゃないでしょ。」
確かに、俺たちは仲がよい。こん
な感じで恋人同士に間違えられる
ことだって、日常茶飯事だ。
「俺たちってどんな関係なんだろう?」
「簡単よ。侵入禁止の屋上に忍び込むっていう秘密を共有する仲。」
姫宮は手を伸ばし俺の首から下げ
てある‘屋上のカギ’を弄りなが
ら、澄ました顔で答えた。
「はぁ?」
この時、俺は相当マヌケな顔をし
ていたと思う。目があった瞬間、
姫宮は笑いだした。
「プッ。アハハハハ!!」
ツボに入ったんだろう。うっすら
と涙をためて、床をバンバン叩き
ながら爆笑している姫宮に文句を
言おうとした時、俺の頭にある事
が浮かんだ。
「ねぇ、姫宮…」
屋上からはじまって、‘友情’よ
りも甘酸っぱくて、‘愛情’なん
かよりずっと頑丈で、大切で、かけがえのないこの関係。
名前をつけるとしたら…
「‘屋上同盟’なんてどう?」
「賛成!」
麗らかなある日の午後。ふ
たりを包むように優しい風
が屋上を吹き抜けた。
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