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INSIDE

作者: 良月

初めて描いた作品です。

刑事になって2年が経った。

小さい頃、俺は一人の刑事に救われた。

顔は覚えていないがあの時の言葉は今でも忘れられない。

ーー「立派な大人になるんだよ」ーー

いつか彼に恩返しをしたい。それが刑事を目指したきっかけだった。

「考え事か?」

助手席にいる先輩刑事が俺に心配そうに声をかけてきた。

彼は高校の先輩で、部活動でかなりお世話になった。誰よりも正義感が強く曲がったことが嫌いな性格だ。

「いえ、最近眠れてないもので」

「そうか、もう少しで現場に着く、お前は少し車で休んでろ」

「ありがとうございます。」

午後2時30分、車のラジオからは最近この町で起きている不可解なニュースが聞こえて来る。

ーーー。続いてA市警察署からです。先月に行方不明となった田中太郎さんの目撃情報を募集しています。ーーー

「ちょうど今捜査している事件だな。頼れる先輩だったのに、刑事が失踪する事件は20年くらい前から増えているらしいな。」

「はい、許せませんね。」

そんな話をしているうちに現場に到着した。

現場はかなり山奥で人が滅多に来ない場所だった。

「お前は休め、俺は現場を見てくるから。」

先輩刑事はそう言って車から降りて行った。

現在捜査しているのは行方不明事件の内、刑事が失踪した事件である。

俺は車から彼を眺めていた。俺の迷いが消えるまでーー


ーー1ヶ月前ーー

「お邪魔します。」

俺は上司から呼び出され、アパートの一室に向かった。

中に入ると上司の姿はなく、警部が立っていた。

「こんにちは、いきなり呼び出してすまないね。座ってくれ。」

俺は少し不気味さを感じたが、警部ということもあり、椅子に座った。

警部は笑顔で話し始めた。

「君のこと少し調べさせてもらったよ。15年前の爆発事故の現場にいたらしいね、それで思い出たんだ、あの時現場近くでかくれんぼをしていた兄妹を助けたことを、君だったんだね。あの時君たちを助けた刑事はだ私よ。」

俺はそれを聞いて警戒心が一気に溶けた。その事件は俺が刑事を目指したきっかけでもあり、助けてくれた刑事は憧れの存在だったからだ。

「警部が、あの時の……その節はありがとうございました!!」

俺は即座に立ち上がり深々とお辞儀しお礼をした。

突然立ち上がった俺に警部は少し驚いたが、すぐさま質問してきた。

「妹さんは元気かい?」

「はい!おかげさまで元気に大学へ通っています。」

妹はあの事件の後、看護師を目指して大学へ進学した。

「そうか、ならお兄ちゃんには立派な刑事になってもらいたいだろうね。」

「と言うと?」

「君に協力してもらいたい件がるんだ。」

警部はいきなり神妙な面持ちで話を始めた。

「この町で行方不明になっている田中太郎という刑事は知っているだろ?実は既に遺体で見つかっているんだが、マスコミに公表できないんだ。」

「何でですか?」

「犯人がこの署内にいるんだよ。この写真の人。」

そう言って警部は一枚の写真を取り出した。

「これは、、、先輩?」

写真に写っていたのは先輩刑事だった。

「君の高校の先輩なんだろ?私も驚いたよ、彼がこんなことをするなんてね。」

「そんなはずは!先輩はとても優しい人で、、それで、、、」

「落ち着きたまえ、これは事実なんだこれらが証拠だ。」

机の上に並べられた資料には携帯の通信履歴やメッセージのやりとりなど、多くの証拠が印刷されていた。

田中太郎巡査の他に数名行方不明になっている名前もあった。

「たしかに、十分すぎます。」

「彼は裏の組織と繋がっている。私たちが摘発しても署長たちに揉み消されてしまう。君が、やってくれないか?もちろん、何かあれば責任は私が取ろう。」

「やるって、殺すって意味ですか?」

「そうだ、無理にとは言わないが、君以上に適任はない。頼む。」

たしかに先輩はいい人で、散々お世話になった。そんな人が人を殺すとは思えない。しかしこれらの資料は先輩が犯人であることを確定している。それに、他でもない、昔命を救ってくれた人の頼み。どうするべきか…

「彼を優秀な刑事のままにしてあげれるのは君しかいない。」

その言葉は迷っていた俺の心に深く刺さってしまった。

「…わかりました。」

「本当にすまない。」

警部は誠心誠意お辞儀をした

「1ヶ月後、2人で田中太郎巡査が失踪した現場へ向かってくれ。タイミングは君任せる。」

俺は迷いながらも敬礼をし、部屋を去った。

『若いってのはいいねぇ、少し考えればわかるだろうに笑』


ーー現在ーー

俺はまだ、決心できていない。

手元には先輩と高校時代に撮影した写真がある。

先輩が裏社会の組織と繋がっていることは確かだろう。しかし、そんな組織にあの正義感が強い先輩が所属した理由がわからない。

「言い出せなかった。」

そんな俺の吐露が車内で消える。

先輩が車から降りて5分程だろうか、

俺は一つの覚悟を決めて車から降りた。

先輩の背後にそっと近づき、銃を構える。

「先輩、どうして、刑事を何人も消したんですか?」

先輩は両手をあげてこちらを向いた。

「まて、何の話だ?」

「俺の質問答えてください!」

「俺は何もやっていない!俺は!この刑事失踪の真犯人を探していたんだ!」

先輩は銃構えた。

「お前も本当は気づいてるんだろ!あの警部が刑事失踪事件の真犯人だってことに!思い出せ、爆発事件の日、警部の姿を見たんじゃないのか?」

その言葉に俺は新たな疑問を抱いた。

「先輩、どうして爆発事件のことを知っているんですか?俺はあの事件のことは誰にも言っていない。友達にすらも、誰に聞いたんですか?」

先輩は一瞬驚いた顔をした。

「なんだと?まさか、、お前もなのか。俺が刑事失踪事件の犯人を極秘に捜査していたことは事実だ。しかしそれが警部に見つかり、一緒に捜査していた田中太郎巡査が殺されたんだ。次は俺だと思っていた。」

「?」

「15年前、爆破事件の直前。警部はお前が近くでかくれんぼをしていることを知っていた。そして見られたことも。お前が忘れていたから野放しにされてたんだ。」

ああ、そうかどうして憧れの人の顔を忘れてしまったのか、今思い出した。

俺はあの時見てしまったんだ。

爆発した建物から出てきた警部のことを、そして怖かったんだあの時の笑顔が。

ーー「立派な大人になるんだよ」ーー

爆発の後警部がかけてくれたこの言葉。

あの時も笑顔だった、それが怖くて怖くて忘れることで俺は自分の心を守った。

忘れるうちに俺は憧れを抱くようになっていた。

そう思うとなんかおかしくなってきたな。

気がつけば俺はニヤリと笑っていた。

「そうか、先輩俺決めました。俺はあの人の下に付きます。俺はあの人に憧れてしまった。」

もう言葉はいらない。2人のうちどちらかしか生き残れないのだろう。

迷いに迷った俺の覚悟は決まった。あとは引き金を引くだけ。

「「「パーン」」」

山の中に響き渡るその音は誰の耳にも触れることなく消えていった。


ーー同時間、アパート内にてーー

ピピピ、ピピピ

ケータイのアラームは午後3時を知らしている。

部屋の机の上にはこれまで亡くなった刑事の名前と写真、死因が書かれたノートが置いてある。表紙には「My Collection」と書かれている。

そして椅子に座る警部の姿。

「ふふふ笑ははは笑」

部屋に不気味に響き渡る警部の笑い声。

彼は写真を2枚並べて呟いた。

「さてどちらが生き残ったのかな笑」


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