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後編_12(とんだ道化)


   *


 すべてが終わった。

 炎が夜空を舐めていた。


 その丘の上からは、街も城も一望できた──彼女が幼かった頃は。


 いまはすべてが炎の中だ。

 イブキはぐいと、頬をこすった。


 草木の中に、女の死体がある。

 首のない死体である。


 死体は王女の服を着ていた。


「莫迦者!」イブキは叫んだ。「莫迦者! とんだ道化だ!」


 声は煙に巻かれて、煤けた。


 赤々と炎が照らす夜空に、イブキの心は空虚になった。


 自分は何をしたのだろうか。


 いや、違う。


 目が険しく吊り上がる。

 あれが、わたしをそうさせたのだ。


 ──どうかしている。


 頭では理解していた。

 だが、イブキはそれを口に含んだ。


 銀の丸薬を、奥歯で砕いて飲み下した。


 どうかしてやる。

 心は捨て鉢になっていた。


 すぐさま胃の腑が熱を帯びた。躰が熱く火照った。

 胸の鼓動が激しく打ち付け、イブキは眩暈に襲われる。


 足下が、ぐずぐずと崩れ、一切を飲み込んだ。


   *


 風が吹いて、骨と骨とが擦れて鳴った。

 からからと、とても軽い音であった。


 石版が砕けていた。


「おい」イブキは強く銀の女を睨め付けた。「説明しろ」


 銀の女は動かない。


「お前には義務がある。答えろ!」

 刀の柄に手をやった。

「やめろ!」


 今にも切り掛かろうとするイブキを抑えたのはゴールだった。


「放せ、若造!」

「ダメだ」


「説明しろ!」イブキはなおも云い募る。「お前はいったい何をした!!」


「姉がわたしの身代わりになり、妹と始末をつけた」

 ゆらりと、銀の肢体が揺らぎ流れ、一角獣の姿に固定化された。

「約束の報酬を渡します」


「バカにするな!!」

 イブキの声が木霊した。


「説明しろ……お前ほどのバケモノに難しいことがあるものか」


 彼女の躰は、若者の腕の中で力を失い、ぐんにゃりと地面にへたり込んだ。「答えろ、答えてくれ……」


 懇願であった。

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