表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

後編_06(嗚呼、死にたくない)


(彼女か?)

 ゴールは思った。


(そうだ)

 返事があった。まだいるの!?


 ゴールは銃を構え──助言に従い、立て続けに四発撃った。


 どうっと、銀の兵士は、勢い余って、頭から地面にめり込んだ。

 銃弾の穿った穴から、じくじくと赤黒い染みが広がった。


「ありがと」女が礼を云った。それからゴールの顔を一瞥し、敵兵に向かって引き金を絞りながら、「見た顔のような気がするんだけどな」


「はじめましてだ」ゴールも次々と敵を撃った。


「あたしはローズ。シルバリー・ローズ。あんた、名は?」


「ペニー・レーン」

 咄嗟に言葉が口をついて出た。「レーンだ」


 ゴールは知られてはいけない直感を得たのである。


「そう、よろしく、レーン−くん」

「こちらこそだ、ミズ・ローズ」


 キシャアア──!


 散り散りになった個体を再びまとめ、勇者だったモノが、機鋼兵の間を渡り、喰らい、また次の得物を目掛け飛んだ。


 ──バケモンだ。

 ゴールとローズは同じ思いを抱いた。


「ああッ」

 ローズが悲鳴を散らし、躰を曲げた。

 腹と足に弾を喰らい、血肉が散った。


 とっさにゴールは腕を伸ばし。ローズの躰を抱き留めた。


 タン、タン、タン!

 立て続けに撃ち返した。


 どうっ、と、次々と機鋼兵が倒れた。


 ゴールはローズの手を取り、腹の傷の上に置き、「しっかと押さえろ」


 そしてローズの銃を手にすると、

「オオッ!」

 二丁拳銃で機鋼兵をなぎ倒した!


 撃ち込むのは魔法の銃弾!

 弾切れはない!

 だが銃身は普通!


 「オオオッ!」

 撃ち続ける、撃ち続ける! 撃ち続ける!!


 バン!


 ゴールの銃が弾けた!

 ローズの銃も限界だ!


 なのに、あらかたの機鋼兵を打ち倒した!

 つよいぞ、ぼくらのペンス(ぺんす)ゴール(ごーる)


 束の間を縫って、ゴールはローズのそばに片膝をついてしゃがむ。彼女はとても苦しそうであった。


「しっかりしろ」

「無理だ……」


 ──躰は気力でできている。骨身は気力で保たれる。


 女剣士の言葉が脳裏をよぎる。


 頭の下に手を入れ、僅かに首を起こし、「しっかりするんだ、傷は浅いぞ」水を与えて励ました。


「……冗談を云うな」

 水で濡れたローズの口元は一瞬、苦悶が消え、ふ、と笑みが作られたが、やはりそれもすぐに霧散した。


「……」

 ローズの命運は尽きかけていた。


(嗚呼、死にたくない死にたくない、無理無理、痛い痛い、助けて助けて、無理無理、痛い痛い痛い、若くていい男に抱かれているのに、痛い痛い無理無理、助けて助けて、せっかく若くていい男の腕の中にいるのに嗚呼、無理無理、痛い痛い、肌を合せたり触られたいのに痛い痛い、もう楽にして楽に、嗚呼、わたしは死ぬ死ぬ……死ぬ……死)


 彼女の気力は尽きようとしている。

 ゴールにはそれが文字通り手を取るように分かった。


 もし、魂という物があるのなら。

 どうして腕の中の彼女の躰は、ぐったり重たくなっている?


「目を覚ませ、冗談はよせ!」


 揺さぶった。首が力なく揺れた。

 閉じられぬ瞼。

 瞳は何も映さない。


「嘘だろう……」


 ゴールは遺体を抱きしめ慟哭した。

 機鋼兵が大地を鳴らして迫り来る。


(戦う理由を失った)


 ゴールの気力は萎んでいく。


(死地)


 骨身が保てなくなる──。


 ぶわッ!

 一陣の突風が吹き抜けた!


 どうっ!

 兵隊たちが吹き飛ばされ、躰をバラバラにして散った!


「間に合った?」

 軽やかな女の声。「救護班よ」


 場違いなほど鮮やかな髪の色をした女は、三日月柄の腕章をしていた。「看護兵、フリージア」


「間に合わなかったぞ」

 ゴールはローズの遺骸を横たえ、俯いたまま女を見ようともしなかった。


「遅かったぞ」


「あれ? ゴールデン・ゴール?」


 だから、誰だ、それは。

「違う」今はそんな話はどうでもいい。


(気を取られるな)


 その時、ゴールは一角獣から預かった銀の珠を思い出した。


 これがあれば──もしかすると、ひょっとすると!


(気付くのが遅いぞ)


 看護兵の目が、ハッと見開かれた。「やめなさい」


「こうなった今、お前に何ができる」


「それは飲んだ時の姿で生き返る、と教えられなかったの?」


「しかし、息を吹き返す」

「やめなさい。ずっとお腹から血を滴らせて生かすようなものよ」


「ならどうすれば!」


 苦悶の若者に女は、腕章を引っ張って見せ、「わたしは救護班よ」再び云った。


「取り引きをする気はある?」

 夢魔の女は挑むようにゴールを見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ