表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

後編_02(鉄の服)


   *


 もう疑念の余地はなかった。

 イブキは城内を急いだ。


 角を曲がり、階段を登り、また下りそして、不格好な甲冑姿の騎士にぶつかりかけ、飛び退った。


 始めて見る物である。それは手足のついた、寸胴の薬罐(やっくわん)といった(かたち)(ざま)であった。


 戦いに参加した跡が見て取れた。


 表面は煤けており、そこかしこが歪んでいた。刀や銃弾を受けたであろう傷や凹みがあった。が、それでもまだ充分に働けるか。


 長く大きな剣は刃こぼれし、刀身が曲がっていた。引くことも刺すこともできぬ。使い物にならぬ。せいぜい相手を打つだけだ(それでも骨を砕けるだろう、とイブキは見当をつけた)。


 寸胴の甲冑には、近衛の紋章が刻まれていた。そして、隊旗を持っていた。


 醜悪な甲冑にイブキは激高した。

 しかし、甲冑を着込んだ女は違った。


 面を上げた年嵩の騎士の目が、驚きで見開かれていたのである。


「カブキ、なぜ──」

「お前もか」


 冷ややかに向けた目に、「何者か!?」近衛騎士の目が一瞬で変わった。


「やめろ。わたしは敵でない」おそらく、とイブキは胸の内でつぶやく。


 しばし睨み合い、ふと騎士は「貴様の名はもしや──、」

「云うな!」イブキは一喝した。


 騎士は、雷に撃たれたように、身を強ばらせた。


 もし疑念を口にすれば、それが現実になってしまうことが恐ろしかったのである。


「兎に角、そのナリはなんだ」イブキは叱った。


「共和国から技術供与された戦闘装甲服だ。使い手の力を五倍も強化する」


 背からもくもくと白い蒸気を噴いて、熱くないのか、このバカは。


蒸気(じょうき)甲兵(こうへい)、スチーマシカと呼ぶ」


 バカだ。


 イブキは寸胴を殴りつけた。ゴオン、と音が内に響いた。


「そんな鉄の服など! 恥を知れ」


「しかし、」


「さっさと脱げ、脱がんか、バカ者! 自分で檻に入るヤツがあるか!!」


 ダンッと、イブキは壁の一画を叩いた。隠し扉が開いた。「その図体で、これをくぐれるかっ」


「なぜそれを、」云いかけ、薬罐の騎士は言葉を飲み込み、予告もなく乗り込んできた流浪人を信じた。


 騎士は装備を解いて軽装になると(ああ、暑かったと、汗みずくで騎士は云った。バカだとイブキは改めて確信した。こいつは昔からバカのままだ)、イブキと共に王女の私室へ向かった。


 その部屋は血のにおいに満ちていた。

 手に短刀を握った王女が、血溜まりの中にいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ