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序
失路・巨人と一角獣〈前・後〉
序
王女は哮り立っていた。
が、それを面に出すことはなかった。
幼い小さな躰は、想像だにもつかない憤怒で膨れていた。
城内を、ともすれば駆け足のような速度で突き進む。侍女たちは、離されまいと足早に彼女の後を追う。
見張りに立っていた近衛の兵は、慌てて戸を開け、王女を通した。
部屋の中、硬い床の上に、女が這いつくばるようしていた。
微動だもせず、石のように、ただひたすらに頭を垂れていた。
王女はそれを一瞥することもなく坐り、「なんだ」どうしたことか、と侍女に向かって居丈高に訊ねる。「答えよ」