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9/20

どうぞ遠慮なく婚約破棄をしてください!

脱食料を目標に努力する日々を続け、私は10歳の誕生日を迎えた。


家庭教師のクピーディス先生は相変わらず私を親の敵のように冷酷な態度だし、侍女のククリスは相変わらずクーデレのデレ部分がみえない。


そしてお母様は美しい少女のままで、エディットはお母様の側をいっときも離れず愛でるかのように世話をしている。最高の百合である。



本日はヴァンダイア族という私を食料扱いしかしていない婚約者とのお目通りである。

その際に婚約の儀式を執り行うそうだ。


夜会で執り行うとのことだったので、支度に1日かけたので余念がない。

ククリスに丁寧に湯浴みをさせてもらい、ドレスアップや化粧などなど入念に準備をしてきた。

なかなか化けたなと思ったが、ククリスはいつもの調子で「大変お美しいです」の一言だったので普段とあまり変わらないのかもしれない気もする。


璃亜時代はパサパサな黒髪で伸ばすとさらに見れないものになるので肩くらいまでの長さになると切っていたが、サーティリアは艶やかな黒髪が腰までの長さになっても美しさはそのまま・・・むしろより美しさをましている。解せぬ。



ヴァンダイアの婚約式に則って行うとのことだが、その際に血合わせというものがあるらしい。語感は可愛い気もするが恐ろしいものである。

夫となるヴァンダイア族の王が私の血液を少量飲むというものだ。

味見みたいなものだろう。



しかし!このために数年間準備をしてきた私にぬかりはない!!!


庭師のフィクトルや料理人のトゥーラという善意の第三者のもと、ヴァンダイアが好まない血液をつくりあげてきたのだ!!!

うははははh!


本日は婚約式ではなく、脱食料、婚約破棄式になるためのお祝いといっても過言ではない!



わくわくどきどきしていると、開催の鐘がなる。


イケメン吸血鬼かつ婚約者であるオゼノービリス・イシュックウィーンが登場した。

私以外で初めて見る漆黒の髪。瞳はもちろん深紅だった。

ヴァンパイアの定番カラーのひとつだね!


そして、この美女とイケメンパラダイスの中でも一際美しい顔立ちをした青年だった。

美女鑑賞が趣味の私でさえも思わずうっとりするほどの美しさである。

私がイケメン好きだったら死んでもいいから血液を飲んでくださいと懇願しただろうけど、でも残念!

私が好きなのは美少女なんです!ごめんね!!


いよいよ血合わせの儀式が始まる。


指示された通りにオゼノービリス様の前に立つ。


「サーティリア・・モリスヴィット、其方を妻に迎えることをここに誓う。」


耳元で低音の声が響くとぞわりと肌が粟立つ。


その様子をクピディーダス先生が恐ろしい目でみているのが視界の端にうつる。


(えっえっ、私何か失敗した?!)


動揺しながらも心を落ち着かせる。

たぶん、先生はこのイケメンを前に私が失神しないか心配しているのだろう。

もし私がイケメン好きどころか失神どころか天に召されていたと思うので先生の心配は最もである。

私がイケメン好きじゃなくて、美女好きでよかった!!!!


そして、そのままオゼノービリス様が私の首元に唇をあて絖らせたあとに歯をたてる。

注射のような痛みを覚悟していたが、痛みは全くない。

むしろ心地よいくらいだ。全てを任せたくなる感覚に抗うことなく目を瞑る。

これが・・・ヴァンパイアの能力なんだろうな・・・とぼんやり思う。


「うっ・・・!」


オゼノービリス様の低音が響く。


「其方・・・何を・・・?」



オゼノービリス様様が自身の手を口元にあてる。


やばい、私の脱食料を目指し、理想の血液とは正反対の方向に舵を振り切っていたせいでむしろ毒になった?!健康な血液は吸血鬼にとって毒なの?!殺人者・・・いや殺吸血鬼者?になっちゃうの?!


真っ青になる私。


オゼノービリス様がそっと私の体を離す。

その表情は苦悶さが現れている。


「・・・急用を思い出した。サーティリア、誠に申し訳ないがまた後日連絡させてもらう。」そういってオゼノービリス様が身を翻す。


突然の儀式中断にお母様はおろおろとした表情を浮かべていた。

お母様の侍女のエディットは愛らしいものをみるかのような視線でお母様を見つめている。


いや、お母様が可愛いのはわかるけど!もうちょっと私の状況もみてくれてもいいんじゃないかな?!


我が家の使用人は全く動じていないし、オゼノービリス様が連れてきた使用人たちもさっと身を翻す。

あんなに恐ろしい絶対零度の目でみていたクピディーダス先生もさっさと身を翻している。


一応、私の家庭教師としてなんか言葉をかけてくれてもいいんじゃないかな?!


ま、まぁあまりの血液のまずさにオゼノービリス様が驚いていたことは間違いない。

婚約式を中断したことからも間違いなく破棄されるといっても良いだろう。


私はにんまりと計画成功を確信するのだった。



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