初めての「献血」をします!
美幼女に会うため・・・じゃなくて、嫁入りのためにヴァンダイア公国についた。
鬱蒼と茂った森の奥に建つ立派なお城。
窓からみえる庭には花などはなく、レンガの壁が複雑に配置されている。
まるで迷路のようで、知らない人が入り込んだら遭難でもしそうな勢いだ。
・・・え?もしかして逃走防止目的?
いやいや、深く考えちゃだめよリア!!!
オゼノービリス様の婚約者としてやってきたけれど、私の目的は絶世の美幼女であるレナーツィア様を救うことが第一目的!!!
オゼノービリス様によれば、レナーツィア様は病原菌などの感染を防ぐため、離宮で保護されているようだ。
接触も最低限にしているため、あまり関わりはないとのこと。
レナーツィア様は見た目が4~5歳だから、寂しいんじゃないかと思ったけれど・・・。
人間でいうところの100歳は超えているとのことだった。
合法ロリにも限度があるだろう・・・。
美幼女ながらもしっかりされているため、身の回りのことは一通り自分でできるため特に問題ないとのことだった。
ひとりぼっちの美幼女・・・むふふ!
がっつり可愛がって、がっつり懐いてもらおう!!!
さっそくレナーツィア様の離宮にいき、献血するのだ。
ヴァンダイアは搾血とかいうみたいだけど、なんか怖い。
提供者の意思どころか生死問わずに、血液を一方的に搾取する感じが溢れている。
でも私は私の意思をもって!
美幼女界の新星レナーツィア様を救うために血液を提供する!!
まさに善意での献血なのだ。
献血は私の趣味だし、美幼女であれば拒否感もない。
名称って大事!!!
おそらくだが、私の血液は日々の努力の結果、ヴァンダイアにとって青汁みたいなものになったのだと思う。
まずいけど健康には良き、みたいな。
貧血気味の血液は人工甘味料たっぷりのジュースみたいなものだと私は予測している。
ジュースは美味しいし、飲みやすいけど、そればっかりじゃ健康に良くないからね!
でも、美幼女のレナーツィア様に私の血液を不味い青汁味だと思って欲しくない。
果汁100%とかハーブティーあたりを目指したい。
私は少し考えてフィクトルと作ったローズティーをナルキッススに頼んで用意してもらった。
あわせて、ナイフも持参するよう伝える。
ナルキッススが決意した目で深く頷く。
「・・・暗殺じゃないからね?」
というとナルキッススは驚いた表情を浮かべる。
ナイフを用意するようにいうだけで、暗殺しようとするナルキッススの常識にはびっくりである。
そしてなぜかそれがわかる私にもびっくりである。
なお、ナルキッススの表情は相変わらずの能面で無表情なのに。
レナーツィア様の離宮を尋ねると、驚く程に人気も生気も感じなかった。
まるで病院の手術室前のような静けさと清潔さだ。
レナーツィア様はベッドに座っていた。
とてもだるく動いたり、座ったりすること億劫なようだ。
でも、動けないわけではないとのことでティーテーブルまで移動してくれた。
「リアお姉さま、改めてご挨拶してもよろしいでしょうか?」
可愛らしい声で話しかけてくる妖精・・・。
こんな美幼女が合法的に私の妹だなんて・・・!
「もちろんよろしいですわ、レナーツィア様。」
レナーツィア様はひととおり挨拶をするとぷくっと頬をふくらませながら私をみつめる。
「リアお姉さま、わたくしのことはレーナと呼んでくださる約束をお忘れですか?」と少し拗ねたような表情を浮かべる。
は、破壊力ー!!!!
めちゃくちゃ可愛いー!!!!!
「ふふ、ごめんなさいね、レーナ。あらためてよろしくね。」そう声をかけて頭を撫でると少し驚いたあと、とっても嬉しそうな表情を浮かべた。
私が頭から手をはなすと、小さな手を同じところにあてて照れたように笑う。
か、かわいいー!!!!妖精じゃー!!!!!
私の中の何かがあらぶる。
「レーナ、今日は献血をしにきましたわ。」私がそう離しかけると、「献血?搾血ではなくてですか?」とレーナはきょとんとする。
「えぇ、私は私の意思をもってレーナに血液を提供するのです。私がしたいからする。搾血のような一方的なものではないから、名称を変えることにしたの。私の献血はレーナが初めてよ。」と説明する。
レーナはとっても嬉しそうに笑い、「わたくし、誰かに何かをしてもらうって初めてな気がします。おそろいですね!」といった。
け、健気・・・!病気をうつされないようにとはいえ、全部一人でしてきたって言ってたもんね。私、きめました。この美幼女な妖精の世話を全力でやきます!!!!
「私の血液はとても栄養価は高いけれど、味はとても飲めたようなものじゃないようなのです。なので、今日は初めてということもあるので少し工夫してみることにしたの。」そう言うとナルキッススがちょうど良いタイミングでローズティーをいれてくれる。
「これはローズティーといって薔薇から作った紅茶よ。ここに私の血液を少し入れて、薄めてみるから飲んでくれるかしら。」そういって手をナルキッススにさしだす。私、注射とかみれないタイプなので!!!
ナルキッススは心得たように少しだけ指に鋒をあて、ローズティーに血液をおとす。
レーナは少し驚いた表情を浮かべ、ティーカップに口付ける。「・・・驚きました。とても美味しくて飲みやすいですわ。」とにっこり笑う。
よかった。レーナはほとんど血液を摂取できないときいていたので、味は最悪で効果は抜群という劇薬のような私の血液を現役で飲むよりも薄くしてから、様子をみながら濃度を変えるのが良いと思ったのだ。
「リアお姉さま、わたくしのためにありがとうございます。」そういって私の手をとると、口に含んだ。
えっ?!ちょっ!!!!私が驚いて反応できない間にレーナの小さな口から出される。私の指は傷跡もなく、きれいな状態になっていた。
「ヴァンダイアの唾液は搾血の際に食料となる人間の負担を極力減らすために痛みを軽減し、治癒の効果があるんです。お姉さまが献血?をしてくださったときにはわたくしが治癒させていただきますわ。」とにっこり笑う。
レーナによると下属の場合はその能力が低いので痛みも傷も軽減する程度になるが、上属であれば痛みも傷も残らないとのことでった。
「あの、もう少しいただいてもよろしいですか?いまの行為で指の痛みもないはずですし、また治癒させていただきますから。」おずおずとレーナが尋ねる。
「もちろんよ。」今度は少し深めに指を切り、ティーポットに私の血液を垂らす。
レーナが私の指を咥えると痛みも傷跡もきれいになくなる。指を口に含んだときに私の血液を原液で摂取することになるので苦味を心配したが直接飲み込むわけではないので、負担ではないとのことだった。
よかった。可愛い妖精に私の血液が不味いと思われることが回避できたようでなによりである。
レーナに体調を尋ねると、これまで感じたことがないくらいエネルギーが回復したとのことだった。レーナがブラッドローズティーを飲む間、他愛ない話をして過ごした。
「リアお姉さま、またこうやってお茶を一緒に飲んでくださいますか?」おずおずとレーナが尋ねてくる。
「えぇ、もちろんよ。次はいつがいいかしら?」
こっちはいつでも、大歓迎だよ!!!と思いながら、にっこり微笑む。
レーナは少し視線を迷わせたあと、意を決したように「あ、あの本で読んだのですけど、人間は毎日朝の昼にお茶を飲むんですよね?お姉さまに予定がない日で構わないので毎日ご一緒できたら嬉しいのですがいかがでしょうか。」と頬を染めながら言う。
あー!かわいい!!本当に可愛い!!!
私が無言で悶えているのを不安に思ったようで「あ、あの私はお茶の葉とかわからないのですが、お姉さまが教えてくだされば用意することができます。
わたくしに色々教えてくださいませ。できるだけお姉さまにご負担をおかけしないように努力いたしますから。」と一生懸命に誘ってくれる。
「・・・こんなに可愛いお茶の相手ができてとても嬉しいわ。では、また来るわね。」と答えるとレーナはとっても嬉しそうに笑った。
・・・めちゃくちゃ可愛い!!!ちらりと見える八重歯がまた可愛い!!!!
初対面だというのにレーナ様のことが大好きになった私であった。