私の趣味は献血、そして可愛い女の子を推すことです!
よろしくお願いします!
「いつも献血へのご協力ありがとうございます!」
献血を終えた私に元気よく笑顔で声をかけてくれる献血センターの職員さん。
今年新卒で入ったばかりのフレッシュさと愛嬌が魅力のお気に入りの女の子である。
(相変わらずかわいい~!!!シフト予想当たってよかった~!!!!)
なにを隠そう彼女は私の推しアイドルにそっくりなのである。
献血という名の無料接触イベント!ありがとうございます!!!
私はにっこりと笑いながら献血の粗品を受け取る。
にっこり笑ったのではなく、ただニヤけただけともいう。
今日の献血の主な目的は「愛の献血」みたいな定番のキャッチコピーとともにプリントされた美少女アイドルユニットのクリアファイルだ。
私が推しているアイドルグループのライバルグループとはいえ、可愛いものは可愛い。
可愛いは正義である。
そのまま献血者が利用できる無料アイス自販機へ移動し、いつものチョコ味のアイスのボタンを押し、取り出し口に手をのばす。
(あれっ?!)
しかし、私の手に握られていたのはチョコミント味のアイスだった。
ちょっとがっかりしながら、チョコミント味のアイスを食べていると、一番の推し職員の女の子が通りかかり、目が合う。
会釈したところ、いままででみた中で最高の笑顔を浮かべ、「チョコミント、美味しいですよね!私も大好きです!」と話しかけてくれた。
(チョコミントGJ・・・!ありがとうチョコミン党。たった今!!!チョコミントが大好きになりました!チョコミン党員です!!!!)
私は心の暴走を抑え、ゆっくりと力強く頷いた。
「最近、チョコミントの素晴らしさに気づいたんです。私も仲間にあえて嬉しいです。」とにっこり笑った。決してにやにやではない。ええ、にやにやではない。
今日はいままでで最高の献血だった!
投票にいったら外食にいく派がいるように、献血に行ったら肉を食べる派が私だ。
(今日は定型文以外ではじめて話しかけてもらった記念にステーキを食べにいこう!!!)
私は意気揚々と出かけた。
最後の晩餐になるとも知らずに・・・。
◇
ステーキを食べ終わり、そろそろ店をでようとしたとき。
突然スマートフォンの警報アラームの大合唱が聞こえた。
「地震がきます」と。
扉をでようとした瞬間、空間ごと視界が左右に大きく揺れた。
(あ、これ大地震じゃないの・・・?)
と思う間もなく、何かが体のどこかに当たり、体が倒れた。
一体何が・・・と思った所で、身動きが取れないことに気付いた。
薄汚いアスファルトの上にコンクリートの塊とともに赤く広がっていく液体がみえる。
液体が広がるほど、私の体から感覚が消えていくようだ。
(これ・・・私の血・・・?私自身が輸血が必要になっちゃいそうだな・・・。そういや輸血された場合ってもう献血はできないんだっけ・・・。献血、私が唯一人の役に立てる場所だったのにな・・・もっとしとけばよかったな・・・。)
私はそのまま瞳を閉じ、意識を手放した。