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【急募】TSしてロリ巨乳になった甥っ子に秘密がバレたときの対処法


 もう日付も変わろうとしている時間帯にも関わらず、ヒカルのテンションはいまだに高いままだった。


「叔父さん叔父さん♪ 今度はトランプで七並べしようよ~♪」


「もういい加減に寝るぞ」


「えー! 私もっと叔父さんと夜をエンジョイしたい!」


「良い子はもう寝る時間だ」


「ぶ~。ヒカルは今夜だけは悪い子だからいいんです~」


 屁理屈を言いおって。

 まあ、こうして親戚がお泊まりする夜にはしゃぎたい気持ちもわからんでもないがな。


「ねえねえ、せっかくだし叔父さんの昔の話とかしてよ~」


「は? なんでまた急に」


「だって~。叔父さんったら全然そういう話してくれないんだもん」


 確かにヒカル相手に昔話をしたことはない。

 世間一般的な叔父なら『俺の昔の頃なんてな~』と聞いてもいない過去話や自慢話をするものなのだろうが……こと俺に関しては意図的にそういう話題を避けるようにしていた。

 誰にだって話したくない過去というものがあるものである。


「ねえ教えてよー。叔父さん高校生ぐらいのときはどんな男子だったの~?」


 そんな俺の気も知らず、ヒカルは無邪気な顔でグイグイと距離を縮めてくる。

 悪意のない質問攻めと、ついでにたぷたぷと揺れて迫ってくる胸の谷間から逃げるように顔を逸らす。


「おっさんの昔話なんて、つまらないだろ……」


「そんなことないよ! 好きな人の話なら、なんだって聞きたいもん!」


「うっ……」


 男心をグラつかせるヒカルの発言と表情。

 星が瞬くのようなキラキラとした眼差しで『叔父さん、教えて?』とおねだりしてくるヒカルに、つい口が軽くなりそうになるが……

 いやいや、ここは(こら)えるんだ俺。


「こほん。いいかヒカル。男には少し謎があったほうがカッコイイんだぜ?」


「叔父さんのケチ。いいも~ん。勝手にアルバムとか漁っちゃうから。……お、あった」


「おいスルーか! ていうか、なぜここにアルバムが!?」


 兄貴か義姉さんが残していたのか、客間のクローゼットに古いアルバムが残されていた。


「なんだ客間にあったのか~。どおりで見つからないわけだ。えへへ~♪ ここに叔父さんの隠された過去が……」


「や、やめろヒカル! 頼むから見ないでくれ!」


 アルバムの表紙からして確かそれは……

 制止は間に合わず、ヒカルはペラッとアルバムを開いてしまう。


「……え? これ、もしかして叔父さん?」


 アルバムの写真を見るなり目を点にするヒカル。

 几帳面な兄貴のことだから、きっとご丁寧にタイトルタグをつけていることだろう。

 当時、高校生だった俺の写真に……。


「『やんちゃしてた弟』……って、えええ!? 何コレ!? 叔父さん、昔は不良だったの!?」


「いやぁ、そのぉ……」


「しかもリーゼントに丈が長い謎構造の学ラン! 時代を感じる典型的な不良!」


「やめろー! わざわざ口にするなー!」


「叔父さん……これはさすがに……」


 ま、待てヒカル。センスが悪いのは認める。でも当時はかっこいいと思ってたんだよ!


「かっこよすぎてヒカルくらくらしちゃう♡」


「お前のセンスも大概だな!?」


 妙なところで血の繋がりを実感しつつ、話題は自然と昔の俺について盛り上がり始める。


「でも意外だなー。叔父さんってしっかり者だから、昔から善良な優等生ってイメージがあったよ」


「……ぜんぜん真逆だよ。昔いろいろバカやらかしたから、マトモになれるよう努力したんだ」


 善良で優等生だったのは兄貴のほうだ。

 医大に一発合格して、そのままデカイ病院で名医になるような、ご立派な兄貴さま。


「お父さんが医者だったのは知ってたけど、そんなに優秀だったんだ」


「ガキの頃から俺と出来が違ったよ。ほんとうに同じ血が流れているのかと疑いたくなるぐらいにな」


「へえ~。……はっ!? も、もしやお父さんと叔父さんは義理の兄弟で、私と叔父さんは血が繋がっていない説がワンチャン!? さすれば叔父さん! 私たちの愛を阻む法律なんて、もはや関係な……」


「俺もそう疑ってDNA検査したことあるが、ちゃんと血の繋がった兄弟だから安心したまえヒカル」


「しょぼーん……」


 でもまあ、そんな行動を起こさせるほど兄貴は俺とは別次元の人間だった。

 優秀すぎる兄貴と俺はよく比べられた。

 兄貴はよく「僕は僕。お前はお前じゃないか」と励ましてくれたが、そう言われるたびに惨めな気持ちになった。


 べつに嫌いだったわけじゃない。多くの命を救う兄貴のことはとても尊敬していた。

 でも不満までは消せない。

 だから考えつく限りの非行に走って、行き場のない鬱憤を解消していた。


「それであの立派なリーゼントに……」


「ほっとけ」


 当時はリーゼントこそが不良の美学だったんだよ。


 だが、そんなバカな真似をやめるようになったのは、バイクで事故ったときだ。

 兄貴が務める病院に運ばれなければ、助からなかったかもしれないほどの重傷を負った。


『バカヤロウ! 心配かけて……』


 主治医を務めた兄貴は顔をクシャクシャにして泣いて俺を叱った。

 滅多に感情を乱したりしない兄貴がだ。


「そのとき、初めて自分を情けなく思ったんだ。兄貴はこんなろくでなしの弟の命すら救ってくれた。嫉妬なんて一瞬で消えちまうくらい、本当に立派な兄貴なんだって思い知らされた。……それに比べて俺は何もしちゃいねえ。いや、始めてすらいなかったって気づかされたんだ」


 俺は兄貴のようにはなれない。だが、生き方はいくらでも変えることはできる。


 それから自分勝手に生きることをやめた。

 兄貴が救ってくれた命を無駄にしないためにも、他人のために生きられるような、他人の幸せを願えるような、そんな真っ直ぐな男になるのだと決めた。


 ……だから、初恋相手の幼なじみが義理の姉になると知ったときも、不思議と嫉妬は湧かなかった。

 彼女を幸せにできるのは兄貴しかいない。そう素直に祝福できた。


「ヒカル、お前の父さんはそんな立派な人だったんだよ。いまの俺があるのは兄貴のおかげなんだ。だからなヒカル。お前もそんな父親に恥じないよう、立派に……」


「すぴー……」


「って、おいこら」


 シリアスな話に耐えられなかったのか、または小言から逃げるためか、ヒカルはすでに夢の世界の住人だった。


「やれやれ……」


 すやすやと寝息を立てるヒカルをベッドへ運ぶ。

 腕の中には女の子特有の軽さ。なんとも無防備に寝入るヒカルを見て、溜め息をこぼす。


「兄貴もまさか自分の『息子』が『娘』になるとは思わなかっただろうな……」


 その上、叔父である自分に本気の恋をするとは。いったい、どこで道を間違えたのか。

 もしも兄貴が生きていたら何を言われるか……。


「……本当に生きてれば、何か変わったかもしれないな」


 天は無慈悲にも兄貴に寿命を与えてはくれなかった。

 名医と呼ばれた男が難病に侵されるだなんて、なんという皮肉だろう。


『ヒカルを、頼む……』


 それが兄貴の最期の言葉だった。


 任せてくれ兄貴。

 きっと俺がヒカルを立派な大人に成長させてみせる。

 ……まあ男から女になったのはさすがに予想外だったが、それでも考えは変わっていない。

 兄貴の代わりにヒカルを幸せにする。その誓いは必ず果たす。


 ヒカルがどんなに熱愛を向けてくれても、自分はあくまでヒカルの父親代わりだ。それ以上の存在になるつもりはない。

 報われたい、なんて考えもない。

 いっときは『このまま父親代わりをしていたら、もしかしたらいずれ本当に……』と、そんな邪念も浮かんだが……俺にそんな権利はないだろう。


 兄貴に命を救われた時点で俺は充分に報われているんだ。だから俺の人生は、誰かの幸せのために使う。それで満足だ。



「すぅ……むにゃ、えへへ~叔父さ~ん……」


 幸せそうな顔で寝言を口にするヒカルの頭を撫でつつ、俺もベッドに横になる。

 やはり添い寝には抵抗があるが……ま、今夜ぐらいはかわいい姪っ子(ヒカル)のワガママを聞いてあげよう。




 安心してくれ兄貴。

 絶対にヒカルを不幸にさせたりはしない。

 俺が必ず守ってみせる。


 そう改めて誓いを立てながら眠りにつき……



 翌朝、全裸で横たわるヒカルとご対面した。



 ……え? 俺、やっちゃいました?


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