右辺進との対談:「硬い心性」の同盟
右辺進は以下のように、東風の論稿を右辺の著書「進歩思想論」にて評価していた。
「彼の思想は真逆ではあるが、ソフトパワーに押されている今のイデオロギーに危機感を抱いていることは共感できる。硬派な思想は、大衆化、サブカルチャー化されるべきではない。保守思想もまた然り。」
これを見た東風は同じ危機感を示していると評価し、さらに理論武装すべく、右辺との対談を申し出た。
右辺もこれにすぐさま応じた。対談はN市の会議室にて行われ、かの二人と一人の書記係の密室会談であった。
右辺「話す場を設けていただき感謝します。サブカルどもを懲らしめるため、思想は違えど理論の確立のため協力したいと思います。」
東風「こちらこそ。政治的に相いれないことは多々ありますが、思想自体の危機に関しては協力したい次第です。」
このようにして対談が始まり、3時間ほど話された。対談の内容に関しては共著である「イデオロギーの危機」に記されている。本の内容は以下のとおりである。
まず、左右の思想問わず、サブカルチャーによって、イデオロギーの本質が見失われることを、そして、極右、極左の双方からどのようにしてサブカルチャーに侵食され、悪影響を受けているのかがそれぞれ説明されている。
昨今の極右思想の場合、何かしらの思想家、政治学者の文献を読んで保守的な人間になるというよりかは、ミリタリー的なゲーム、アニメから極右思想(排外思想)を自認するようになるケースが多い。何かしらの、イデオロギーの理解、それに基づく戦略性がないのである。それゆえ、本能的に、感情的に発言する場合が多く、流言にも流されやすいことから、論理的にリベラル、極左に打ち負かされるのである。
この状況に関して、右辺は憂慮しており、サブカルの排除を前提とした新時代を見据えた極右思想の早期的確立を主張している。また、感情に流されることなく、冷静かつ冷徹、ずる賢くリベラルや穏健的な保守、冷笑主義者を打ち負かす完全な戦略性も必要としている。
本著は最終的に、イデオロギーにおけるサブカル化の完全な排除のため、極右と極左は共闘すべきであるという衝撃の内容で締めくくられている。なるほど、政治学者アイゼンクのいう硬い心性を持つ両者は相いれやすいかもしれない。この「硬い心性」の同盟をもってして、マイルドで退廃的なサブカルをイデオロギー世界から守る強い連帯となるであろう。
本著が出版されたのちに、大反響を呼び、共産党と右辺の国家統一党はサブカルの排除に関して連携を模索することになった。