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ホラー・ナイト 1  作者: 敦子ちゃんp
4/4

またまたまた文字数が、増え過ぎちまって「灰色の男」

 



 愛子は放課後 校舎の横を流れる神崎川の堤防のベンチで、学校の売店で買った、売れ残りの お握り2個と、ペットボトルのお茶で遅い昼食をとる


 昼休みは、何故か胃が食べ物を受付ない、時々 保健室で横になる


 そんな ワガママが効くのも幼稚園から大学まで通した母校だから



 あの日から3週間、

彼女は自宅療養して


そして昨日、ようやく現場に復帰


 一時は退職も考えた


 が、復帰した日の朝

生徒の代表が教壇に立つ彼女に、花束を送ってくれた


その子の目には、一杯の涙


 辻本先生から、ある程度の話を聞かされていたのだろう


その子は右手を、差し出し


「大塚先生、これからも……」


 後は、言葉に成らなかった




 ここには、わたしの為に泣いてくれる子供達がいる


そう想うと、退職は切り出せなかった





 神崎川の河原は、神女のクラブ生達のマラソン・コースだ


走る生徒が、愛子を見付けると、手を振り掛けて来る


 「大塚先生だ!」


 「愛子先生、可愛い!」


 「愛子先生、彼氏 来るの待ってるの?」


 「コーラ! お前ら

 真面目に走れ」


チャリンコで並走するコーチが、怒鳴る



 あの子達を見てると、

 愛子は自分が酷く歳を取った

 気がする


 生きる希望に、光輝く子達


自分もあの頃は、あんな風に輝いていたのだろうか




  以前は、そんな事

 考えた事もなかったのに


 今は、地の奥底から延びて来た

細い手が、自分の足首を確り掴み

歳月を重りにして、わたしを地中に引きずり込もうとしている


そんな幻想が、絶えず頭に浮かぶ


 あの日、あの時


《お前を殺す》あの呪いの言葉を

見た瞬間、愛子の世界は一変した



  *****



  あの時


 唄が聴こえた


最小限に絞られたボリューム

でも、頭の中にハッキリ聴こえた



五音階のグレゴリオ聖歌みたいな

単調なリズムの意味不明な言語の唄


 (愛子、教えてやろう

 その言葉はネ、

 古代サンスクリット語さ


宇宙のリズムを唄っているんだよ


 リフレインはね


 愛子を殺す、

 愛子を殺す、

 愛子を殺す、)


 


 「止めて! 」


 (嘘だと思うなら、

 窓の外を見てご覧よ)


ソッと、窓辺に近付き

カーテンの隙間から、外を覗く


 そこは、何じゃコリャー!


  何じゃコリャー!


 外の世界は、完全に

 松田優作の、何じゃコリャー!よ


 (アノー、古過ぎるんですけど)


古かろうが、新しかろうが

コレは松田優作の

 何じゃ、コリャーよ


 ソレしかない


分からなければ、検索して動画見て

絶対笑うから


 《待ってくれよ、会田

 オレは、死にたくないよ》


 アッ!笑ったらダメだよね



 窓の外の世界は、紅蓮の炎が空を覆い


 家の周辺は、

 砂漠と化していた


 「何じゃコリャー!」


そして庭には、無数の手にマサカリや斧をもった、上半身裸の汗光りする筋肉質で、ピカピカ頭の、巨漢が徘徊しながら、拳を突き上げ、怪奇なシュプレヒコールを叫んでいる


「愛子を、楽しみ、愛子を殺す

 愛子を、楽しみ、愛子を殺す

 愛子を、楽しみ、愛子を殺す」


 「何じゃ、コリャー!」


それに、何故か犬もウロウロしてた

(ピカピカ頭のペットかな?)


ボロボロの汚い犬で、何故か顔は

オジサン


 可愛くネー!


 「何じゃ、コリャー!」


 (Oh! あれは昔懐かしい人面犬

ではないか


お前ら、最近街で見かけないと思ったら、こんな世界を生息圏にしてたんだね)


 ……そして、砂漠ではニョキニョキと生えた砂柱が、小太りのオジサンと化し


 「何じゃ、コリャー!」


 (うるさい!)


 すいませんでした


でも、小太りのオジサン達も我が家を目指し全速力で駆けて来る


あのオジサン達もワタシを楽しみに来るのかな


 ここで愛子は、完全にOUT


ベッドに胡座(あぐら)をかき、頭からスッポリ毛布を被り、静かに涙を流し、ママに電話する


 「ママ、帰って来て」


(アチャー!ママより先に警察だろ)


9ミリ口径の拳銃と、警棒、催涙ガス弾で、あのモンスター共に勝てる?


 託すなら、自衛隊よ


(だったら、自衛隊に電話しろよ)


だって、自衛隊の番号しらないもん


 (アチャー!)



   *****




 ママが、帰って来るまでアタシ

ずっと泣いていた



   *******



 もうすぐ春のゴールデンウィークなのに、肌寒い南風が強く吹き、川面に、さざ波を立ててる


黄昏の迫る空を、幾つもの千切れ雲が、恐ろしい速さで、翔んで行く


 愛子は、涙を流す

何て isolationなのかしら


(孤独て? お前には、ママがいるじゃない)


ママは、保護者よ

でも、ワタシの心の保護者じゃない


アタシの心はネ、道に倒れて

泣いてるの


(中島みゆき の歌かよ)


こんな時、大きな肩に顔を埋めて

泣きたいの、そして震える体を

抱き締めて欲しいの


 (発情期だよ)


 え! 何?


(それとも解離性障害(ヒステリー)かな)


 コラー!


 (すいませんでした)



    *****



 でも、今も考える

アレて何だったのだろう


ママに、アノ話をすると

怯えた目をして


 「何でも無いから、忘れなさい」て、 ママも、見たんだ


あんなの、忘れる分け無いでしょ


現実的事象では無かった事は理解している、あれは幻想だったの?


 でも、ママも見たなら

 共同幻想?


大学の図書館で調べた、あの症状と一番合致するのは、統合失調症だ


でも、二人同時に発症するかな?




 カバンからスマホを取り出し


    ジッと見る




 あのサイトが、怨念(おんねん)に固まる幻覚と云う弾丸を私達 親子の頭に撃ち込む引き金を引いたのだろうか




Offに したままだった電源を

ソッとOnにする


 パスワードで、ロック解除

 第一ページの画面


電話の着信歴と、メールの受信歴

は共に100件以上


当然だよネ、3週間も留守にしてたんだもん、何かうれしくて、涙出た


アタシ、(つな)がっている!


みんなアタシを、見捨てて置き去りにしてない


 メール受信ボックスから開く


 一発目は


〔どした?どしたのよ?何で返事くれないの?何で電話にも出ないのよ?〕


 結衣だ、東京の大学に進み今は

シャーブに就職して

長野支社に勤務



高等部の卒業式で、ソバージュを金髪に染め 皆の度肝、抜いたよネ


怖い顔して(にら)んでる

生活指導の先生の前を

卒業生には、校則 (およ)ばないよネ、て、

笑いながら、通り過ぎた


メチャ カッコ良かった


ユイ!目眩(めまい)がする程

綺麗で、秀才だったネ


 高校時代 一番の親友



 二発目(二信目)は、リサ


リサは、あまり綺麗じゃない

と、云うより、

かなり綺麗じゃない


 同僚


 教育学部卒だから、当然 本教員


 妙に、上から目線

 妙に、ムカつく


〔アイ、お前のスマホ 腐ってるぜ

ソレ捨てて、新機種に変更しろよ

 5Gとかによ〕


 やかましい!ブス!


 こんなの、ムカつく、

通り越してる、


 赤尾リサ


 ブスの性悪女


 お前は、着信拒否

     受信拒否設定だ


 要らないや




 後は、メグに辻本先生、サリーちゃん(インド人なんだよ)に、

よっ子に、ふう子に、すみれ、


 そしてスターシァ様からも


スターシャ・ミゾロブイッチ


 私達 神女83期生の

ハー・マジェステイ 女王陛下


何人も、(あらが)う事の出来ない

   輝ける太陽


 彼女 ロシア人


ロシア貴族の末裔(まつえい)


 ロマノフ家の血族


  (ウソー! それマジなん?)


 マジ!


 あの()の美しさは、

別格、まるでギリシャ彫刻


可愛いとか、綺麗なんて言葉じゃ

表現出来無い範疇(はんちゅう)


 その美は、perfectleyで

      abusoutly


背中まで伸びた銀髪を、無造作な

ボニーテールにして


透き通るような白い肌


はしばみ色の瞳を縁取る

ナチュラルな眉


鷲のくちばしの様な、

細く鋭い鼻梁(びりょう)

強く結んだ薄い唇


 おまけに、超秀才

全国模試で、驚異の偏差値75を、

叩き出したよね(東大入れるよ)


アタシ、あの娘とキスした事が有るんだよ


学園祭の演劇

チエーホフの「かもめ」で

スタ嬢様は、

モチロン主演のニーナ役


アタシは、

ニーナの恋人役トレープレフ

(スタ様の、オファーで抜擢されたの、何で?

演劇経験なんて、0だったのに)


ラスト、悲劇的な死を迎える

トレープレフの自殺場面は、

練習中も、多く子が泣き出し

本当は、禁じ手なんだけど、

割愛した


晩秋の庭園を、

ニーナとトレープレフは、

手を繋いで散歩する


「私が、心から愛したのは、

トリゴーレン様」


「そんな、事、知っていたさ」


それでも、二人は見詰め合い

抱擁(ほうよう)して、

口付け


そして、劇場の全照明は、落とされ


 ズドーン!


トレープレフの拳銃自殺を暗示させる銃声が、響き渡り、

劇は幕を閉じる


 「ブラボー! 」


観客の多くが、立ち上がり

スタンデング・オベーション


 劇は成功だった


後に父兄達から、高校の文化祭で

これ程、上質な観劇が出来るとは

と、コメントが多数寄せられた


 


 アタシ、スターになる!



 でも、違うよネ

良く考えたら


アタシ、恒星(スター)

じゃないわ、スターシャと云う

太陽に、照らされて、

輝いただけの月よ


 アタシには、芸能やマスコミ

なんて、無縁よ 


そんな世界、目指してる子も

いるけど


アタシには、無縁、興味無いわ



闇の中、鳴り止まない喝采


周囲では、カーテン・コールの為に

スタッフ、キャスト一同が整列する気配、さあ私達も整列しなきゃ


お客様達に、ちゃんとご挨拶して

お礼が、云いたいの


スタ様、手を離して


 でも、スタ様は腕に力を入れ

益々、愛子を

強く抱き締め

頬や、耳朶(みみたぶ)や首筋に唇を()わし……


チョッと! 何してんですか?


ロシア女は、闇を良い事に

服の上から、愛子の胸を(つか)み、優しくローディング


再び、唇を襲い、強く吸い、舌を(から)めて来る


何コレ!何なの?ペッテイング?


 アタシ、凌辱(りょうじょく)されてる


そう、コレが、アタシを選んだ理由

目的だったの?


劇場に、明かりが灯る


強烈な、スポット・ライトが私達を照らし出す


何事も無かったかの様に、前を見て微笑む、スターシャ


 怒りと屈辱(くつじょく)性的(セクシャル)な興奮が倍加させ、全身が震え足元から崩れる所をスターシャに、抱き止められ、再び女王の腕の中へ


 止めてよ!


でも、眼が合ったの


スターシャは、

口元に薄い笑いを浮かべ

「堕ちたでしょ?」

眼で、話掛ける


アタシ、(うなず)いて


 陛下、我が身を捧げます



 (エーッ! マジ! ウソー!

これだから、女は分からんぜ!)


 何よ、アンタも女じゃない


 アタシ、爆発した感情が押さえ切れず、スタ様の腕の中で、すすり泣いて甘えたの


 スタ様は、アタシの耳元に

口を近付け(ささ)やく


「君は、可愛い声して

 ()くんだネ」


 ズキューン!


その日、二発目の銃弾が、愛子のハートを撃ち抜き、ロシア女の掌中(しょうちゅう)に転がり堕ちる




 スターシャ様


(わたくし)を、もて遊んで下さいませ


(わたくし)を、汚して下さいませ


  *****


 アタシ、スターシャ様の後宮(ハーレム)に、輿入(こしい)れしたの


 ヒト呼んで神女大奥


そこは、厳格な階級が有り


戒律と統制


虚栄と嫉妬と陰謀と策謀が、渦巻く

女の(みに)くさを見事なまでに具現化した世界


 アタシ、毎日泣いてた


下級生に土下座させられて、頭を

ローファーで、グリグリされた


お姉様から、頭が痺れる程強烈なビンタを喰らい、鼻血出た


私、耐えたわ、痛みにも、苦しみにも悔しさにも


 だって、アタシには、心の灯火

スターシャ様が、いるもの


 そして、その日が来たの

苦節10年、待ちに待って

待ち望んだ日が

 



















昼休み、アノ()

購買部に、買い物








 
















 フン、でもネ あの後

 彼氏が出来たの


親戚の伯母さんの紹介で、お見合い


彼氏、デート中 ワタシの胸や腰ばかりチラチラ見てる


 (ソイツ、大分 貯まってるぜ)


だから、3回目のデートの時


 あげちゃったの


 (ヤッパり 発情期じゃネェか

仕事サボッて、そんな事してたのかよ)


 何よ、何も知らないクセに だけど、






 


 















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