文字数が、増えすぎたので章を変えたの。サブタイトルは、「灰色の男」のままだよ。
「愛子! 」
玄関から、廊下を抜け
我が家は、不気味な
静寂が支配する
(ここに、命 有る物は、ない
有るのは、死のみだ
死と、怨念の具現化した
モンスター達)
黙れ!
子供部屋への、階段を上がり
扉の前に立つ
「愛子! 」
「愛子! 居るなら返事
しなさい!」
でも No Reply
(部屋の中で、血塗れの我が子が、白目を剥いて)
お前、殺すぞ!
洋子は、息を整え、覚悟を決め
「愛子、入るネ」
扉を開け、眼が闇に慣れ……
何かいる、娘のベッドの上に
息を潜め、新たな獲物を狙う
捕食者が
バカだよ、私、どうして、
武器を持って来なかったの?
台所の、刃物とか、
傘だって、良いじゃない
洋子は、震える指で、
灯りのスイッチを入れる
と、ベッドの上に、
頭から毛布を、被った愛子
洋子は、駆け寄り娘を抱き締める
「お前、一体、どうしたの」
「ママ、ゴメンね」
愛子は、茫漠とした眼で、虚空を見詰めている
この子、壊れている
娘の肩を、掴み揺する
「お前、誰かに、何かされたの?」
部屋を見渡し、娘を見るが、
異常は無い
「もう、いいの、
ママが、帰って来てくれたから
もう、いいの」
愛子は、そう呟やくと
顔を落とし、軽い寝息を立てる
洋子は、娘の頬に強いビンタを張る
愛子は、顔を押さ
「酷い事、するネ」
泣き出した
「ゴメンよ、ママ心配だったの、
お前を失くす気がして」
洋子は、再び娘を抱き締め、
強く抱き締め
そうだ、娘を取り戻したんだ、
それだけで、いいじゃない
「ママ、なんでも、ないの、
ネットで、怖い事 言われて
それが怖かったから」
?
「ママ、ワガママ言って
ゴメンね、同窓会 台無しにして
ゴメンね
ワタシ、お風呂に入りたいな
ワタシ、お着替えするから
ママ、お風呂の準備してよ」
何よ、コレ この子、
幼児帰りしてるじゃない
あの連中だな、
家の回りをウロチョロしてた
ピカピカの お化け共
私の子供に、何したのよ
ブチ殺してやる
アイツら皆、ブチ殺す
(だから、アイツら死人だって)
「用意が、出来たら呼ぶから着替えたら 休んでいなさい」
洋子は、部屋の窓の施錠を確認
「ウン、今夜は一緒に入ろうネ」
そう言って子供見たいな、顔して笑っている
「お前、一体……」
洋子は、慄然とした想いに血の気が引く
愛子は、自我の芽生えの早い子だった、小学校に上がった時
第一反抗期
「私、風呂は一人で入る」
キッパリ言った
子供が、成長するって
親から一歩一歩 遠ざかる事なんだ
嬉しさより寂しさ
なのに今、この子は……
「待ってなさい」
震える声で言うと、子供部屋の扉を閉め一階への階段を降りて行く
*****
玄関から表に出るが、そこには何もいなかった
殺してやろうと思ってたのに
(だから、もう死人だって)
夜明けは近い、奴等の就寝タイム
墓場に帰って行った
家の周囲は、強い風が
春先とは、思え無い程
冷たい風が
ゴー、ゴー、と音を立てて
吹き荒れてる、風を閉ざす為
洋子は扉を閉める
******
ルルルルル
長い着信音の後、明美は ようやく
電話に出た
「モ、ジ、モ、ジ」
声が、渇れ疲れてる
田崎と、何発ヤッタんだ
まあ、田崎はジジイだから
2発が、限界かな
でもジジイは、しつこいからな
延長、延長で3時間
ソープランドなら、5万請求される
でも、老人のラブて濃厚なんだ
この世への、未練を
打ち込んで、来るから
「明美、なにやってたの! 」
「何よ、その言い方、寝てたに決まってるでしょ、明日早いんだから、私、幹事なんだから」
?
「ゴメン、気が立ってたから、
で田崎先生、怒ってなかった
(フン、自供しろ)」
「それが、部屋にいなかったのよ、それに寺本先生も
あの二人校長と、教頭だったでしょ、一緒に新地にでも飲みに行ったんじゃないの」
?
だって、センセとアンタ……
(お前、親友より
化け物の言葉信じるのか?)
「で、愛ちゃん、どうだったの」
「それが、よく分かんないのよ、なんかネットで、嫌な想いしたとか、なんとか……」
「ネット・バッシングね」
「なんだ、ソレ?」
「まあ、私達の頭では、
理解出来ないわ、
アレ、怖いんだ
ほら最近 俳優の**君や
歌手の※※ちゃんが自殺したのは
ネット上で、叩かれたのが、
原因だって」
「ワイドショーで見たな
そんなの、無視すれば て
思った」
「だからネ、私達はアナログ頭
あの子達はデジタル頭
脳の構造が違うのよ
アンタは、インターネットて何に使う」
「化粧品の通販とか、旅行の予約とか……位かな、ニュースも見るけど、老眼でしょ、字が小さくて辛くて」
「だよネ、
あんた この世から
ネットが消えたら どうする」
「消えたらって、別に
メディアなんて、幾らでも有るじゃない、新聞とか、ラジオも、テレビも
困らないよ」
「だよネ、私達は、全然困らないよネ
でも あの子達は違うの
以前 そんな話し あの子達としたわ
(明美は、大学卒業後 母校神女(神崎川女子校)で教員を努めてる、恐らく校長まで登り詰めるだろう
愛子が、講師に採用されたのも明美の計らいが、有ったからだ)
SNSが、この世から、消えたら
生きて行けないって
ネットて、あの子達にとって、空気や水と同じ」
「何でよ?」
「だから、私達には
理解不可能だって、
あの子達の頭の中では、バーチャルとリアルの世界が共存してるの、どちらも同等の世界なの
あなたは、人に石を投げられたら、どうするかな」
「投げ返すよ、何にしやがんだ!て、ぶん殴ってやる」
「でも、何千、何万の人が一斉に、投げて来たら
死ぬよね
ネットの怖さは そこよ」
ソレ なんとなく、分かるな
「で、アイちゃんどんな様子?」
「ソレが、完全に茫然自失、レイプされたのかと、思った」
「ソレ危険ね、危険な兆候よ、言っとくけど絶対に愛ちゃんから、目を離したらダメよ」
入浴後、愛子は髪を乾かすと、当然の様にママのベッドに入って来た
*****
愛子は、ベッドの中で、ママの乳房に顔を擦り寄せ甘える
まるで、子猫みたいに
もう、いい加減にしてよ
アンタ、二十歳越えてんのよ
洋子はもう一発、ひっぱたいてやる、と、体を起こした時 見た
愛子は、親指をシャブってた
チュー、チュー、音を立てて
幸せそうな顔で、自分の親指を
吸ってた
その姿は、遥か遠い記憶の中の
幼かった娘の姿その物だった
ママ、忘れていたよ 愛子
お前、還って来たんだネ
小さな子供に還り
ママの元に
良いよ、ママ受け入れるよ
小さかった頃のお前はネ
まるでダイヤモンドみたいに
キラキラしてた
自慢の子供だった
お前を連れて歩く時
いつも、「あの子、可愛いネ」
て、声が聴こえた
好きなだけ、甘えれば良いい
でも、このまま愛子が
ダメになったら
いいさ、私がいる
この子の側に
私がいるから
私が、必ず お前を取り戻す
to be contenued
列車の発車を告げるベルと、共に扉が閉ざされる
アタシは、座席から立ち上がり男の前に、顔を晒してやった
男の顔に浮かぶ、驚きと怒り
ケッ、へ、へ、へ、
バーカ、テメエ見たいなキモいオヤジが、イッチョマエに、アタイみたいなカワイイ娘、追いかけるんじゃネェ
しかし男は、ゾッする程の憎しみを込めた眼で、アタシを睨んでいる
そして、笑った
顔を歪めて、吐き気がする程 醜い笑顔
そして、体を大きく反らせると
いきなりガラス扉に向かって、頭突した
バーカ、本当にバーカ、強化ガラスが、オッサンの頭突きで、