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第六話 試験を終えて

「だからあいつが悪いんだ! 学校から追い出すなら私じゃなくてあいつにしろよ!」


「はあ、何を言っているんですか? この学校は生徒を追い出すなんてことは出来ませんよ。そんなこと、あなたならそんなことは知っていますよね? このルールは、あなたのお父さんが勇者様と一緒に作ったものなんですから」

 くそ……余計なものを作ってくれたな……あの糞親父。


「も、もちろん知っている! なら、私がここを出ていく必要はないんじゃないか?」


「それこそ何を言っているんですか? 流石に今回の問題は私も庇えませんからね?」

 馬鹿にしたような目で校長が俺のことを見てくる。

 くそ! いつも親父にペコペコしていたくせに……このハゲが!

 どうしてこんな時ばかり口が回るんだよ!


「わ、私が何をしたと言うんだ?」

 抑えるのだ。今、ここで怒っても何も解決しない。


「はあ、約二年間、二年間も勇者様のお孫さんを授業に意図的に参加させなかった。そして、先程……姫様を泣かせたと報告がありましたが……普通なら殺されていてもおかしくありませんよ? そんな人を学校に置いとけるはずないじゃないですか。はあ、わかったら早く荷物をまとめてください」

 俺が殺される!? そんなバカな!


 い、いや、確かに……姫様を泣かせてしまったんだった……。

 噂では……現皇帝は一人しかできなかった娘を凄く溺愛しているとか……。

 もしかすると……不敬罪で本当に殺されるかも……。


「だ、だから私は悪くない! 全てあいつが悪いんだ!」

 そうだ! 全てあいつが悪い! 俺は悪くないんだ!


「はいはい、それは後で騎士に捕まった時にでも勝手に訴えてください」

 騎士だと? 俺は本当に捕らえられてしまうのか?


「く、くそ……」


「早くここを出た方がいいですよ。私が騎士を呼んでおきましたから」

 なに!? 騎士を呼んだ?


「お、おまえ! 親父の恩を仇で返すのか!」

 散々親父に媚を売って、お前が独力ではなれないような校長にさせて貰ったんだろ?


「は? 何を言っているんですか? あのお方でも、この状況ならあなたのことを学園から追放するんじゃないでしょうか? それに、あの人への恩はこの学校を守ることでこれからも返していきます。ですので、心配しなくて大丈夫ですよ。あなたを庇っていたのは、単なるおまけです」

 俺がおまけだと?

 俺が親父のおまけだと言うのか!?


「ふ、ふざけるな!」

 俺は俺なんだよ! 親父のおまけなんかじゃない!

 もう怒った! お前なんか殺してやる!


「おっと、私に攻撃している暇なんかあるんですか? もうすぐ騎士が到着するとおもうんですが……」

 俺が魔法をハゲに向けると、ハゲはニヤニヤしながら俺に忠告してきた。


「く、くそ!」

 そうだった……こいつに構っている暇なんてないんだ。

 急いで学校から出ないと!


 ハゲに当てようと思った攻撃魔法をドアに向けて撃ち、部屋を飛び出す。


「いたぞ! 捕まえろ!」

 通路に出ると、廊下に騎士がこっちに向かって走っていた。


 う、嘘だろ?

「ほ、本当にあのハゲは騎士を呼んだのか?」

 そんなことを言いながら焦りながら、夢中で走る。


「逃げても無駄だぞ! どうせ俺たちが追いつくんだからな。痛い思いをしたくなかったら今すぐ止まりな」

 くそ……あいつらの言っていることは正しい。

 普段、体を鍛えていない俺が騎士から逃げられる筈はないんだ。


 でも、捕まったら殺されるかもしれない……。

 なんとかして逃げないと。


 そんなことを考えていると、目の前からも騎士が現れた。

「くそ! こうなったら!」


 魔法で壁を壊して、外に飛び出した。

 高さは三階だ。風魔法を使えばどうにかなる。



SIDE:レオンス

「ただいま~」

 面談も終わり、やっと帰ってくることが出来た。


 帰るなり、ベルが玄関でスタンバっていた。

「お帰りなさいませ。三年生初日はどうでした?」


「それが、急にテストになっちゃってさ……いろいろと大変だったんだ~」


「それは大変でしたね。手ごたえはどうでした?」


「それが、さっき先生に聞いたんだけど今のところ一位だって」


「本当ですか!? 流石レオ様です!」

 俺が一位だと知ったベルは、自分のことの様に喜んでくれた。

 そんなに褒められると照れちゃうな。


「ありがとう。それじゃあ、着替えたらご飯……にはまだ早いから何かして時間を潰すか」

 あ、そういえば、ヘルマン達と勉強会をやるんだった。

 俺だけ残されちゃったから帰る時に誘えなかったな……。

 まあ、明日からでいいか。


 さて、これからどうやって時間を潰そうかな……。


「ベルは何かやりたい事ある?」


「え? 私ですか? えっと……特に……」

 うん……何をやろう……。


「どうしようかな……散歩でもする?」


「え? 外に出ても大丈夫でしょうか?」

 どうなんだろう……?

 ダメとは言われていないから、大丈夫じゃない?


「まあ、夕飯までに帰れば大丈夫でしょ。それじゃあ、ベルも着替えて外に出ようよ」


「そ、そうですか……って、私も着替えるんですか?」


「うん、外を歩くのにメイド服で歩くのは目立つでしょ?」

 子供がメイドを連れて歩いていたら目立つよ。


「そんなことはないと思いますが……それに、私も外に出る必要がありますか? 私、残って家事でもして時間を潰していますよ?」

 まったく何を言っているんだ……。


「俺はベルと一緒に散歩したいの。だからいいでしょ?」


「わかりました……少しお時間をください」


「やった~」

 よし、俺も着替えるか。



 それから少しして

「レオ様、着替え終わりました」


「おお、可愛い!」

 いつものメイド服も可愛いけど、私服姿もいいな……。


「本当ですか? ありがとうございます!」

 服を褒められたベルは、嬉しそうに微笑んでくれた。

 うん、めちゃくちゃ可愛い!


 ちなみに俺の服装は、冒険者風の格好だ。

 だって、貴族の格好なんてしたら目立つだろ?

 うちの寮が外出いいかどうかわからないし、一応ね?


「それじゃあ、外に出ようか」

 ベルの手を握って、転移を使った。

 転移したのは、帝都の路地裏だ。


「それじゃあ、帝都を散策しようか。何処か行きたいところある?」


「いえ、特にありません。レオ様はありますか?」


「うん……あ、そうだ! 十歳になったことだし、冒険者ギルドにでも行ってみるか」

 前から気になっていたんだよね。

 十歳になったら行こうと思っていたんだっけ。


「冒険者ギルド? 登録でもされるのですか?」


「うん、暇な時にでも冒険者をやろうかなと思ってね」


「レオ様はやりたい事がコロコロ変わりますね。魔法具職人に弟子入りしたと思ったら……いつのまにか金儲けに手を出していましたし」


「そ、それは……流れでそうなっちゃっただけだよ。まあ、若いうちにいろいろと経験しておいた方がいいと思うよ。うん」

 それに、何か挑戦していた方が楽しいじゃん?


「そうですか。私は、レオ様のことを応援し続けますよ」


「ありがとう。でも、今回はベルも一緒だよ?」


「え? 私も?」


「うん。だって、ベルを一人にしたくないし」

 それに、ベルと一緒に冒険するのは楽しそうだからね。


「え? 本気ですか? 私戦えない……わけではないですが……」

 うん。ベルは獣魔法と無属性魔法があるからね。

 じゃなかったら、一緒に冒険者になろうと思わないよ。


「大丈夫だって。休みの日にちょっと体を動かす程度だから」

 あくまでも、遊び程度だからね?


「わかりました。でも、レオ様の基準で私を見ないでくださいよ? 私、レオ様と比べたら凄くか弱い女の子なんですからね?」


「わかってるって。それに、大人になるまで魔の森に入らないって母さんと約束したし」

 今のところ、約束を破るつもりはないんだからね?


「ほら! 基準が魔の森なのがおかしいんですよ! そんな場所に一般人である私を連れて行かないでください!」

 そ、そんなに怒らなくても……。


「ごめんって。最初はスライム退治とかにするから……ね?」

 いいでしょ? ベルと一緒がいいんだ。


「それなら……」


「やった~!! じゃあ、行こうか!」

 遂に俺も冒険者だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔の森に「入らない」なら、転移で「もともと魔の森にいた」ことにしてしまえばいい!w
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