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第三話 抜き打ち試験

 今日は三年生初日だ。

 寮生活が始まる以外には、三年生になったからと言って何か変わることもないだろう。

 まあ、来年からはクラス替えテストがあるから、それに向けて頑張り始める人は増えるだろうけどね。

 俺は、テストがあるからと言って何かするわけでもないから、今年もいつも通りだろう。


「行ってくるね」


「はい、今日も一日頑張ってください」

 昨日、あれだけ大泣きしていたベルは、すっかり元気になってくれた。

 こうして、笑顔で送り出されるとたまらないな。


「ありがとう。頑張ってくるよ」

 まだ見ていたいけど……我慢して学校に行かないと。

 諦めきれない俺は、ベルに手を振りながら出来る限りゆっくりとドアを閉めた。


「へ~」


「ん?」

 振り返ると、ニヤニヤしているフランクが立っていた。


「レオの周りには常に可愛い女子がいるね」

 そ、そんなことないぞ!

 俺が仲良くしている女の人は……シェリーにリーナ、ベルにエルシーさんの四人くらいだぞ?


「フランクだって専属メイドがいるでしょ? どうせ、可愛いんだろ?」

 俺と同じ公爵家のメイドなんだから、きっと可愛い子に決まっている。


「いやいや、僕のメイドは……」


「坊ちゃま! 忘れ物してますよ!」

 フランクが何か言おうとすると、フランクの部屋から一人の女性が飛び出して来た。


「え? あ、うん」


「いつも言っているじゃないですか! ちゃんと確認してから家を出ることって! あ、坊ちゃまのお友達ですか? これからも坊ちゃまと仲良くしてあげてください。それじゃあ」

 たぶん、フランクのメイドだと思われる女性は、一方的に喋って行ってしまった。

 なんだ、美人なメイドさんじゃないか。


「いつもあの調子なんだ。俺が小さい頃からずっとお世話してるから、お母さん以上にうるさいよ」

 なるほど。お母さんの代わりみたいなものなんだな。

 だから、本人からしたら鬱陶しいのかもね。


「なるほど。でも、楽しそうだ」


「楽しいどころか疲れるから!」


「ハハ、やっぱり面白そうだ。今度、二人のやり取りを見せて貰おうかな」

 フランクがメイドさんに怒られているところを見てみたいな~。

 きっと、さっきの様子からして、フランクはさっきの女性に頭が上がらないんだろうな。


「面白くないから! それに、絶対に見せない!」

 今度、是非とも見せて貰おう。


 それから、フランクのことをからかいつつ、教室に到着した。

「あ、師匠! おはようございます!」

 いつもの様に教室に入ると、真っ先にヘルマンが挨拶をしてきた。


「うん、おはよう」

 まだ、リーナとシェリーは来てないみたいだ。

 教室の中を見回して、二人が来ていないことを確認する。


 周りからの目があるから、教室でそんなに長く話すことはないけど、朝の挨拶は忘れないようにしている。


 それから、フランクとヘルマンと一時間目が始まるまでの時間を喋りながら潰していると、先生が慌てながら入って来た。

「ごめん! 俺もさっき知ったんだが、今日試験だった。成績には関係ないからクラス分けテストの練習だと思ってやってくれ」

 先生は、それだけ言って出て行ってしまった。


「初日からテスト? しかも抜き打ちテストなんてひどすぎるだろ」


「まあまあ、皆同じ条件なんだから」

 皆、今日知ったんだから。


「そうだけど……心の準備くらいはさあ?」


「どうせ成績に入らないんだから、気楽にやろうよ」

 いい点数と取っても、取らなくても、何も変わらないんだからね。


「そうだけど……」


「今日も一日頑張るぞ!」


「そうだな」

 あれ? いつもなら、「おう!」って元気な声が聞こえてくるはずなんだけどな……。


「ヘルマン?」


「テスト? テストだって? どうしよう」

 ヘルマンが頭を抱えてぶつぶつと呪文を唱えていた。


「おいおい、大丈夫か? 今日は成績に入らないぞ?」


「え? そうなんですか? やった~!!」

 成績に関係ないことを聞いて、ヘルマンはコロッと元気になってしまった。

 おいおい、気持の切り替えが早すぎるだろ。


「お前、相変わらず勉強しないんだな」


「だって……勉強している時間あったらもっと強くなれるから……」

 お前は、とことん脳筋を目指しているんだな。


「でも、勉強しないとクラス分けでレオと離れ離れになっちゃうぞ?」


「……え? そうなんですか?」

 フランクの言葉に、ヘルマンはキョトンとした顔をした。


「良く考えろ? レオの成績が良いことは知っているよな?」


「いつもテストが終わると余裕な顔で百点を取っています」

 え? 俺ってそんなウザい奴だったの?

 俺、余裕な顔なんてしてたかな……?


「じゃあ、お前の点数は?」


「あ、あ……今日から死ぬ気で勉強します。もう、今日は帰って勉強しようかな」

 ヘルマンは自分の状況を悟ったらしい。

 真っ青な顔をして、教室から出ていこうとした。


「待てって! 出来なくても今日のテストを受けてどんな問題が出るのか知っておくぐらいしておかないと」

 俺は慌てて、捕まえてテストを受けるように説得した。


「そ、そうですよね! 流石師匠!」

 テンションの上がり下がりが激しいな……。


「今日の一時間目は何だっけ?」


「算数だ」


「さっそく座学のテストか。頑張るぞー」


「余裕で羨ましいな。全く」

 まあ、今更小学生レベルのテストをされてもねえ?


《一時間後》


「どうだった?」

 テストが終わった俺は、すぐにフランクとヘルマンのところに出来を聞きに行った。


「そこそこ出来たと思う。レオは……いや、どうせ余裕だからやめておこう」


「余裕だった! って聞かないのかい。ヘルマンはどうだったの?」


「師匠……来年から違うクラスになっても仲良くしてくださいね?」

 ヘルマンが、今にも死んでしまいそうな弱々しい声で頼んできた。

 お前、始まる前の元気はどこ行ったんだ?


「まだ気が早いって! これから一年勉強すればなんとかなるから!」


「でも……」


「わかった! これから毎日勉強会やるか。どうせ寮で暇だろうから。場所はフランクの部屋で」

 うん、これなら問題が全て解決されるな。


「はあ? レオの部屋でやれよ」


「いいじゃん。どうせ広いんでしょ?」


「いや、レオの部屋と変わんないから」

 まあまあ、そんな細かいことは気にしなくていいから。


「まあ、場所は置いといて、これから俺が勉強を教えれば一年でなんとかなるでしょ」

 小学生程度の内容だから、難しい内容でもないしね。


「師匠~~!! もう、一生師匠に尽くします」

 ヘルマンは泣きながら俺にしがみついて来た。


 相変わらず重いな……。

 他のことで気を逸らすか。


「あ、次のテストは、剣術だからヘルマンの見せ場じゃないの?」


「あ、そうですね! 剣術のテストで二百点ぐらい取ればなんとかなるかも!」

 二百点って……全教科百点満点だからね?


 ******


「それじゃあ、剣術のテストを始める。内容は簡単。ここにいる先生たちに相手して貰って、点数をつけて貰え。それじゃあ、順番に挑戦しな」

 へ~本番は実戦形式なんだ。


「じゃあ、僕行きます!」

 お、剣術で挽回しないと点数がヤバいヘルマンが、トップバッターに名乗りをあげた。


「おお、元気がいいな。遠慮なくかかって来い!」

 たぶん、他の学年の先生だろう、髭を生やした三十歳くらいの男の人が、ヘルマンの相手だった。


「はい。全力で挑むんでいい点数をください」


「ハハ、流石にそれは結果しだいグハ!」

 先生が言い終わる前に、ヘルマンの剣が腹に直撃した。


「あ、すみません! 遠慮しなくていいって言われたので」


「な、なに! これくらい大したことないさ! さあ、かかって来い!」

 先生は、すぐに立ち上がり構え直した。

 おお、流石剣術の先生だ。

 打たれ強さも見習わないとな。


「はい、行きます!」

 そう宣言して、再びヘルマンが動きだした。


「よし! グハ!」

 うん、瞬殺だった。

 まあ、ヘルマンに手を抜くなんて考えは存在しないからな。

 うん、仕方ない。


「先生、今の何点ですか?」

 ヘルマンは点数を聞きながら、先生に近づいて行く。


「ひゃ、百点だ……」

 もうやめてあげて!

 先生、ヘルマンのことを凄く怖がっているから。


「え~! 二百点「すみません! 次は僕がやります!」」

 もう、これ以上やらせたら面倒だから、俺が間に割り込んだ。


「あ、師匠! 待たせてしまって申し訳ございません。今すぐ退きます」

 ふう、なんとか諦めてくれたようだ。


 よし、俺はほどほどで頑張るぞ!

「ちょっと待ってくれ……少しだけでいいから」


「あ、はい」

 まあ、流石に待ってあげないと可哀そうだな。


 それから少し待ち

「よし、大丈夫だ。好きにかかって来い!」

 やっと先生が回復した。


「はい」

 手加減しないと……。

 ヘルマンみたいにはなりたくないので、先生がギリギリ避けられるだろうスピードで攻撃する。


「おお、良い攻撃じゃないか。もっと攻撃してきな」


「わかりました」

 うん、このくらいが丁度いいな。

 これを繰り返していれば、何も問題が起きることなく終わるかな?


 よし、このまま先生にやめの合図があるまでこの調子でいこう。


 《五分後》

「つ、疲れたか?」

 疲れた? 体力がどのくらいあるのかを確認しているのかな?

 まあ、正直に答えておくか。


「いえ、まだ疲れてません」


「そ、そうか……ク!」

 なんだろう……先生の顔が段々険しくなってきてるような……。


「そろそグハ!」

 あ、やってしまった……。

 でも、戦っている途中に集中を切らした先生が悪いと思う。

 うん、そうだ。きっと俺のせいじゃない。


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