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第二話 始まる寮生活

 アレックス兄さんの成人パーティーから数ヶ月が経った。

 俺は二年生が終わり、もうすぐ三年生だ。


 あ、それと、アレックス兄さんが結婚した。

 二人とも凄くお似合いだったよ。フィオナさん綺麗だったな~。

 ただ、結婚式にイヴァン兄さんが参加できなかったのはちょっと残念かな。


 今、イヴァン兄さんは訓練最後の試練で、どこかのダンジョンに挑んでいるそうだ。

 まあ、仕事だから仕方ないし、本人が一番残念に思っているだろうからなんとも言えないね。

 きっと、ダンジョンを討伐した報告を結婚祝いに持って帰って来てくれるさ。


 そんなことを考えつつ、現在俺は寮生活の準備をしていた。


 もうすぐ三年生になる俺は、来月から寮生活だ。

 それで、今日は自分の荷物を寮に持ち込む日になっている。


 家具などは既に置いてあるみたいだから、服や本、俺が作ったガラクタ(魔法具)をリュックに詰めて、荷造りはすんなりと終わってしまった。


「よし、寮に向かうか」

 一緒に荷造りをしていたベルにそう言った。


「はい、どんな寮なのか楽しみですね」


「うん、そうだね。部屋は広いといいな」


「アメリーさんに聞いたのですが、階級ごとに部屋の大きさが違うみたいですよ」

 え? それを言われると複雑な気持ちになるな……。

 きっと、下の階級の人は狭い部屋に住まされるんだろうな。

 まあ、学校に寄付している額が違うからとかなんだろうけど……。


 それから、学校の敷地にある指定された寮に向かった。


「ここが俺の部屋?」

 俺の部屋であろう扉の前でベルに聞いてみた。


「そうみたいですね」

 なら良かった。

 俺の部屋は最上階で、日当たりが良いところだった。


「あ、フランクが隣だ。後で覗いてみよう」

 隣の部屋にフランク・ボードレールと書かれていた。


「お友達ですか?」


「うん、友達みたいな従兄弟だよ」


「そうなんですか。隣で良かったですね」


「うん。これから気軽に遊びに行けるよ。それじゃあ、中に入ろうか」


「わかりました。今、鍵を開けますね」


 それから、ベルと一緒に部屋の中に入った。

「おお、思っていた通り広い! てか、何部屋あったんだ?」


「レオ様の部屋、レオ様の寝室、メイドの部屋、リビング、ダイニングの五つです」

 五、五部屋? 絶対使わない部屋がでてくるぞ?


「多すぎだろ。ダイニングがあるってことはこの寮は食堂ないの?」

 ここまで運んで来てもらうの?


「ありますよ。でも、利用するのは下級貴族のご子息だけです」

 え? 上流階級だけの特権なの?


「どうしてそこまで上下を区別しようとするかな……」

 貴族のプライドは金の無駄だな。


「それじゃあ、持って来た物を並べてしまいましょう」


「わかった。それにしても、これ管理するの大変だな。ベル一人で大丈夫?」

 部屋多いし、掃除とか大変そう。


「大丈夫です。任せてください!」

 俺が聞くと、元気よく答えてくれた。


「うん、任せるよ」

 本当、初めて会った時のベルとは大違いだな。

 あの失敗ばかりしていたベルは、どこにいってしまったのか……。


 そんなことを考えながら、荷物運びをさっさと終わらせてしまった。

 持って来た物の量に対して収納が多すぎるから、全然時間が掛からないで済んだ。



 《一週間後》


 明日から、俺は三年生だ。

 学校が始まる前日である今日から、寮生活が始まる。


「今日からベルとここで二人暮らしだ。ベルは、これから一人でいる時間が多くて寂しくさせちゃうね」

 俺が学校に行っている間、いつもなら他のメイドや執事がいるのに、明日からはベル一人だ。


「大丈夫ですよ。部屋の掃除でもしていれば寂しくありません」


「そう? なんかごめんね」

 なんか、申し訳ないな。


「大丈夫ですよ。それに、これがメイドの仕事なので」


「うん……わかった。これからなるべくここにいるようにするよ」

 申し訳ないな……。

 これから、師匠のところに行くのは控えよう。


「気にしないでください! 私はメイドですから」


「そんなこと言わないでよ。俺からしたら、ベルも家族みたいなもんだよ」

 もう二年間も俺の傍にいるんだからね。

 うん、ベルの頭を撫でてあげよう。


「あ、ありがとうございます……」

 ベルはちょっと恥ずかしそうに頭を撫でさせてくれた。


「それじゃあ、夕飯を食べようか」


「はい。では、取って参りますね」


「あ、そういえばベルが取って来ないといけないんだったね。俺が取りに行くのはダメなんだよね?」


「はい、絶対にやめてください。私が使えないメイドと言われてしまいます」

 俺が何か言われても平気だけど、ベルがそんなことを言われるのは嫌だな……。

 ここは任せるしかないな。


「うん、わかった。大変だったら言ってね?」


「心配しなくても大丈夫ですよ。それに、レオ様に教えて頂いた無属性魔法がありますので、重い物でも楽々運べますよ」


「わかったよ。じゃあ、お願い」


「はい。取って来ますね」



 それからしばらくして、ベルが台車を押して戻って来た。

「持って来ましたよ。今から並べますからね。あ、レオ様は手伝わないで席に座っていて下さい!」

 俺が動こうと思った瞬間に止められてしまった。


「わ、わかったよ……」

 仕方ない、大人しくしているか……。


 それから、俺の前に料理を綺麗に並べてくれた。

「それじゃあ、お召し上がりください」


「う、うん……ねえ、ベルの分はないの?」

 ベルが、俺が食べ終わるまで後ろで立っていそうな雰囲気だったので、思わず聞いてしまった。


「ありますよ。後で、自分の部屋で食べさせてもらいます」


「あるの? それじゃあ、一緒に食べようよ」

 一人で、見られながら食べるのも嫌だし。


「いえ、私のことは気にしないでください。私は、後で自分の部屋で……」


「いいじゃん。一人で食べるのも寂しいから。ね?」


「食べている間、私もここにいますので大丈夫ですよ」

 うぬぬ、今日のベルは頑固だな。


「駄目なの?」


「はい、ダメです。私はメイドですから」

 どうしてそこまで頑なに断るんだ?


「うん……じゃあ、こうしよう。ご主人様命令、そこに座って一緒にご飯を食べなさい」


「そこまでするんですか? わかりました……」

 ベルは諦めて、俺の前に料理を並べて座ってくれた。


「うん、これで美味しくご飯を食べられるね」

 やっぱり、誰かと一緒に食べるとご飯は美味しい。


「私がいてもいなくても味は変わりませんよ?」


「味は気持ち次第で変わるもんだよ?」


「そうですか……」

 ベルは不機嫌そうに食べ始めた。


「うん……今日のベル、なんだか冷たいな~。いつものベルならもっと優しいのに」

 俺、泣いちゃうよ?


「そ、そうですか?」


「そうだよ。そんなに責任を感じなくていいんだよ?」


「いえ、でも今日から私一人ですから……」

 うん、絶対気負い過ぎているよ。


「だから、大丈夫だって。それに、いつものベルじゃないと俺、寂しくて泣いちゃうよ?」

 これで、ちょっとはいつも通りに戻ってくれるかな?

 そんなことを思いながらベルの顔を見ていると……ベルの目に涙が溜まり始め、今にも決壊寸前だった。


 そして……

「うえ~~~ん」

 大きな声で泣き始めてしまった。


「ちょ!? 泣かないで! ごめん、無理を言い過ぎた!」


「違います! 私が悪いんです! レオ様に寂しい思いをさせないよう、アメリーさんから頼まれていたのに……私、仕事のことに必死になり過ぎてしまって……本当にごめんなさい」

 わかったから!

 そんなに泣きながら謝れたら、こっちまで謝りたくなっちゃうよ!


 仕方ない……

「大丈夫だって……もう」

 俺はベルに近づき、抱きしめて背中を擦ってあげた。


「これからなんだから、初日からそんなに気負わないで。ベルなら大丈夫。だから、明るいベルでいてよ」


「ぐす、はい……わかりました」

 ふう、なんとか承諾してくれたようだ。

 それから、ベルが落ち着くまで背中を擦ってあげた。


「それじゃあ、一緒にご飯を食べようか?」


「わかりました」

 やっと泣き止んだベルは、俺の質問に笑顔で答えてくれた。


 その日の夕飯は、冷めていたけど凄く美味しかった。

 やっぱり、二人で一緒の方が美味しいよね?


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