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第七話 新戦力


「店の為にありがとうな……レオ。お前がいなかったら来年には店はなかったよ。これからもよろしくってことで乾杯!」


「乾杯」


「ゴクゴクゴク……ぷっは~やっぱ酒はうまいな~」

 乾杯と同時に師匠のコップは空になった。

 まだ昼にもなっていないのに……。

 ちなみに、俺はちゃんとジュースにしているぞ。


「師匠は酒が好きなんですか?」


「うん。まあ、血だな」


「血? そういえば、前から気になっていたんですが師匠ってドワーフなんですか?」


「いや、じいちゃんがドワーフだけどほとんど人族だな」


「そうだったんですか。師匠って髭をたくさん生やしていてドワーフに見えるけど、背は低くないからどうなんだろうって気になっていたんですよね」


「そうだったのか? まあ、そういうことだ」


「へ~。それじゃあ、師匠は魔法具を何がきっかけで作り始めたんですか?」


「うん? 俺が始めた理由は親がやっていたからだな。俺の家は代々魔法具職人だぞ」


「やっぱり。それじゃあ、実家も店をやっていたんですか?」


「ああ、やっているぞ。なんなら、お前も知っている店だぞ」


「え? 俺が知っている店? それって……」

 俺が知っている魔法具屋は師匠の店とあの店だけだ。


「そうだ。フェルマー商会だ。つっても、あそこまで大きくしたのは俺の弟だがな。ほんの三十年ちょっとであそこまでになってしまったんだから凄い奴だよ」


「そ、そうだったんですか……師匠がフェルマーって驚きだな……」


「今はフェルマーって名乗っていないけどな」


「そうなんですか?」


「ああ、なんと言うか……家出だな。まあ、若気の至りってやつだ。家を出てからは気まずくて顔を出してない」


「そうだったんですか……でも、あっちは師匠に戻って来てほしいんですよね?」

 この前そんなことを言っていたし。


「そうみたいだな。まあ、俺はもう店を持っているから戻らないけど」

 そう言ってゴクゴクとまた酒を一気飲みする。


「まあ、ここまでやって戻られても困るだろ?」


「確かにそうですね……ただでさえ明日からどうするのか悩ましいのに」


「ああ、そういえばそうだったな。明日からどうするか……」


 本当、どうすればいいんだろう……。

「急遽従業員を募集することも出来ませんし……」


「まあ、そうだな。それなら奴隷を買って働かせるか」


「ど、奴隷?」


「ん? 奴隷がどうした? 貴族なら奴隷なんていくらでも持っているだろ?」


「い、いえ……うちには……」

 いない。うちでそんな単語も聞いたことがない。


「そうなのか? 今日の売り上げがあれば一人くらい買えるだろう」


「そうですね。わかりました。それじゃあ、午後は奴隷商に行きましょうか」


「そうだな。いい奴隷がいるといいけどな」



 ******


 この世界には三種類の奴隷がいる。


 まず、一番一般的なのが借金奴隷。

 この奴隷は名前の通り、借金が返せなくてなってしまった奴隷。


 次に、犯罪奴隷。

 重い犯罪を犯してしまった人がなる。

 この奴隷は、力仕事をやらされることが多い。


 最後に、違法奴隷。

 これは、盗賊などに無理やり奴隷にさせられた人たち。

 この奴隷を売っている奴隷商は捕まってしまう。


 まあ、郷に入っては郷に従えと言うし、割り切るしかないよな。

 そんなことを考えながら奴隷商に入った。


「いらっしゃいませ。今日はどのような奴隷をお探しでしょうか?」

 奴隷商の店主は営業スマイルで対応してきた。


「店で接客を出来る奴をお願いしたい」


「わかりました……それでは、ご案内しますので好きな物をお選びください」

 そう言われて俺たちは奴隷が並べさせられている場所に案内された。

 よく見ると全員女性だった。

 大体、十人くらいってところかな。


「こちらの奴隷たちが接客に向いている物です。お好きな物をお選びください」


「わかった」


 それから俺たちは一人一人簡単な質問をしながら見ていった。

 俺は、一人一人鑑定しながら説明を聞いていた。

「うんん……俺的には誰でも変わらないんだが?」


「僕的には一人いい人がいましたよ」


「ほんとか? それじゃあ、誰にするかはレオに任せる」


「わかりました。あの人です」

 そう言って、俺は端にいる子を指さした。


「あの子がお前の好みか……わかった。おい、あの子いくらだ?」

 こ、好みってわけじゃないし!


「金貨五枚です」


「ん? 思ったよりも安いな」


「実は……適性魔法に問題がありまして……適性魔法が悪いと貴族の方は買ってくれないんですよ」


「そうなのか……適性魔法が無いのか?」


「いえ、あるにはあるんですが……創造魔法なんですよね」


「ああ……買った」


「え?」


「あの子を買う。はい、代金」

 師匠は何かを悟ったかのように、急いで金貨を出して店主に渡した。


「わ、わかりました……それじゃあ、契約がありますのであちらの部屋に」

 店主は驚きつつも、金貨を受け取って奥の部屋に案内してくれた。


「おいおい、お前わかっていてあの子にしたな?」

 部屋に入る前に肘で俺のことを突きながら聞いてきた。


「まさか、そんなことはありませんよ」


「惚けやがって!」



「それじゃあ、手を出してください。エルシーも出して」

 二人が手を出すと奴隷商は掴んで魔法を使った。

 何魔法なんだろう……と思って鑑定してみたら、闇魔法だった。


「はい、これで契約は終わりです。これからこの娘はあなたの命令を無視できません」

 そんなことが出来るのか……闇魔法凄いな。

 俺は使いたくないけど。


「わかった。じゃあ、行かせてもらうよ」


「はい、またのご利用をお待ちしております」


「ふう、終ったな。とりあえず店に戻るか」



 ******

「それじゃあ、改めて自己紹介をして貰っていいか?」


「はい、わかりました。私はエルシーと申します。掃除、料理などの家事全般が得意です」

 そう言って頭を下げるエルシーさんは十四歳で俺の五歳上だ。


「エルシーね。それじゃあ、俺たちも自己紹介をするか。俺はホラント、この店の店主をしている」


「僕はレオンス。この人の弟子をしているよ。あとは、この店を手伝ったりしているよ。ちなみに、適性魔法はエルシーさんと同じで創造魔法だからよろしく」


「何が『僕』だ。普段は俺はって言っているくせに。それと、エルシーに言っておくがこいつの創造魔法はヤバいぞ。暇な時にでも創造魔法を教えて貰え」

 あ、折角猫を被ったのに……。


「それは面白そうですね。暇な時はいつでも言ってください」

 俺以外に創造魔法を使うことが出来るのか凄く気になる。


「は、はい……って、創造魔法を使えるのですか!?」


「そうだぞ。おい、何か造れ」


「わかりましたよ。はい」

 一本の造花を造り、エルシーさんに渡した。


「ほ、本当だ……これは凄いですね……」

 そう言って、エルシーさんは造り物の花に見惚れていた。


「おいおいさっそく口説くなよ」


「口説いていませんよ! それに、僕には婚約者がいるので不倫になってしまいますよ!」

 誤解を招くことは言わないで貰いたい。


「は? 相手は誰だ?」


「えっと……言わないとダメですか?」


「なんだ。恥ずかしいのか? 公爵家のボンボンのお相手さんはさぞかし可愛いんだろうな」

 そう言って頭をぐりぐりし始めた。


「わ、わかりましたよ。この国の姫様と聖女のお孫さんですよ」


「おお~それはそれは、不倫なんかしたら大変だな」

 師匠は嬉しそうにニヤリと笑った。


「むう~だからしてないって」


「あの……」


「ああ、ごめん。こいつは貴族なんだよ。しかもあの勇者の家だ。まあ、どうしてうちに弟子入りしたのかは謎だがな」


「き、貴族様!?」


「気にしないでください。ここではレオでやっているので」


「流石に気にしないのは無理があるだろう。で、なんの話をしていたんだっけ?」


「創造魔法の話で終わったはずですよ」


「そうだった。その花を一瞬で造った様に、こいつは創造魔法を使いこなせるんだ」


「これ、どうやっているのですか? 私がやろうとしても全く形にならないのですが」

 やっぱりね……。


「ああ、これにはいろいろとコツがありまして……これは長くなってしまうので今度暇な時に話しましょう。今は明日からの仕事について説明を師匠から聞いてください」


「わかりました」


「そうだった。仕事の説明をしないとな。これからエルシーには、客の誘導をお願いしたい」


「誘導?」


「そうだ。朝早くからこの札を配って、その番号の順番に客を入れて欲しい。詳しい話はレオから聞いてくれ」


「それじゃあ、明日の朝だけ来ることが出来るので、その時に詳しい説明をしますよ」


「わかった。それじゃあ、これからエルシーの寝床だな。幸い、部屋は余っているからそこを使ってくれ」


「わ、わかりました……」


「ん? なんか質問でもあるか?」


「い、いえ」


「言いたいことがあるなら今の内だぞ」

 うんうん、これからめちゃくちゃ大変だから今言わないと、忙しくて言いそびれちゃうからね。


「え、えっと……どうして二人とも私に親切なんですか? 普通、奴隷ってもっと雑に扱うと思うんですが」


「普通ってそうなの? 師匠?」

 俺、奴隷を前世を含めて扱ったことがないからわからないや。


「俺に聞かれても知るかよ。俺だって奴隷を買ったのは初めてなんだから。まあ、いいんじゃないか? このままで」


「はい、いいと思いますよ。大事な戦力になるわけですから、わざわざ厳しくする必要もないと思います」

 エルシーさんがいないと明日からの営業すら危ういんだから。


「そうだな。それじゃあ、その分働いてくれということで」


「わ、わかりました。頑張ります!」

 エルシーさんは戸惑いながらも、わかってくれたようだ


「おう!」


「無理はしなくていいんですからね」

 エルシーさんは真面目そうだから、いい戦力になってくれそうだ。


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