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第二十五話 婚約騒動①

 

 クリフさんの成人パーティーの次の日

 俺は、学校に向かって馬車に乗っていた。


 昨日、皇帝の発表の後、近くにいた二人に質問攻めにされた。

 特にリーナはどうして言ってくれなかったのかと最後の方は怒っていた。

 俺は自分でもよくわからないまま婚約することになってしまった為、どう答えていいのかわからなかった……。


「はあ、今日は学校に行くのが凄く嫌だな」

 どう考えても教室中の視線を集めるだろうし、シェリーにどういう顔をすればいいのかもわからないし、リーナはまだ怒っているだろうし……。

 学校に行くのがこんなに憂鬱なのは初めてだ。



 *****


「おはようございます。シェリー」


「お、おはよう。リーナ」

 聞きなれた朝の挨拶に挨拶を返すも、シェリーは見て取れるリーナの不機嫌に戸惑った。


「昨日のことについて説明してもらえますか?」


「う、うん。えっと……」

 シェリーは気押されて、断ることなどできなかった。


 それから、シェリーはリーナに誘拐されてからその褒美として私と婚約することになった流れを説明した。

「つまり……約一カ月前には決まっていたのですね?」


「は、はい……」


「どうして二人とも言ってくれなかったのですか?」


「えっと……お父さんに誰にも言うなって言われていたの……レオも昨日まで一回しかその話を聞いていなかったから半信半疑だったのだと思う」


「そうだったんですか……。それでも、仲間外れは寂しいです……」


「ご、ごめん……」

 シェリーはリーナに何も言えず、素直に謝った。


「わかりました。許してあげます」


「え?」


「その代わり、私の計画に協力してください」


「け、計画? わ、わかったわ……」

 リーナに負い目があったシェリーは、これも断ることが出来なかった。


「ありがとうございます。それで、計画なのですが……」

 それから、リーナは計画について話し出した。



 *****


 現在、俺は教室のドアの前で固まっている。

「はあ、ここまで来たのはいいけど……」

 今までの中で一番ドアが重く感じた。


 どうしても、教室に入る勇気が出ない。


「師匠。こんなところでどうしたんですか? あ、そういえば、婚約おめでとうございます! 師匠はどんどん出世していきますね。将来仕えるものとしては嬉しい限りです」


「あ、ああ。ありがとうヘルマン。つ、仕える?」


「はい、僕は将来師匠に仕えさせてもらいます。昨日、父さんの許可も貰いました」


「あ、うん……その話はまた今度ね。今その話をされても頭に入って来ないから」

 俺はそれどころじゃないんだ。


「わかりました。それではまた今度。……師匠?」


「うん? どうした?」


「どうして中に入らないのですか?」


「え? いや、ちょっとね」


「あ、もしかして、姫様に顔を合わせるのが恥ずかしいんですか?」

 ニヤニヤとヘルマンが聞いてきた。


「そ、そんなことはないぞ」

 正確にはそれだけじゃないぞ。


「そうですか。それじゃあ、中に入りましょう」

 ヘルマンは、わざと音を立てながらドアを開けた。


「お、おまえ」


「ほらほら、入ってしまえば怖くないですって」

 そう言って、ヘルマンは俺の背中を押しながら教室に入った。

 中に入ると……クラスメイトの視線が集まった。

 ただ、二人を覗いて。


 シェリーとリーナは俺に見向きもせず、熱中して何かについて二人だけで議論していた。

「あれ? 師匠、何か二人を怒らせたんですか?」


「うん……思い当たる節はあるけど……振り向きもされないのはなんか……」

 悲しいな。


「おはようレオ」


「あ、フランク。おはよう」


「あの二人が見てもくれないから落ち込んでいるのか?」


「え? う、うん」


「リーナが姫様に怒りながら話しかけたと思ったら、いつの間にか周りが見えないくらいに話し込んでいるよ」


「そ、そうなんだ……」

 何をあんなに熱中して話しているのだろうか……。


「いつもみたいに話しかけに行かないの?」


「いや、さすがに……」

 そんな度胸は俺に無い。

 それをわかってかフランクはニヤニヤと笑っていた。


「何がそんなに面白いんだよ……」


「単純にモテる男が女関係で困っているのが面白くて」


「そうですか。はぁ、一時間目は剣術の授業だからもうそろそろ移動するか。ほら、行くぞ」

 フランクにこれ以上笑われているのも癪なので、授業に向かうことにした。


「はいよ」



 *****

 どうやって、シェリーとリーナに話しかけようかな……。

 シェリーに婚約についての詳しい話を聞かないといけないし、リーナの機嫌も治さないといけないよね……。

 朝の二人からして、あっちからは話しかけてくれなそうにないよね……。

 やっぱり、俺か……。


「おい、レオ!」

 練習相手であるフランクに呼ばれて、意識が現実に戻された。


「うん?」


「俺がお前よりもずっと弱いのはわかっているけどさ。そんな独り言を言いながら相手されたら傷つくんだが」


「あ、ごめん。って、今の声に出てた?」


「うん、シェリーがどうの、リーナがどうのって、バリバリ聞こえていたよ」


「マジか……」

 それは恥ずかしいな。


「レオって本当に二人のことが好きなんだね」


「え? あ、うん」

 ……二人が好き?

 そういえば、シェリーには好きって言ったけど、リーナには言ったことがないな……。

 よく考えてみれば、あれだけ一緒にいて、シェリーだけ婚約するのってリーナに申し訳ないとか以前にダメだよな。

 そうか……そうだよな。


「お~い、剣くらいは動かそうな? まだ、授業は終わっていないし、ぼーとしているだけじゃ怒られるぞ。妄想は座学の時間にしなよ」


「あ、ごめん。も、妄想なんてしていないし!」


「こらそこ! 口を動かさないで体を動かせ!」


「すみません! ほら、怒られた」


「ごめん」

 俺はとりあえず考えるのをやめて、授業に専念することにした。




 《放課後》


「よし、じゃあまた明日」


「おう、また明日。頑張れ」


「また明日! 頑張ってください師匠」

 俺が挨拶すると、何故か二人は応援してくれた。

 そんなに緊張が顔に出ていたかな?


 ひとまず深呼吸。

「すー、ふうー。いつも通りに話しかける」

 自分に言い聞かせて、二人に近づく。


 二人は顔を見合わせて、何かを確認するようにうなずいていた。

「二人とも」


「「キャ!」」

 俺に話しかけられたのがよっぽど驚いたのか、二人は小さな悲鳴をあげた。

 それには、教室にいた生徒の注目を集めることになってしまった。


「えっと……大丈夫?」


「え、ええ。大丈夫」


「はい、大丈夫です」

 うんん……。

 大勢の人が見ている中で家に誘うしかないのか……。

 昨日の発表を知っているクラスメイト達はとても興味津々で、体中に視線が刺さる。


 くそ~逃げ出したい……。

 けど、ここまで来たら言わないと。


「えっと……二人ともこの後、家に来ない?」


「う、うん。大丈夫だよ」


「は、はい。全く問題ないです」


 それを聞いた周りのクラスメイト達が盛り上がった。

「ヒューヒュー」


「羨ましい……」


「くそ……爆発してしまえ」

 言いたい放題言いやがって……。

 教室の入り口を見ると、騒ぎが気になった他のクラスの奴らまでもが覗き見していた。

 一刻も早くここから脱出したい。


「二人とも、ここを出よう!」

 俺は二人の手を引っ張りながら急いで教室から退散する。


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