表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/335

第二十一話 シェリーを救出


 現在、俺はクリフさんに教えられた場所にダッシュで向かっている。

 教えられた場所は帝都の端、商業街の中でも治安が悪い場所だった。

 夜中であるのでこんな場所に人がいるはずもなく、人を気にせずに全力で走り続けた。


 犯人たちが帝都から逃げるとしたら、人通りの少ないこの時間だろう。

 だから、急がないといけない。


 そして……クリフさんに教えられた場所にたどり着いた。

 目的の建物は明かりが無く……暗かった。


「くそ……行ってしまったか? いや、あそこに馬車がある」

 建物から離れた所に馬車が留められていた。

 もしかすると……あそこにシェリーが隠されているかもしれない。


 そう思って、馬車の中を覗き込んだ。

 しかし、いない。


「いないか……もう、行ってしまったか? だとしたらこの馬車は何だ? 普通、馬が繋がれた状態で放置しないよな?」

 そう、この馬車はおかしいのだ。

 誰も乗りそうにないのに、いつでも使えるようにスタンバイさせている。

 こんな治安があまりよろしくない場所の人なら、置いたままなんてことはしないはずだよな……。


 と、いうことは、まだ犯人は建物の中にいるな。

「これは……突入だな。まだシェリーは生きている」

 俺は、シェリーがいるであろう建物のドアを開けようと近づいた。


 すると、ドアの向こうからカツカツと複数の足音が聞こえてきた。

「誰かが出て来る。隠れないと」

 俺はひとまず、屋根に飛び乗った。


 そして隠れていると……一人の男が出てきた。

 その男は、周りをきょろきょろと見回すと、ドアに向かって声を掛けた。

「よし、誰もいないな。さっさとこの奴隷を馬車に突っ込んで王国に向かうぞ」


 奴隷?

 こんな時間に奴隷を運ぶなんて怪しすぎるでしょ。


 そんなことを考えていると……案の定、中からぞろぞろと男たちが出てきた中にいたのはシェリーだった。

 シェリーの顔に生気は無く、既に諦めた顔をしていた。

 よっぽど恐い思いをしたのだろう。

 本当に申し訳ない。


「やっと見つけた……遅くなってごめんねシェリー」

 気がついた時には、既に助けていた。

 シェリーも凄く驚いた顔をしていた。


「え? レオ?」


「うん。助けに来たよ」


「レオなの? 本当にレオなの?」


「そうだよ」


「良かった……ありがとう……でも、遅いわよ……」


「うん、本当にごめん……恐かったよね……ごめんよ」

 俺は、そう言ってシェリーを精一杯抱きしめた。


 するとシェリーは安心したのか、俺の名前を呼びながら泣き出してしまった。

 俺は黙って、心の中で謝りながら背中を擦ってあげた。


「おい! さっさと降りて来い!」


「うるさいな……今いいところなのに……先に倒しておけばよかった。ごめんねシェリー。ぱぱっと終わらせて来るから、少し待っててくれる?」


「わかった……すぐ帰って来てね。まだ泣き足りないから」


「わかったよ」

 俺はシェリーから一旦離れて、セレナを召喚した。


「セレナ、よろしく」


(やったー 久しぶりの戦闘だ~)


「うん、じゃあやるか」

 俺は、屋根から降りた。


「お、まだ子供じゃねえか。お前らやっちまえ」

 リーダーらしき人が仲間に命令すると一斉に攻撃を仕掛けてきた。


 こいつら……しっかり訓練されてる。

 命令されてからの行動がそこら辺のごろつきとは思えない動きだ。


「これは、どこの誰だかしっかり調べないとね」

 そう言って、俺は攻撃してきた全員を一瞬で倒した。

 倒すと言っても、剣では切ってはいない。

 軽く殴る蹴るで眠って貰っただけだ。

 殺したら事情聴取が出来ないからな。


「う、嘘だろ……こんな子供に一瞬で……お前は誰だ?」


「そんなことはどうだっていいじゃないか。それにそれはこっちのセリフだし」


「くそ……」

 男は辺りを見渡した。


「逃げようとしても無駄だよ。お前はもう逃げられない。だから、諦めな」


「そうだな……逃げられそうにない、な」

 男は不意打ちのつもりか、隠していた手から雷魔法を撃ってきた。


「無駄だって、はい終わり」

 俺は魔法を簡単に避けて、リーダーの腹に拳を一発。

 リーダーは腹を押さえて倒れた。


「ふう、こいつらどうしようかな。あ、いいところに馬車が。あれで城にまで運んじゃお」


 それから男たちを馬車に詰め込み終わって、シェリーを迎えに行く。


「遅かった?」


「うん、遅い」


「ごめん。これでも急いだんだけどね」

 俺はそう言いながらシェリーの枷を剣で壊す。

 そして、抱き上げる。


「そうなの? なら許す」


「ありがとう。泣いていいよ?」


「遅いから涙が収まっちゃったわ」


「あらら、それならもっと急いだ方が良かったな~」

 そんなことを言いながら、屋根から降りる。

 

「あれ? あの男たちは?」


「馬車の中。全員気を失ってるから心配ないよ」

 俺はシェリーを安心させつつ、隣に座らせて馬車の運転を始めた。


 馬車の運転は何度かの旅で見て覚えた。

 つまり、初運転だ。


 けど、心配はない。

 夜中なので人通りが少ないから、多少運転が荒くても大丈夫だろう。


 そんなことを考えて馬車を走らせていると、シェリーが肩に頭を乗せてきた。

「レオ……」


「何?」


「今日は助けてくれてありがとう。正直、もう誰にも助けて貰えずに奴隷にされると諦めてたんだ」


「本当にごめんね……一回目の念話を貰った時点でどうしたのか聞き返すべきだったよ……」

 本当にあれは確認するべきだった。


「あの念話届いたんだ……あの赤い髪の男に誘拐された時に念話したんだ」


「赤い髪……そういえば! アレンを見つけ出すのを忘れてた!」

 シェリーを助けることに集中し過ぎて忘れてた。

 アレンに挑発されたんだった。


「ああ、あの人なら私が目が覚めた時にはどっか行っちゃったよ」


 どっか行った? 俺が来るのをわかっていたのか?

「そうか……いつかやり返してやらないと」


「うん、お願い……。ねえ、レオ」


「何?」

 呼ばれたので返事をする。


「こっち向いて」


「え? うん」

 俺はよくわからないが、言われた通りにシェリーの方を向いた。


「今日のお礼」

 シェリーがいきなり軽いキスをしてきた。


「っちょ? え?」

 俺は現在混乱中。

 顔が真っ赤になってしまった。


「前を向いて。安全運転でお願い」


「え? あ、うん」

 シェリーの言葉に思わず、何も聞けずに前を向いてしまった。

 一瞬見えたシェリーの顔も凄く赤かった……。


 こうして、シェリーの救出は成功した。


三章の山場も終わりです。

後日談を書いて、四章に移ります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
更新通知や書籍の情報を呟いています!
Twitter(@Ricky1144557)のフォローもよろしくお願いします!!

☆一巻の表紙☆
Dq4zakLU8AEgsqZ

☆最新巻の表紙☆
i423498
書籍版もよろしくお願いしますm(__)m
書籍ページはこちら
漫画版もよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ