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第十七話 イヴァン兄さん成人

 今日は、イヴァン兄さんの誕生日だ。

 イヴァン兄さんの誕生パーティーには、とんでもない人数の貴族が参加する。

 なんせ公爵家の長男の成人だからね。


 そんな感じで、たくさんの人で埋め尽くされた会場に俺はアレックス兄さんとリーナと一緒にいる。

 ちなみに、父さんと母さんは来てくれた貴族の方々に挨拶して回っていた。


「イヴァン兄さんは今日で成人か~数回しか合う機会が無かったから凄い早く感じるなー」


「そうだろうね。いつも近くにいる僕でもそう感じるんだから」


「そういえば、兄さん達っていつも仲がいいよね」

 俺が会うときはいつもセットだし、会うたびに二人が仲良く話しているのをよく見る気がする。


「まあ、歳が1つだけしか変わらないから、何をするにも一緒になることが多いんだよ。小さい頃は、いつも二人で遊んでたしね」


「へ~」

 本当に仲が良いんだな。


「そんな兄さんも今日で大人だ……」


「アレックス兄さんも来年は成人だけどね」


「そうだね。僕もあと少しで大人だ」


「そういえば、兄さんって彼女いるの?」

 イヴァン兄さんは、いないって言ってたけど普通この時期の貴族っているのが普通だよね?


「いるよ。えっと……あ、いた。あそこにいるよ。ヘレナと話している金髪の人」


「随分とすんなり教えてくれるんだね……。え? あの人? 凄い美人じゃん!」

 兄さんが指した方向には、姉ちゃんと会話している髪が長く、凄く綺麗な女性がいた。


「まあ、隠しても仕方がないし」


「へ~。いつから付き合っているの?」


「え、えっと……いつからだったかな~。たぶん、初等学校の頃から付き合っているよ」

 初等学校からだと、結構前から付き合ってるね。


「じゃあ、なんて呼んでるの?」


「え、えっと……って、教えないよ。もうこの話は終わり!」


「え~。いいじゃん、教えてよ~」

 減るわけじゃないんだからね。


 俺が残念に思っていると、不意に後ろから声が聞こえた。

「そうだそうだ。二人の甘~い話を教えてあげなよ」

 俺は、びっくりしながら振り返るとそこには体は細身で弱そうだが、金髪なイケメンがいた。


「ク、クリフさん?」

 クリフ……? どこかで聞いたような……あ、わかった!


「シェリーの兄さん?」


「うん、そうだよ。その呼ばれ方は初めてだけどね。君はレオくんだね?」

 俺の名前を知ってるの!?


「は、はい」


「それと、君がリアーナちゃんかな?」


「は、はい。はじめまして」


「二人ともシェリーが凄く会いたがっていたよ」

 そう言いながら、クリフさんは苦笑いをしていた。

 あ、なるほど……。シェリーがパーティーに参加したい騒ぎをしたんだな。


「シェリーに帰ったらよろしくお伝えください」


「うん、伝えておくよ。それより、アレックスとフィオナの甘い話を聞こうじゃないか」

 フィオナ? 甘い話? ああ、フィオナは兄さんの彼女の名前か。


「え? ここまで話題が変わっているのにその話に戻します?」


「うん、是非とも君たち二人のラブラブっぷりを聞いて欲しくてね」

 え? それは是非とも聞かせて貰いたいんだけど!

 あの会うたびに、真面目キャラを漂わせていたあの兄さんが彼女にどんだけデレデレなのか、知りたくないはずがない!


「や、やめてくださいよ! そんなことないですよ」


「いやいや。僕が君を探しに行く度に、話しかけるのを躊躇ってしまう程いちゃいちゃと二人で話しているじゃないか」

 うん、なんだかクリフさんの言葉に鬱憤(うっぷん)を感じるぞ……。

 よっぽど、兄さんたちのイチャイチャが凄いんだろうな……。


「そ、それはすみません。これから気をつけます」

 あ、認めちゃった。本当にイチャイチャしてるんだ~。

 思わず、兄さんを見ながらニヤニヤしてしまう。


「レ、レオ。べ、別にそこまでイチャイチャしてるわけじゃ……」

 兄さんがここまでしどろもどろになるなんて、なんか新鮮。

 うん、兄さんの弱点発見。


「うん、いつもあんなに冷静なアレックスがここまで動揺するなんて、今日はいいものを見れたよ。それじゃあ、僕はもうそろそろ式が始まるだろうからあっちに行くとするよ」


「え? あ、はい」

 兄さんの返事も間に合わないくらい、クリフさんは流れるように来賓席の方に向かって行ってしまった。


「うん、なんか今まで聞いていた皇子とイメージが違う」

 聞いたイメージだと気が弱くて人と話すのも苦手そうな感じだったのだが、今のは結構気さくな人に感じた。


「ああ、それは……今のクリフさんは素で話していなかったからね」

 素じゃない?


「え? どういうこと? それじゃあ、あの元気な感じの会話は全部演技だったの?」


「そうだよ。クリフさんは、本当に仲がいい人にじゃないと自分を偽るんだよ」


「そ、そうなんだ……でも、さっきは兄さんがいたじゃん」


「僕? 僕はまだ心を開いて貰ってないよ。クリフさんと本当に仲がいいのは兄さんだけなんだよ」

 イヴァン兄さん? ああ、そういえば昨日、明日はクリフさんが来るからって喜んでいたな……。あの二人、仲がいいんだね。


「そうなんだ……それで、素のクリフさんはどんな感じなの?」


「僕も数回しか、今まで素で対応して貰ったことがないから、詳しいことは言えないんだけど。印象としては気が弱いけど優しい人ってところかな」

 なるほど、昨日聞いたイメージが本当のクリフさんだったんだね。


「へ~。でも、さっきまで会話してたクリフさんだと全然想像が出来ないよ。どうして、自分を隠しているの?」


「さあ? 僕にもそれはわからないな。でも、きっと僕たちが考えられないくらい次期皇帝候補は大変なんだよ」


「ああ、そうだね……」

 言われてみれば、次期皇帝候補って重圧にいつも耐え続けているんだもんね……。

 しかも、継承順位はシェリーの方が高い。


「まあ、僕たちが悩んでいても仕方がないし、このパーティーを楽しもうよ」


「え? 楽しむ? パーティーって楽しむものなの?」


「何を言っているの? パーティーは自分が主役でなければ楽しいものでしょ?」


「そうかな……?」

 俺、今まで参加したパーティーでいい思い出ないぞ?


「だって、美味しい食べ物が食べることが出来たり、仲がいい人と話すことが出来たり楽しいでしょ?」


「う、うん……あ、美味しい食べ物って言ったら!」


「ど、どうしたの急に?」


「いいからいいから。リーナも行くよ」

 兄さんの背中を押し、今まで俺達の会話に参加せずただ聞いているだけで暇だったろうリーナを誘う。


「は、はい。あ、もしかしてあれを食べに行くんですか?」

 どうやら、リーナは俺が何を考えているのかわかったみたいだ。


「え? 何を食べるの?」


「それはお楽しみ」

 そう言って、俺達はある食べ物を求めて移動を始めた。


 それから、目的の物があるであろう場所に来ると……そこには人だかりが出来ていた。

「な、何あれ……どうしてあんなに人が集まっているの?」


「まあ、それはあの人だかりの中に入ってみればわかるよ」


「つまり、僕に行けと?」


 俺はその質問に頷いた。

「あ、僕たちの分もお願い!」


「わかったよ……じゃあ、行ってくるね」

 そう言って、兄さんは人の間を通って行き、群衆の中に入って行った。


 それからしばらくして、兄さんが料理が乗った一枚の皿を持って出てきた。

「皆、これの為にこんなに集まっているみたいだね。そんなにこの料理が美味しいのかな?」


「それなら、一口食べてみなよ」


「うん」

 兄さんは俺に促され、言われるがままに料理を口に運んだ。


 そして、何度か咀嚼してから飲み込むとしばらくの間、黙ってしまった。

「どう?」


「あ、ああ。この肉何? こんなに美味しい肉が存在したんだね……」

 と、兄さんは答えてくれたが、どこか上の空だ。

 ドラゴンの肉って、やっぱり信じられないくらい美味しいよね。


 ということで、ネタバレをしたいと思います。

「実はね。この料理には、ドラゴンの肉が使われているんだ」


「え? ド、ドラゴン? 誰がそんなに凄い魔物を倒したの?」


 俺がなんて言えないし……どう誤魔化そうかな……。

「そ、それは……「レオくんです!」」

 え?


「レオくんが魔の森に行ってドラゴンを倒してきたんです」

 嘘でしょ……。

 さっきまで黙っていたのに、リーナが嬉しそうに暴露しているんですけど……。


 ほら、兄さんがめっちゃニヤニヤしちゃってるじゃん。

「へ~それは凄いね。レオはそんなに強くなっちゃったの? もう、その歳で君に勝てる人はいないんじゃないの?」


「そ、そんなことないし! 俺より強い人はいるから」

 元魔王は、俺よりも強いしね。

 あ、魔王は人では無かったっけ……。

 まあ、そんな細かいことは気にしない気にしない。


「ドラゴンを一人で倒せる人より強い人がいるんだ~」


「そ、そうだよ」

 魔王なら群れでも絶対平気なはず。


「それは是非とも会ってみたいね」


「そ、そうだね……」

 会おうと思えば会えるかな……。


「それじゃあ、僕はもう一回ドラゴンの肉を取りに行こうかな」


「え? もう一皿食べちゃったの? 僕たちも食べたかったな~」


「自分の肉は自分で取りに行きなよ。じゃあ、行ってくる!」


「ちょ、待ってよ~僕も行く!」


「私も行きます!」


 それから、俺達は祝うのをそっちのけで、ドラゴン料理を楽しんでいた。

 まあ、この肉を食べてしまった貴族も皆、食べるのに忙しくして祝ってなかったけどね。


 しかし、パーティーが終わる間際に妙なことが起こった。


(レオ、助けて....)

 シェリーからこんな念話が届いたのだ……。

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