第九話 たくさん創造します
ドラゴン狩りに成功した次の日
俺は、学校が終わってすぐにリーナと一緒に新しい家に向かった。
「昨日、レオくんは何をする為に魔の森なんて危ない場所に行ったのですか?」
「今から見せてあげるよ」
俺は得意げにリュックからドラゴンの死体を庭に出した。
改めて見ると凄く大きく感じるな……。
「こ、これはドラゴン……ですか? 初めて見ました……大きいですね」
リーナはドラゴンの大きさに圧倒されていた。
「このドラゴンの素材を使ってこの家を改造したいと思ってね」
「それはすごい物が出来てしまいそうですね。ただ……解体するだけで今日は終わってしまいそうですけど」
「それなら心配はいらないよ。これがあるからね」
そう言って解体BOXを出した。
「この大きな箱は何ですか?」
「これは魔物の死体を自動で解体してくれるアイテムだよ」
「それは凄いですね!……でも、ドラゴンは入りそうにないですよ?」
「それも大丈夫。見てて」
俺は大き過ぎて持つことは出来ないので、一旦ドラゴンをリュックに戻してから解体BOXの中にドラゴンを入れた。
「これで蓋を閉めて五分待てば、自動で素材だけにしてくれるよ」
「す、凄いですね……」
「さっきから凄いですねしか言ってないよ?」
「だって、本当に凄いんですもん! レオくんが悪いです」
「お、俺? なんかごめん」
「ふふ、いいですよ」
それから5分程経ち
解体BOXの蓋が開いた。
「蓋が開きましたよ?」
「箱の中を覗いて見てみなよ」
「だ、大丈夫ですよね?」
「そんなに心配する必要はないって」
リーナの背中を押しながら解体BOXに行く。
「心配なら、一緒に覗こうよ」
一緒に箱の中を覗いた。
箱の中には大量の鱗や切り分けられたドラゴンの肉、ドラゴンの爪、立派な骨などがたくさん詰まっていた。
「え? 箱の中はいったいどうなっているのですか? 箱の見た目と中に入っている量が合っていませんよこれ……」
「これは魔法アイテムだから箱の中身は異空間になっているんだよ」
「やっぱりレオくんはすごいですね……これを全部売ったら一生遊んで暮らせますよ」
「そこまで高く売れるの?」
「これだけ大きなドラゴンの素材なんて見たことも聞いたこともありません。もし、市場に出回ったらとても高い値段で取引されるはずですよ」
そういえば、じいちゃん達もドラゴンを倒すことは出来ないって言ってたな……。
「これからいろいろ使うから売りはしないけど、金に困ったら少しだけ売ろうかな?」
「レオくんがこの素材を使ってアイテムを造ったら凄そうですね……それで、何を造るんですか?」
「それはお楽しみで」
もう考えてきたんだ。
「え~教えてくださいよ」
リーナは頬を膨らませた。
「わかったよ。まずは、ドラゴンの頑丈な鱗を使ってゴーレムを造ろうと思う」
「さっそく、家の警備部隊ですね?」
「そう。このドラゴンの鱗が凄く硬くて倒すのに苦労してね。だからこれを使ったゴーレムなら凄く強くなりそうだと思ったんだ」
もしかしたら絶対防御のスキルを持ったゴーレムを造ることが出来るかも。
「レオくんがこの前造ったゴーレムでも十分強いのに……もっと強い物が出来てしまうんですね」
「そういう事、それじゃあまとめて造るよ」
リュックの中から二十個の魔石を出した。
「うわ~どれも凄い輝きですね。私が一つだけに頑張って魔力を注いでいる物と輝きが変わりませんよ?」
「そうなの? まだいっぱいストックはあるんだよね……」
リーナにリュックの中から魔石をゴッソリ取って見せてあげた。
「す、凄いストック……レオくんの魔力は底なしですね」
「うん……それは認めるよ」
もう、俺の魔力は人のレベルじゃないからな……。
「よし、造るか」
まず、鱗を地面に並べていく。
ちなみにだが、ドラゴンの鱗は一つだけで一人分の鎧が造れるくらいの大きさだ。
それから、創造魔法で変形させながらかっこいい鎧を造っていった。
「やっぱり創造魔法は凄いですね。普通ならこの硬い鱗を鎧にすることすら出来ません」
そう言って、リーナはコンコンと鎧を叩いていた。
確かに、これを加工するとなると少しずつ削って形を整えるくらいしかできないとかな……。
「それが、これからゴーレムになる」
俺は魔石を一つ一つ鎧の上に置き、創造魔法を使った。
そして、いつものように光って完成した。
「うわ~このゴーレム達、凄くかっこいいですね」
「そうだね」
完成したゴーレムは、全身赤一色でとてもかっこいい!
そして、さっそくゴーレムを鑑定してみる
<レッドゴーレム兵1号>
命令を忠実に実行することが出来る
会話が出来る
仲間同士で情報交換が出来る
とにかく赤くて硬い
体力:6000
魔力:2000
力:4000
速さ:1000
スキル
剣術Lv.6
火魔法Lv.5
自己修復
これが20体いるとなると警備の心配は無さそうだ。
ただ、絶対防御のスキルがないのは残念だな……。
「お前たちには、この家の警備をして貰う。怪しいと思う人が家に侵入してきたら、なるべく殺さずに捕まえること」
『了解しました』
とゴーレム達は声を揃えて返事をした
「それじゃあ、お前たちに剣を渡すから貰ったら、二人一組になって家の警備を始めて」
『了解しました』
それから俺はゴーレム一体ずつミスリルの剣を渡していった。
そして、貰ったゴーレム達は言われた通りに二体一組で行動を始めた。
「あ、一号」
『はい、何でしょうか?』
「念話が出来る腕輪を渡しておくから、何かあったらこれに連絡して」
そう言って、念話が出来る腕輪を渡した。
『了解しました』
一号は返事をすると巡回を始めた。
「これで防犯面は安心だね」
「十分過ぎるくらいですけどね」
「十分過ぎるくらいが丁度いいんだよ。それじゃあ次に行こうか」
「次は何を造るのですか?」
「次は風呂を改造しようかな~と思って」
「お風呂をですか?」
「そう、今ある風呂って、一回風呂を入れるたびに魔法具を交換しないといけないんだよね」
この家の元住民が魔法具屋を経営していたからか、凄くもったいない作りだ。
ということで、取り換え必要ない便利な風呂を造りたい。
「それじゃあ風呂場に行くぞー」
「さあ、改造しますか」
風呂にお湯を溜める魔法具に自前の魔石を使っていつものようにささっと改造した。
他にも改造したい物があるからね。これに時間を使っていられない。
「さあ、どんな物が出来たかな~?」
<源泉かけ流し……風>
源泉を使った……ような風呂にいつでも入ることが出来る
効能は疲労回復、魔力の回復促進、健康増進、美肌効果など
「うん、温泉みたいなのが出来た」
「あのレオくんの実家にある温泉ですか?」
「そう、温泉には体に良い成分が入っていてね。これには疲労回復、魔力の回復促進、健康増進、それと……美肌効果があるみたい」
「び、美肌効果!? それはぜひ今度入らせてください!」
いつも大人しいリーナが珍しく食いついて来た。
そんなに美容効果に興味があるの?
「う、うん。今度ね……」
「やったー 約束ですからね!」
「わかったよ……約束ね。それじゃあ、次は今回のメインイベントを行いたいと思います」
「メインイベント?」
「そう。わざわざこれだけの為に、昨日はドラゴンを倒してきました」
「そこまでして、造りたい物とはどんな物なんですか?」
「それは、この家全体が快適な気温に保てるようにすることだよ」
「気温を保つ?」
あ、気温の意味がわからないか。
「気温を保つというのは、そうだな……普段、暑いとか寒いとか感じるでしょ?」
「はい、感じますよ」
「それを暑くもなく、寒くもないような環境に家の中をするんだよ」
「そんなことが出来るのですか!? それは凄そうですね」
お、今の説明で理解してくれたみたいだ。
「ということで、まずはこの魔石に大量の魔力を注がないとね」
と、俺はドラゴンの大きな大きな魔石を取り出した。
取り出した魔石は俺がギリギリ両手で抱えながら持つことが出来る大きさだ。
「うわ~ 凄く大きな魔石ですね。それにもう既に輝いてますよ」
「そうみたいだね。大きな魔物だと自分の魔石に魔力を貯めることが出来るのかな?」
「レオくんはこれにもっと魔力を注ぐのですか?」
「そうだよ。この家は大きいから余裕はあった方がいいと思うんだよ」
「レオくんが本気で注いだ魔石はどのくらいの輝きになるのか楽しみです」
「それは最近本気で魔力を使うことが無かったから僕も楽しみかも……それじゃあやってみるよ」
俺は全力で魔石に魔力を注ぎ始めた。
すると……見る見る魔石の輝きが増していく。
「うわ~凄く綺麗ですね」
「綺麗だね。魔石が大きい分、魔力を注げる速さが速いみたい」
いつもの倍くらいの速さだ。
「私なら、このスピードで魔力を注いだらもう既に魔力が無くなってしまいます」
「魔力の量は誰にも負けないと思っているよ」
それから30分経ち
「やっと魔力が無くなった~」
久しぶりに魔力を使い切った。
「お疲れ様です。凄い輝きになってしまいましたね」
魔石はとてつもなく輝いている。
暗い部屋に置いたらすぐに明るくなってしまいそうなくらいの輝きだ。
「凄い輝きだね……最近全力で魔力を使ったのが久しぶり過ぎて疲れたよ……」
あ~体がだるい。
「疲れた……」
ん? どうしたリーナ?
「疲労回復、魔力回復促進!」
「お、おい。まさか……」
「お風呂に行きましょうか?」
「拒否権は.....?」
「そんなこと言わずに行きますよ」
体がだるくて逃げることも出来ず、風呂に連れてかれてしまった。
・
・
・
それじゃあ、魔力も回復したことだし本日のメインイベントを始めたいと思う
え?
風呂はどうだったって?
それはそれはいい湯だったよ。
しかも、本当に魔力の回復が促進されたんだ。
おかげで、30分程度で全快だ。
何々?『おいおい、リーナとはどうしたんだ?』だって?
……さあ?
「それじゃあ、家の改造を始めたいと思います」
「これだけ凄い魔石を使ってやる改造だから凄そうですね」
お肌がツヤツヤになったリーナがわくわくしながら隣に立っている。
「そうだね。こんだけの魔力を使うと何が出来るんだろう?」
そんな疑問を持ちながら……俺は創造魔法を家全体に使った。
すると、家全体が凄まじく光り始めた。
「ま、眩し過ぎる」
眩しすぎて目を開けてられないんだけど。
これ、大丈夫?
そして、しばらく目をつぶっていると……パタリと家と魔石の輝きが収まった。
「あれ? 終わりですか? 凄かったですね。成功ですか?」
「いや、魔石がまだここにある」
そう、魔石がいつもなら無くなるはずなんだ。
「え?それじゃあ、今のは失敗だったのですか?」
「どうなんだろう?」
俺は確認の為に家を鑑定した。
<ハウスダンジョン(未熟)>
家がダンジョン化した物だが、まだ創造者のレベルが低い為、未熟な物になってしまった。
使える機能は、ダンジョン内の気温調節、ダンジョンの核を使ってのダンジョン内の監視、ダンジョンの自動修復だけに制限されてある。
このダンジョンは一度だけ造り直しが可能です。
創造者:レオンス・フォースター
ツッコミどころ満載だが
「とりあえず、目的の気温の調整は出来るみたいだよ」
「本当ですか? なら成功ですね!」
「うん、良かったよ。もし、失敗だったら昨日の苦労が無駄になってしまうかもしれなかったんだから」
もう一回魔の森にまで行って一日ドラゴンを探すなんて嫌だ。
「良かったですね。それじゃあ、成功したことだし、そろそろ帰りません?」
「あ、もう外が暗くなり始めてる。遅くなったらばあちゃんが怒りそうだし帰るか」
外が夕日で赤く染まっていた。
もうそろそろ夕飯だ。
「それじゃあ、また明日」
俺は家に向けて転移を使った。
「あ、そういえば、お風呂のことを今日の夜にでもシェリーに教えてあげましょう」
転移間際にリーナの独り言が聞こえた気がしたのは……きっと気のせいだ。