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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第三章褒美拝受編

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第六話 ヘルマンの特訓

 ヘルマンが忠誠の腕輪を装着したので、さっそく特訓を始めたいと思う。


 今日は、ヘルマンに魔力操作を取得してもらってから帰って貰いたい。

 魔力操作が出来るようになれば、一人でも鍛練が出来るようになるからね。


「それじゃあヘルマン、魔力の特訓を始めるよ」


「はい! よろしくお願いします」


「まず確認したいんだけど、ヘルマンは自分の魔力を感じられる?」


「えっと……」

 ヘルマンは下を向いて黙ってしまった。


「そんな落ち込む必要はないよ。感じられないみたいだね?」


「……はい」


「確認をしただけだから落ち込むなって」

 そう言って、俺はヘルマンの背中をポンポンと叩いた。


「……わかりました」


「うん、それに今から教えるから心配しなくていいよ」


「本当ですか? ありがとうございます!」

 お、元気になってくれた。


「いえいえ、それじゃあちょっと動かないでね」

 そう言って、俺はヘルマンに向けて手を向ける。


「は、はい」

 手を向けられたヘルマンは直立不動になった。


「そんなに緊張しなくていいよ。リラックスしてて」

 そんなことを言いながら、ヘルマンの魔力を探す。


 見つけた!

 小さいけど確かにある。


 それを少しだけ動かしてみる。

「どう? 何か感じた?」


「はい、ヘソの下辺りに何かが動いた気がしました」


「それは良かった。それが魔力だよ」


「え? これが魔力……?」


「そう、これを頑張って動かそうと意識してみて」


「やってみます!」

 ヘルマンは魔力を意識するためか、目をつぶった。

 凄い集中しているな……。


 ……しばらくして。

「すみません...出来ませんでした」


「やっぱり? それじゃあ僕が少しの間だけ動かしてあげるから、どうにかコツを掴んでみて」


「ありがとうございます。絶対に掴んでみます」


 それから、俺はヘルマンの魔力を動かし続けた。

 しばらく動かしていて気がついたのだが、ヘルマンはシェリーみたいな変な反応をしなかった。

 シェリーだけが何かを感じるのか?

 今度、調べてみるか……。


 そして、10分くらい経った頃

「師匠、たぶん出来るようになったと思います!」

 ヘルマンは何かを掴んでくれたようだ。


「本当? それじゃあやってみて」


「はい」

 ヘルマンは返事をするとまた目をつぶった。


 すると、ヘルマンの魔力が少しだけ動いたのが感じられた。

「やったー出来たじゃん!」


「で、出来ました……」


「よし、これからは努力あるのみだよ!」


「何をするのですか?」


「簡単だよ。ひたすら魔力を動かし続けるんだよ」


「動かし続けるのですか……」


「そう、動かし続ければ魔力はどんどん増えていくから」


「本当ですか!?」

 おお、凄い食いついてきたな。


「本当だよ。ただ、ヘルマンの努力次第だけどね」


「努力次第……頑張ります」

 凄いやる気だな。


「うん。これからの目標は、全身に魔力を動かせるようになること。これが出来るようになったら次の段階(ステップ)に進むよ」


「次の段階(ステップ)ですか...」


「そう。次の段階(ステップ)に入ったら魔力の成長が急激に速くなるから楽しみにしててね」


「急激に……死ぬ気で頑張ります!」


「おう、応援しているよ」

 俺は知らなかった……ヘルマンが本気なことを。


 《四日後》


「師匠! 目標を達成しましたよ!」

 朝、俺が学校に付くとヘルマンが駆け寄ってきた。


「は? 嘘でしょ? だって……まだ四日だよ?」


「本当ですよ! 師匠に言われた通り、死ぬ気で頑張りました」


「あれ……? 俺、死ぬ気で頑張れなんて言ったかな……?」

 そんな記憶は無いぞ……。


「はい、努力次第だって言ってました」


「それがどうなったら死ぬ気で頑張るになってしまうのか……」

 いや、言ってたな……『死ぬ気で頑張ります』って。


「頑張りましたよ。四日間寝ないで魔力を動かし続けました」


「は!? あれから一日も寝てないの?」

 本当に死ぬ気じゃん!


「はい。魔力の為ですから」

 と、言っているヘルマンは……凄く疲れた顔をしていた。


「そ、そうか……だいぶ魔力が増えたでしょ?」

 俺はヘルマンを鑑定をした。


 ヘルマン・カルーン Lv.1


 年齢:8

 種族:人族

 職業:剣士見習い

 状態:重度の睡眠不足


 体力:6/6

 魔力:970/970


 力:8

 速さ:7×1.5(10.5)

 運:20

 属性:無

 スキル

 無属性魔法Lv.1 剣術Lv.4

 魔力操作Lv.3


 称号

 なし 


 おい! 今すぐ帰って寝ろ!


「なんと魔力が970になってしまいました!」


「四日でその量は凄いな……」


「はい、凄い達成感です」


「良かったね。それじゃあ、次の段階(ステップ)は明後日から教えるよ」


「あれ? 今日と明日は何をするのですか?」


「寝なさい! 今すぐ!」


「寝るだけですか?」


「そう。体を休めること! 休まないと次の段階(ステップ)に進まないから」


「わ、わかりました」

 本当に……体は大事にしなさい。


 (二日後)

「ヘルマン、しっかり休んだね?」


「もちろんです! 師匠の言いつけを破るなんてことは絶対にしません。昨日も一昨日も学校から帰ったらずっと寝ていました」


「そ、そうか……それじゃあ次の段階(ステップ)を教えるよ」

 従順すぎるのも何か怖いな……。


「はい、よろしくお願いします」


「まず、この何も魔力の入っていない魔石を使う」

 そう言って、ヘルマンに空の魔石を渡した。


「この魔石をどうするのですか?」


「この魔石に魔力を注ぐんだよ」


「どういうことですか?」


「簡単に説明すると、魔力操作を使って手から魔石に魔力を移動させてみて」


「とりあえず、挑戦してみます」

 ヘルマンは魔石を両手で握って目をつぶった。


 それからしばらく経ち……

 魔石が少しだけだが光り出した。


「師匠! 僕が……僕が……魔石を光らせることが出来ました!」

 ヘルマンは凄く嬉しそうだった。


「うん。言った通り出来るようになったでしょ?」


「はい! これを続けたら師匠みたいな凄い輝きの魔石を作ることが出来ますか?」


「出来るよ。ただ、めちゃくちゃ努力が必要だけどね」

 と、言ってみたが……俺と同じ輝きを出すには何年もかかるだろうな……。


「そうですよね……。でも、これから頑張ってみます!」


「頑張ってみな……あ、でも寝ずにやるのは無しね。明日から寝不足で学校に来たら怒るから」


「わ、わかりました」

 ヘルマンは目を逸らした。


「本当にわかった? 約束だからね?」


「は、はい。約束します」


「それじゃあ、魔力がある程度増えたらまた次の段階(ステップ)に進むからね」


「ま、まだ次の段階(ステップ)があるのですか?」


「あるよ。何をやるかは後でのお楽しみに」


「わ、わかりました。全力で頑張ります」


「だから、ちゃんと寝るんだからね!」

 うん、たぶんダメだな。



 《約1週間後》


 朝、教室に入ると

「師匠!」

 ヘルマンが駆け寄って来た


「ど、どうしたの?」


「魔力の量が凄く増えたのでみてください!」

 そう言って、ヘルマンはステータスカードを見せてきた。


「もう? 早くないか?」

 俺はカードを受け取って確認した。


  ヘルマン・カルーン Lv.1


 年齢:8

 種族:人族

 職業:剣士見習い


 体力:6/6

 魔力:3820/3820


 力:8

 速さ:7×1.5(10.5)

 運:20

 属性:無

 スキル

 <見ることはできません>


 称号

 <見ることはできません>


 ヤバい量になってしまった……。

 これは忠誠の腕輪が効いているってことだよな。


 けど、これは……。

「ヘルマン……ちゃんと寝てた?」


「は、はい。もちろんです.....」


「本当に?」

 俺はヘルマンの顔を覗き込む。


 ヘルマンは目を泳がせた。

「え、えっと……ちゃ、ちゃんと一日四時間くらいは寝ていましたよ!」


「はぁ~これからは短い睡眠もダメだからね!」


「は、はい」


「罰として、次の段階(ステップ)を教えるのは1週間後」


「え~そこをどうにかお願いします」

 ヘルマンは必死にしがみついて来た。


「ダメ! それと、この一週間はしっかり寝ること。それが出来なかったら教えないから。誤魔化してもわかるからね?」

 俺には鑑定があるんだから。


「わ、わかりました……寝ます」


「今度こそ絶対だからね?」


 そして1週間後


「約束通り、一週間経ったので次の段階(ステップ)を教えたいと思います」

 と、俺は家の庭で宣言した。


「やっとだ……これから何を教えてくれるのですか?」

 元通り健康な体に戻ったヘルマンはわくわくしていた。


「無属性魔法だよ」


「え? 無属性魔法ですか!?」


「そう、魔力操作を覚えて、魔力を増やしたことによって、無属性魔法を取得出来るようになったのさ」


「本当ですか? あの無属性魔法を僕が……」

 信じられないと言いたげな反応をしていた。


「やっぱり、無属性魔法を取得するのは嬉しんだね」


「もちろん嬉しいです。夢だったので」


「それは良かったね。もう既に、無属性魔法を使うことは出来るよ」


「本当ですか?」


「うん。ただ、使()()()()()には努力が必要だけど」


「無属性魔法の為ならどんな試練も耐えてみます」

 うん、ヘルマンは耐えられると思う。


「それじゃあ、体を強化するイメージで走ってみな」


「イメージ……ですか?」

 ヘルマンは首を傾げた。


「詳しく言うと……強化したい所に魔力を移動させて使うイメージ」


「うん~とりあえずやってみます」

 そう言って、ヘルマンは走り出す。


 しばらく、普通のスピードで走り続け……。

 やっと、コツを掴んだのか足に無属性魔法を使うことが出来た。

 そして……ヘルマンは転んだ。


「お、無属性魔法に成功したじゃん」


「え? 今のが成功ですか?」


「成功というよりも使うことが出来たという感じかな?」


「そうですか……でも、今のでコツを掴んだ気がします」


「それは良かった。ただし、全身を強化するのはダメだからね」


「ど、どうしてですか!?」

 やっぱり全身に使えば良いと思ったのか……。


「理由は、無駄に魔力を消費してしまう事と、必要な場所だけを強化した方がその分強化が強くなるからだね」


「な、なるほど……」


「だから、使いこなすには努力が必要だって言ったじゃん」


「そ、そうですよね……無属性魔法の為には努力は惜しまないと決めたんだ」

 ヘルマンは拳を握りしめた。


「しっかり寝るんだよ?」


「も、もちろんですよ」

 と言いながら、ヘルマンは俺と目を合わせようとしない。


 これは我慢出来ないな……。


 そして次の日から

 またヘルマンは寝不足な顔をして学校に来たとさ……。

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