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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十四章 最終決戦編

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第三十七話 託し託されて


SIDE:悪魔


「くそ……私の計画は完璧だったじゃないか……。コピーの中に入っていたのもバレていなかったし、創造士のコピーへの奇襲も成功した。それなのに、どうして私の方が追い込まれているんだ?」

 そう悪態をつきながら、私はひたすらとある場所に向かっていた。

 急で次の寄生する対象見つけなければ、本当に私は消滅してしまう。


「まあ、いい。私にはとっておきの奥の手が……。ん? どういうことだ? どうしてこんなにも剣が刺されているんだ?」

 できることなら入りたくないが、能力が使えるからこういうときの避難先として殺さずにとっておいたゴブリン王が……顔以外の全ての箇所に隙間無く剣が突き刺されていた。


「こいつは……あれだけの能力を持っていて負けたのか? このゴブリン……私がどれだけ手塩にかけて……ん? まだ生きている?」

 ピクリと動いたゴブリンの顔に、私は一筋の光を見た。


「ククク……。傷の修復に多少魔力を使ってしまうが、それはこの島の魔物たちで補うことが可能だ……」

 こいつの持っている能力の一つに、取り込んだ生物を吸収して魔力を得るという能力がある。

 これと魔物を呼び寄せる能力を使えば、私の魔力は完全と言わずとも再び戦えるほどに回復できる。


「フハハハ。そうだ魔物ども! 私の糧となれ!」


SIDE:ミヒル


「なんとか悪魔に深手を負わせられたみたいだね」

 俺たちは、ダンジョンの中でローゼとネリア、キールによる悪魔との戦いを見せて貰っていた。

 助けに行きたかったが、俺も美保も体に限界が来ていてむしろ足手纏いになるだけだったので見ているしかなかった。


「焼却士……相変わらず恐ろしいわね。この千年間、悪魔にダメージを負わすことに成功した生物はいないわ」


「なるほど……。となると、ローゼが必死にネリアを育てていたのも、決して無駄ではなかったというわけか」


「そうね。どうする? 彼女に私たちの魔力を全て渡す?」


「それをしたら……魔族の君は死んじゃうでしょ? 良いの?」


「それを言ったらあなたもそうでしょ。どうせ、もう私たちには戦える魔力は残されてない。でも、二人の魔力と精霊の力があれば、悪魔に止めを刺すこともできるんじゃない?」


「そうかもね……。けど、君が悪魔を殺す意味ってある?」

 千年も一緒にいたんだんだろ? 少しは愛着が沸いていたりしないのか?


「大ありよ。あいつのせいで、私は千年間ずっと頭痛に悩まされたし、嫌いなあの教師の声を聞かされ続けたんだから」


「そうだったのか……」

 まあ、さっきの戦いを見ていても、とても良い性格ではなかったもんな。

 美保の嫌いな教師……ああ、生徒と一緒に虐めに参加していたって言っていたあいつか。


「ほら、行きましょう? それとも、こんな汚れてしまった女と死ぬのは嫌?」


「まさか、むしろ光栄だよ。さっきも言っただろ? 一緒に罪を償うってね」

 どうせ、先生がいなかったら今日には死んでいた命だ。

 惜しくもなんともない。戦いが終わらせられるのなら、喜んで差し出そうじゃないか。


「……ありがとう。それじゃあ、焼却士のところに行こう?」


「いや、この戦いの最後を締めくくるのは彼女じゃないよ。やっぱり、彼に全てを終わらせてもらわないと」


 SIDE:ルー


「んん……」


「あ、起きた。ルーさん、大丈夫ですか?」

 目が覚めると、リーナが私の顔を覗き込んでいた。


「ああ……私、取り返しのつかないことを……」

 目の前で、レオの体が破壊されていく光景が蘇ってきた。

 私、自分の手でレオを殺しちゃった……。


「死んでないから大丈夫ですよ。それと、忘れちゃいましたか? レオくんには再生のスキルがあるんですよ? 復活には三日はかかっちゃいますけど、ちゃんと元通りに戻りますよ」

 そうだった。良かった……。レオ、死んでなかったんだ。

 でも……私がもっとちゃんと抵抗していれば……ローゼやネリアにもあんなに迷惑をかけることもなかった。やっぱり、全て私のせいよ……。


「立てますか? レオのところに行きましょう?」


「もちろん……あれ?」

 早くレオの様子が知りたくて立ち上がろうとしたけど、足に力が入らずにそのまま倒れてしまった。


「もう、無理しないでください。私が治したと言っても、体内を焼かれちゃったのですから相当なダメージが残っていますよ」


「でも……私が戦わないと……」

 ネリアの魔力が無くなって締まった以上、悪魔と戦えるのはもう私だけだ。

 命をかけてでも、私が皆を守らないと。


「心配ないわ」


「……え? お姉ちゃん?」

 お姉ちゃんが目の前に現れた。


「こんな私を……まだそう呼んでくれるのね」


「ずっと一人ぼっちだった私に優しくしてくれたのは……お姉ちゃんだけだもん」

 私だけは、お姉ちゃんが優しい人だって知っているから。


「あれ……あなたの為じゃなくて、私自身の為だったって言ったら怒る?」


「怒らない。何の為でも、私を助けてくれたのには変わらないもん」

 それに、あの時の愛情は絶対に嘘じゃなかった。

 本物の愛というのをレオたちに教わったからわかる。あれは、絶対に嘘じゃない。


「はあ……。もう、泣かないって決めたのに。私を泣かせた責任を取りなさいよね?」


「うん。お姉ちゃんのためなら、何でもする!」


「本当……可愛い妹ね。私の魔石……あなたの大切な人に渡しなさい。これがあれば、絶対に勝てるわ」


「……わかった」

 死んで欲しくはなかったけど、お姉ちゃんの本気の顔を見て、私も覚悟を決めた。

 絶対、これをレオに届ける。


「それじゃあ……またね。あなたが私みたいにならなくて、本当に良かった。百歳までだけど……幸せでいるのよ……」


「うん。お姉ちゃんの分まで、絶対に幸せを満喫してからお姉ちゃんのところに行く」


「ふふふ。私がいる地獄には来ちゃだめよ。はあ、竜也……一緒にって言ったけど悪いわね。先に地獄に行っているわ」

 そう言うと、お姉ちゃんは自分の魔石を抜き取って死んでしまった。


「……よいしょ。おっとっと」

 お姉ちゃんの手から魔石を受け取り、立ち上がるも、また倒れてしまった。


「仕方ないですね……。ほら、肩を貸してあげますよ」


「ありがとう」

 リーナに肩を借りながらレオのところに向かう。

 お姉ちゃん……長い間お疲れ様。ゆっくり休んでね。


 SIDE:レオンス


「……あれ? ルーは?」


「お、目覚めたか。やっぱり、回復のスキルがあると復活が早くて助かるよ」


「ミヒル……何をしているんだ?」

 目が覚めると、ミヒルの顔があった。

 顔を下に向けると、ミヒルが回復魔法を使っていた。

 どうして、俺の為なんかに魔力を使っているんだ? お前、ただでさえ魔力がすくないんだろ?


「うん? 俺に残ったわずかな魔力と嫁さんたちの魔力でレオに復活してもらおうとしているんだよ」

 そう言われて、ミヒルの顔から体に視線をずらしていくと……涙を流しながら、ミヒルを抱きしめ、魔力を注ぐアリスとジモーネがいた。


「そんなことをしたら……」

 エルフも魔族も魔力が命なんだろう? 全ての魔力を使ったら全員死んでしまうじゃないか。


「気にするな。どうせ、俺は今日死ぬつもりでダンジョンを出てきたんだ。予定通りじゃないか」


「ちなみに言わせてもらうと、私たちも旦那と一緒に死ぬと決めていたから気にしないで」


「そうですよ。むしろ、こうして若い人の役に立てて死ねるのでありがたいです」


「そ、そんな……」

 俺なんて、ほっとけば勝手に再生するんだぞ? それなのにどうしてそこまで助けようとするんだ?


「前置きはここまで。今から完全復活するまでの間に創造魔法の奥義というものを教る。時間がないから一度しか言わない。ちゃんと覚えておくんだぞ?」


「わ、わかった」

 何を言っているのかよくわからなかったが、時間がないと言われたので理解するのは諦め、創造魔法の奥義とやらを教わることにした。


「見つけたぞ! クハハハ。創造士! 随分と弱っているじゃないか! 他人を助けている余裕があるのか?」

 時間がないと言うのに、真っ黒な人型の魔物(?)が現れた。

 もの凄い魔力を感じる……まだあんなにも強い転生者が隠れていたのか。


「見た目が随分とスマートになっているが……ゴブリン王じゃないか? メイとバルスが殺したんじゃないのか?」

 どうやら、ミヒルは知っている転生者らしい。しかも、複製士とバルスが殺したはずの転生者らしい。

 というか、あれをあの二人は倒せたのかよ。バルス……生意気だったけど、よく三十年近くも俺の騎士をやってくれたな……。


「違う! あれは悪魔よ!」

 ネリアが言うには、あれが悪魔らしい。俺が寝ている間に悪魔に何があったんだ?


「そういうことか。ゴブリン王に寄生したんだな?」


「フハハハ! そういうこうだ! 死ね!」

 悪魔が勝ちを確信したように笑うと、強力な光線をこっちに向かって撃ってきた。

 ヤバい。この体じゃあ避けられない!


「させるか!」


「お、おじさん!?」

 俺と悪魔の間におじさんが現れた。


「いや、それはお前の役目じゃないよ。そこを代われ」


「アレン……?」

 おじさんより更に前に、子供の頃に会った時と変わらない姿のアレンが立った。


「アレン!」


「破壊士に勝てないと思ったときから……俺はずっとどうやったら人々を守れるのか考えていた。ずっと、答えが出なかったが、今やっと守ることができた。生涯のライバル……あばよ。お前はまだこっちに来るなよ?」

 光線を体で受け止めたアレンは、おじさんに抱きかかえられると、そう言って満足したように目を瞑ってしまった。


「くそ……従順に見せかけて、ずっと演技だったのか……。だが、隠密のスキルを手に入れることができた。ククク……」


「手に入れることができたって、どういうことだ?」


「ゴブリン王が持つ、強奪のスキルだよ。殺した相手のスキルか魔法を一つだけ手に入れることができるんだ」

 なんだその能力……最強過ぎるだろ。


「フハハハ! ラスボスにふさわしい能力じゃないか。だが、この世界のボスは魔王だけで十分なんだよ」


「そうだな。それと、そういうボスを全て倒すのは勇者である俺の役目だ。それと、今さっき俺の愛剣を拾ったから、切れ味を確かめる案山子になってくれると助かる」

 今度は、グルとカイトが俺たちと悪魔の間に立ちはだかった。

 お前ら……かっこよすぎだろ。


「勇者と魔王か。ククク。馬鹿め。探す手間がなくなってむしろ助かる」


「ふん。お前は絶対に勝てないぞ! なぜなら、魔王に勝てるのは勇者だけ、勇者に勝てるのは魔王だけ! つまり、俺たち二人が組めば、この世界に敵はいないんだよ!」


「俺は娘たち……これから生まれてくる孫たちに格好いいお父さん、お爺ちゃんと言ってもらいたいんだ! お前はその礎になってもらう!」


「なんか、昔の友人たちを見ているみたいだ。懐かしく思えてくるよ」

 え? こんな変わった奴らが、他にもいるのか? カイトはまだいそうだけど、グルはかなりのレアなやつだと思うぞ?


「よし。二人が稼いでくれた時間を無駄にしないぞ。今から言うことをしっかりと覚えておくんだ」


「わかった」

 無駄な時間は過ごせない。必ず、一回で覚えきるぞ。



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