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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十四章 最終決戦編

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第二十話 海上の作戦会議

 

 SIDE:レオンス

 海に出て、もう二週間が経っていた。

 ここ二十年くらいずっと激務に追われる日々だったから、こういうのんびりした日々も悪くないな。と思えてしまった。

 早く、リル辺りに引き継げる仕事を引き継いで、俺はさっさと隠居生活を送りたいと改めて思ってしまった。

 一方、俺の愛する嫁さんは退屈すぎてイライラしていた。


「もう! 海の魔物が弱すぎるわ! 船の設備で対処できない魔物は、私の肩慣らしにでもしようと思っていたのに……ほとんどが大砲で一発じゃない!」

 シェリーは、何もしなくて良い見張り番が退屈で仕方ないらしい。

 俺みたいにこの退屈も楽しめば良いのにとは思うが、そんなことは火に油を注ぐだけなので口が裂けても言えない。


「まあ、海の魔物が大したことないってより、この船が凄いんだと思うよ。ノーラの彼氏は師匠に負けないくらい凄い魔法具職人だったんだよ」

 大きな魔物に体当たりされてもびくともしないし、船に備え付けられている大砲の威力もとても高い。

 俺の創造魔法で同じ船を創造できるか? と言われても、正直厳しい気がする。


「そうね。人の手だけでも、こんな物が造れてしまうなんて信じられないわ」


「いや、人の知識と技術力が進化していけば、俺の魔法でも創造できない物がたくさん世に出てくると思うよ。実際、俺の……ミヒルの前世の記憶では、この船の百倍は大きい船や空を飛ぶ飛行機という乗り物が存在しているんだから」


「なにそれ……本当にそんな世界が存在するの? 恐ろしいわね。私、この世界に生まれてきて良かったわ」


「まあ、シェリーは特にそう思うだろうね。なんせ、あっちの世界には魔法が存在しないんだから」


「え!? 魔法が存在しないのに、どうやってそんな恐ろしい物が生まれるの?」


「ドワーフたちが使っていた技術だよ。前に見せてもらっただろ? 魔力を使わないで雷を発生させる装置を」


「発電機だったっけ? あれ、どういう仕組みになっているのか今でも理解できないわ」


「そうだろうね。まあ、転生者たちが元々いた世界はあの技術がとんでもなく進んでしまった世界だと思えば良いと思う」


「まったく想像できないわね……」

 あっちの人からしたら、魔法の方が信じられないんだけどね。


「二人とも交代の時間です」


「お疲れ様です」


「おう。二人もこれから頑張って」

 ベルとリーナと見張り番を交代し、俺は船の中に入る。

 いや……四時間というのも、海を眺めていればあっという間だな。


「お父さん、ローゼが作戦会議だって」

 船に入ると、奥からネリアとキールくんがやってきた。

 二人は相変わらず、仲が良さそうだな。


「わかった。今行く」

 そんなことを思いながらネリアに了承して、ローゼたちがいるであろう船長室に向かうことにした。



「船が計算通りに進んでいたら、たぶん明日の昼前にはエルフの里に到着すると思う」


「思っていたよりも早い到着だな」


「この船が異常なのよ。普通の帆船だったら倍以上長く海にいたと思う」

 風に恵まれなかったら、もっと長いかもしれないな。

 ディグくんには頭が上がらない。


「流石、ドワーフ期待の星が造った船なだけありますね」


「是非とも息子に欲しいわね」


「それなら大丈夫よ! ノーラは絶対に放さないわ。そういうところ、エルシーにそっくりだからね!」

 そう言って、ルーがニヒヒと笑った。

 ほら、やっぱりノーラは俺じゃなくてエルシーに似たんだ。一番エルシーの近くにいるルーが言うんだから間違いない。


「グル……こいつら、わざとやっているのか? わざと俺の前で結婚の話をしているのか?」


「ワハハハ。めでたい話じゃないか! 俺としても、さっさとキールが結婚してくれると安心できるんだがな!」


「お、お前まで……」


「無駄話もこの辺にして、作戦の最終確認を始めるわよ」

 パンパン! と手を叩き、私語だらけの大人たちを一言で黙らせ、ローゼが作戦会議を再開した。

 まったく、子供に咎められるなんて大人として恥ずかしい限りだ。


「まず、エルフの里に到着したら、私はまっすぐエルフの確認をしに行く」


「その護衛として、私とキールがついて行けば良いのよね?」


「危なくなったら、俺の空間魔法で船まで戻ってくるんだよな?」


「それでいい。あと、三人はなるべく目立たず、すみやかにエルフの里に入ること。破壊士がお前たちを狙ったら、その時点でこの作戦は失敗だと思え」

 三人もわかっていると思うけど、一応最後の確認として補足させて貰った。

 先行するということは、危険度が一気に上がるからな。


「わかった」


「大人たちは、俺とグル、ルーが思いっきり暴れて破壊士の目を引く役割、残ったメンバーは船の護衛だ」

 先行する娘たちに目が行くのをなるべく避けるため、あたかも俺たちが先頭を切って上陸したように見せかける。

 そして、逃げるのに船が必要だから、ローゼたちが結界の中に入るまでは船を守って貰う。


「おう。破壊士は俺に任せておけ! 俺なら、いくら壊されても死なないからな!」


「ああ、頼んだ。ただ、無理に倒しにいかないこと。地の利はあっちにあるし、俺たちは破壊士の仲間を隠密のスキルを持つアレンぐらいしか知らない。なるべく慎重にいこう」

 もしかしたら、あっちにはまだ俺たちが知らない転生者がいるかもしれないだろ?


「わかった」


「それで、お父さんたちが時間稼ぎをしている間に私たちがエルフの里に入ったら、すぐにビーコンを設置するのよね」


「ああ、そのビーコンが設置された瞬間、俺とグル以外が瞬時に設置された場所に転移される」

 戦うにしても、船よりも安定した陸地で戦いたい。

 けど、上陸してすぐ戦うのはこっちがあまりにも不利すぎる。

 ということで、結界に入って再度準備を整えてから戦いを始めることにした。

 この作戦の利点は、もし不測の事態や予想外のことがあっても、結界の中で作戦を立て直せるということだ。


「お父さんたちは転移されないで大丈夫なの?」


「俺たちは自力で移動できるからな。もしもの時に備えた保険だよ」

 もしかしたら、誰かの転移の指輪が壊れてしまったり、皆が転移してからも戦わないといけなくなることがあるかもしれないだろ?


「わかった。無理しないでよね? お父さんが死んだ場合もそれ以降の作戦が成り立たなくなってしまうんだから」


「わかっているさ」

 作戦の為とは言え、普段冷たくされる娘に心配されるというのは嬉しいものだな。

 お父さん、頑張っちゃうぞ!


「それで、全員がエルフの里に到着後、すぐにお父さんがゲートを創造し、エルフたちを安全な人間界に送る」


「送り届けたら、私がゲートを壊すんでしょ?」


「うん。お願い」

 ルーがゲートを破壊するのは、エルフが戻って来ないようにするためだったり、敵があっちに行ってしまうのを防止するためだ。


「それで、エルフを逃がしたらさっそく開戦か?」


「わからない。その時の状況次第。もし、神樹が無事なら神樹を利用した戦い方をした方が良いだろうし、ダメならわざわざ囲い込まれて戦うのは愚策」

 ローゼが言うには、神樹は魔力を捧げることで広範囲な魔法を使えるようになるらしい。

 イメージ的には、とても大きな魔法の杖だろう。

 広範囲をネリアの魔法で焼いてもよし、リーナによる遠距離回復に利用するのもよし、神樹があるだけで戦術の幅がものすごく広がるだろう。

 だから、どうにか神樹には無事でいてもらいたい。


「了解。とりあえず、エルフの里に入るまでが第一関門ってわけだな」


「そうね。でも、本番はその後だから前哨戦で力を使い果たさないこと」


「わかった。時間稼ぎに徹する」


「なあ、もちろん無事だとは思うけど……もし、もしだぞ。結界が……既に壊されていたときはどうするんだ? これから何があるかはわからないから、最悪の事態を想定しておくのは大事だろ?」

 作戦会議が終わりかけたところに、ずっと静かにしていたカイトが手を上げて暗黙の了解で誰も聞いてなかったことをローゼに聞いた。

 もちろん、この中の全員がその時はどうするべきなのかわかっているのだが、カイトなりに心の準備をしておけよってことなんだろうな。


「その時は……すぐに逃げるわよ。ただちに船を燃やして、転移か空間魔法ですぐ人間界にビーコンを設置して脱出するわ」


「まあ、そうなるだろうな。わざわざ不利な状況で戦わないといけないのも、エルフの里を守る為だし、守るものがないならわざわざ戦う必要もないだろ」

 まあ、あっちも馬鹿じゃないだろうし、エルフの里は破壊せずに俺たちを不利な状況で戦わせる為の餌にすると思うんだけどな。


「他に何か聞いておきたいことはあるか?」


「特にないわ」


「俺もない」


「よし。ついに、千年も続く戦いを終わらせる最終決戦が明日から始まる。辛くて苦しい戦いになるだろうが、全員で助け合って必ず勝つぞ!」

『おう!』



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